表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/122

2 田中と鈴木

「田中のスキル、あいかわらず超強いじゃん」

「はは。お前のスキルも火力高くていい感じだぞ」


 田中と鈴木は互いを褒め合っていた。


 盗賊たちを殺したことについて何も感じていない――それどころか、まるでゲームのハイスコアを競っているかのような雰囲気だ。


「殺す必要はなかっただろ」


 俺は盗賊たちの死体を見て、


「捕らえて、憲兵に引き渡せば――」

「ああ? どうせ生きていても人に迷惑かけるだけの連中だろ」

「害虫駆除みたいなもんでしょ、ふふ」


 やはり田中と鈴木には罪悪感なんてなさそうだった。


「だいたい、ここは日本じゃないんだぞ」

「しかも、私たちは『勇者』――特権階級なんだからね」

「だからって、無意味に人を殺していいわけじゃない」



 俺は二人をにらんだ。


「あ?」


 田中が俺をにらみ返した。


 こいつは野球部のエースピッチャーで、身長は190センチ近くある。

 俺より頭一つ以上大きな体が、威圧感たっぷりに詰め寄ってきた。


「時雨ごときが俺たちに意見する気か」

「俺は思ったことを言っただけだ」


 俺は動じない。


 以前なら確実におびえていただろうけど――。

 今は不思議なほど恐怖心を感じなかった。


「ちょっと時雨のくせに態度が大きいよ」


 鈴木が田中の側に並んだ。


「へへへ」

「ちょっとビビらせる?」


 二人は目配せした。


「――【フライングソード】」


 ヴンッ!


 空中から突然長剣が出現する。


 田中のスキル【フライングソード】。

 その名の通り、長剣を召喚して攻撃するスキル。


 長剣は最大で33本まで召喚でき、そのすべてが田中の意志に応じて、空中を自由自在に動き回る――。


 がきんっ。


 俺は空中から迫る長剣を、腰から抜き放った剣で撃ち落とした。


「な、何……!?」

「危ないだろ。いきなり攻撃するなよ」

「て、てめえ……!? 時雨のくせに防ぐなんて生意気なんだよ!」


 ヴンッ!


 さらに三本、空中に長剣が現れた。


 それぞれが別々の角度から襲ってくる。

 並の人間なら反応もできずに斬り刻まれるだろう。


 さっきのを防がれて頭に来たのか、今度は容赦なく来たようだ。

 だけど――以前よりも格段にステータスが上がった俺の目には全部見えている。


 三本の剣の軌道が、すべて。


 がきいいいんっ。


 俺は剣を振るい、続けざまに三本の剣を弾き飛ばす。

 そのすべてが田中の足元に突き立った。


「本気で俺を狙うなら、次はお前の体に向かって弾き返す」


 俺は剣の切っ先を突きつけた。


「ぐっ……」


 田中の顔がサッと青ざめる。


「……た、ただの冗談だよ。本気で狙うわけないだろ」


 言いながら、田中の体は震えていた。


「な、何、こいつ……」


 鈴木も驚いたように俺を見ている。


 二人とも気づいたんだろう。

 俺の動きが、反応が、今までとは明らかに違うことを。


 それとも単なるマグレと判断したんだろうか。


「城に帰るよ。お前たちはどうするんだ?」

「俺たちは……」

「あ、あんたに言う必要ないでしょ! 行こう!」


 と、鈴木が田中の腕に自分の腕を絡めた。


 あれ、この二人って付き合ってるのか?

 雰囲気が友だち同士ではなく、恋人同士のそれに思える。


「王都で適当に遊んでくるだけ。本当、娯楽が全然なくて最悪よね、この世界って」

「そう言うなよ。慣れれば結構楽しいだろ」

「まあ……あんたと一緒なら」

「ひひひ」


 あ、やっぱり付き合ってそうな雰囲気だ。


 正直、相手がいるのはちょっと羨ましい。

 たぶん彼らは遊んでいる最中に、たまたまここを通りがかったんだろう。


 王都から別の都市に向かう街道だからな。


「俺は……帰るか」


 王都への道を歩き出す。


 最後にもう一度、盗賊たちの死体に視線を向けた。


 悪党とはいえ――いちおう黙とうをした。


 少しだけな。

【読んでくださった方へのお願い】

面白かった、続きが読みたい、と感じた方はブックマークや評価で応援いただけると嬉しいです……!

評価の10ポイントはとても大きいのでぜひお願いします……!


評価の入れ方は、ページ下部にある『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』のところにある

☆☆☆☆☆をポチっと押すことで

★★★★★になり評価されます!

未評価の方もお気軽に、ぜひよろしくお願いします~!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押して

★★★★★にしていただけると作者への応援となります!


執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!


▼カクヨムでの新作です! ★やフォローで応援いただけると嬉しいです~!▼

忌み子として処刑された僕は、敵国で最強の黒騎士皇子に転生した。超絶の剣技とチート魔眼で無敵の存在になり、非道な祖国に復讐する。


― 新着の感想 ―
ミラージュさん、前話のラストから消えてますよね? 何か察して、時雨君の影に入ったんでしょうか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ