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6章 時を越えて(7)

 「もう、次は何なのよ…」

メグが呆れたようにソユアを見つめた。魔法陣は光りながらゆっくりと宙に浮かんだ。四人を乗せたまま、である。

「う、浮かんでいる…?」

四人の重みを感じなくなったからだろうか、大きな音を立てて床が溶けるように壁に吸い込まれていった。床が消えて、一階の入り口から外の光が少しだけ漏れているのが見える。

「わあ…本当に床が開いたんだ…溶けて、ね」

メーデルが笑いながらソユアを見る。ソユアは微笑み、下に向かって手をかざした。時間を戻しているかのように床だった「液体」が再び広がった。小さな凹凸も無く綺麗に固まる。ソユア達を乗せた魔法陣はゆっくりと床に降り立った。

「どうでしたか?」

ソユアがくすっ、と笑いながらメーデルに問う。

「…驚きだな。魔法は、こんな事も出来るのか」

「魔法って、便利よね。…昔の人々の努力のおかげだわ」

時間を置いて少し気が楽になったメグが呟く。

「…何か、気付いたら床が溶けるように無くなって、もう一回造られたんだけど、何?」

ミユが起き上がり、目をこすりながらソユアを見た。眠そうにもしているが、気持ち悪くは無いらしい。

「大丈夫ですか、ミユ様」

「うん…かなり最初の方で気絶しちゃったようだから、そんなに酔ってないよ」

メグが立ち上がり、ミユを覗き込んだ。

「…羨ましい限りね。私はかなり酔ったわよ。でも、前に時の塔に来た時はこんなに大変じゃなかったわ」

そう言って、ソユアを見つめる。ソユアは不思議そうに首を傾げた。

「前は違ったのですか?」

「ああ…だが、前回は《時の宝玉》を落としてしまった。割れはしなかったが、多少の衝撃は感じただろう。それによって、何かが変わったのでは?」

メーデルの言葉を聞いて、メグは腕を組む。

「そうね…水の女神様のお力だから、私達は知り得ない事だけれど、何か手違いでもあったのかもしれないわね」

「……とにかくさ、水の女神様の元へ戻ろうよ。ミリア様も、シルクも、待ってるよ?」

「そうですね。この《時の宝玉》を…」

ソユアが辺りをキョロキョロと見回す。

「はめる所がありませんね」

「壁に手をかざすとか?」

メーデルが提案する。ソユアは頷き、壁に触れて部屋の中を回り始めた。

「何をしているんだ?」

「魔力素の反応を見ているんだよ。魔力が近くにあるとさ、魔力素が反応するから」

メーデルの問いに、ミユが答えた。

「さすがは魔法使い。こういう事に関しては詳しいのね」

メグが微笑む。ミユは少し嬉しそうな顔をした。

「ありました」

ソユアが床の一部分を指差しながら言った。

「あら…壁じゃないのね」

「ここから、魔力の反応がします。おそらく、ここに《時の宝玉》をはめる所があるのでしょう」

ソユアが床に手をかざす。一瞬、パッと床が光ったかと思うと、床の一部分が再び溶けて液状になり、外側に向かって流れる。そこから、《時の宝玉》にぴったりと合う大きさの穴が現れた。ソユアが穴の外側に触れると「液体」が流れて、美しい彫刻が現れる。

「はめる所が…埋まってたんだね」

「本当に時を渡る者じゃないと分からない場所だ」

ミユとメーデルが口々に呟いた。ソユアとメグは頷き合う。ソユアが震える手で《時の宝玉》を穴にはめた。途端に、再びあるべき場所に収まる事が出来た《時の宝玉》は鋭い光で部屋全体を包み込む。

「ま、眩しい…っ!」

そして、四人は時を渡った。


「……成功したようです」

ソユアは草原に寝転んでいる三人に話しかけた。が、返事は返ってこない。

「メグ様?」

ソユアは一番近くに寝転がっているメグを揺すった。

「くー……」

「…眠っておられるのですか」

ソユアは小さく呟く。耳を澄ますと、ミユとメーデルからも微かな寝息が聞こえてきた。

「…仕方ありませんね。私がお運びしなければ…」

立ち上がると、杖を構える。だが、奥の方から歩み寄ってくる人影が見え、ソユアは魔法を使おうとする手を止めた。

「水の女神様」

「どうやら、無事にミユとメーデルを見つけられたようじゃの。ミリアが二人を心配しておったからな。…まあ、シルクは二人が必ず帰って来ると確信しておったようだが」

水の女神は静かに、ソユアに言った。

「そうですか。シルク様はミユ様の事を信頼してくださったのですね」

ソユアはミユを見て微笑む。ミユは芝生の上に堂々と転がり、気持ちよさそうに眠っていた。水の女神は頷くと、再び口を開いた。

「ソユア、話がある。わらわの部屋に来るのじゃ。他の三人を屋敷の中に運んでから、だがな」

ソユアは時の塔のように魔法陣を他の三人が寝転がっている芝生の上に創り出し、宙に浮かせて運んでいった。

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