26 出口の見えない逃避行へ(後半、豪羅視点)
なんとか王城から出ることができた。
ほっと息をつきたいところだけど……まだ油断はできない。交戦こそなかったが、追手が迫っている可能性は十分にある。
「俺、これからどうすればいいんだろう……?」
途方に暮れる――。
まさにそんな心境だ。
それでも、俺は歩みを止めなかった。
まずここから離れることを考えよう。
王城から出たんだから、次は王都から離れる。
その次は王国から離れる。
とにかく、ここにいたら命を狙われる。
逃げるしかないんだ――。
決意を固め、俺は足を速めた。
向かったのは王都の端の方にある森だ。人気のない場所を選んで、森の奥へと入っていく。
そこで何体かのしもべを出し、周囲を警戒させた。アンデッドたちは音もなく闇に溶け込み、俺の護衛となる。
それから、ようやく一息つくことができた。
「ふうっ……」
どっと疲労感が押し寄せる。
ずっと気持ちが張り詰めていたせいか、すごい脱力感だ。まるで体中の力が抜けていくようだった。
木にもたれかかり、息を整える。
だが、安堵も束の間、再び不安が胸を締め付ける。
「これからどうすればいいんだ――」
俺の独り言に、静かな声が応えた。
「時雨。君には私たちがいる」
声の主はミラージュだった。
俺の影から、あるいはすぐそばの闇から現れたのか、いつの間にか隣に立っている。
「一人だと思わないことだ」
その冷静な声が、ささくれだった俺の心をなだめてくれる。
そうだ、俺は一人じゃない。こいつがいる。
俺をマスターと呼び、剣となって戦ってくれる騎士が。
「……ありがとう、ミラージュ」
心からの感謝を伝えると、ミラージュは静かにうなずいた。
※
豪羅一心は精神的に参っていた。
……ちくしょう。
この異世界に召喚されてから、一体どれくらいの時間が経っただろうか。
分からない。
数カ月は経っているはずだ。
だが、そんな時間の感覚すら、もう曖昧になってきている。
元の世界に帰る目途は、まったく立たない。
それどころか、状況は悪化する一方だ。
魔王軍との戦いは、日増しに激しくなっている。
クラスメイトの何人かは……死んだ。
あっけなく虫けらのように殺されてしまった。
「次は……俺の番かもしれない」
その考えが頭から離れない――。
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