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夢迷物語

蜻蛉つきに有る歴史と論理国語を犠牲にして産む夢

価値があるのか

 少し暑く、空を見ても朝なのか、夕方なのか、よくわからないある日のこと。



 空には雲一つ無い快晴で、蒼く、どこまでも透き通るような空の下。

 私は何の用事で来ていたのだろう、もうすっかりと覚えていない。

 今いる場所には車なんかがずらりと並べられていて、少し離れなたたところには「ひと」、が列をなし、それが大きい寺への、そして寺の敷地内での往来となっているらしい。

 私が今いる場所からは車から出たらしい「ひと」が、パラパラと、皆同じ方角に向かっていくくらいしか見えないが何故か頭にはそんなことが入っていた。


 そんな、ある寺の参道から少し離れる車置き場で化け物に遭遇した。

 化け物は虫の様な形容をしていたのか、鳥に似ていたか、はたまた、もっと別の何かだったか、虫にしては大きすぎて、鳥にしては大きいくらいの大きさだったことだけは、あと黒っぽかったようなことは覚えている。



 空には雲一つ無い快晴で、朱く、いつまでも続いてるような空の下。

 しかし、そいつとの会合をどう乗り切ったのか、少なくとも化け物はこちらに敵対的で話し合いなんて出来るはずもなかった。

 たが、気が付くと、私は細い木々がポツポツと生え、腰くらいまであろう石が一定間隔である、人気(ひとけ)のない場所に居た。

 枯れ葉を踏みしめ歩いていると前方に人が佇んでいた。

 彼の、(まさに人のものである)その背を離れた所から見ているはずが、しかしところが彼が人でないような、そんな気がしていた。

 会話をしても自然な距離まで近づき、白の和服に身を包み、よく見ると左の手に刀を持っていた彼に話しかけた。

 私のその境遇について聞こうとしたのだが、声を掛け振り返った彼は、皺を刻んだ頬に、まるで眼球そのものが黒だと言わんばかりの目、何故か認識できない口元、その表情は怒っているのか、焦っているのか、その両方を足して2でかけたような顔が恐怖を感じさせた。

 そして彼は言う、「その石を寄越せ」と。

 さらに石の見本であるかのように二枚の「石(紫に黒を足し不完全に混ぜた様な色で薄い)」を投げてきた。

 全く見に覚えがなく困ったように手を見ると、私は「石」を持っていた、……そうだ、思い出した、化け物を殺したときに、死体が消えると同時にこれが落ちたのだった。

 初めは渡そうと思ったが、ここで渡すときっと良くない事が起きると勘が騒いだ。(具体的にはこれを渡した彼は豹変し、その手に持つ刀で見境無しにこちらを襲い出すような気がした)

 そのため「私がこれを渡すことは出来ない」と断ると、「人の形をした何か」はたちまち襲い掛かってきた。

 「人の形をした何か」の攻撃を防ぎ距離を取ると先程会った化け物と、「?何?か?」が彼を助けるように襲ってきた。


 これには付き合い切れないと思った私はマップを開き咄嗟に選んだワープポイントに飛んだ。



 空には幾つかの雲が浮かんでいて、朱の色が、さらに輝きを増したような空の下。

 辺りに見覚えのない、砂利が綺麗に敷き詰められた上に立っていた。

 背後には空き宿のような?木造の建物があり、そこで夜を明かすことは出来そうだが、このままここに居るわけにはいかないため、何かの目印を探しに歩き出した。


 実は気のついた場所からは、塀に囲まれた寺?のような建物が見えていたが、背丈よりも高く、更に、なんとなく行く気が起きず塀を通し目に眺めて通り過ぎるだけにして更にその奥に進んだ。

 何のために存在するのか分からない木造建築は複数見つかったが、日もそろそろ沈みかけていて、詳しく調査することもできずに空き宿のような建物に戻った。

 再び、塀に囲まれた寺?の横を通り過ぎようとしたとき、中にひらひらとした人影が居たような気がしたが、もう一度覗いても居なかったし、一切人の気配がせず私は背筋を震えさせ、そそくさと空き宿に戻りさっさと寝た。


 空には一つ二つの雲が浮かんでいて、水青(あお)く、いたく平凡で態態(わざわざ)記に留めもしないような空の下。

 昨日と同じ方角に行っても木造の建物を調べるくらいしかないだろうと、反対方向に向かおうとすると、そこには入ることも億劫になりそうなほどの森があった。

 はたしてこんなもんだっただろうかと疑問に思っても、入れば死を待つしか出来なくなるだろうと、大人しく昨日見つけた建物を調査することにした。


 塀の横を通るとき、中の建物の屋根がかろうじて見えるくらいで昨日の真相は確認することは出来ない。

 昨日見つけた建物は古風な造りになっており、それにしては劣化を感じさせない有り様に少しワクワクしたが、中には何もなく、古い木の匂いと暗いだけの空間がもてなしてくれた。

 幾ら探しても何もなく気付いた頃には日は既に傾いており、また何の発見もないまま一日が過ぎた。



 空模様は様々で、蒼く、青く、水青く、暗く、どこででも見下すような空の下。

 幾ら探索しても、幾ら日が経とうとなにも分からず、数度人影を見たような気がしたり、そして森を覗いてみたりもしたが森はまさに人外魔境と呼ぶに相応しかった。

 万策つき、とうとうこの空間の中央にあると言っても過言ではない、塀に囲まれた寺に行く決心をつけた。

 今まで無かった気がした開放された門をくぐり、ついに正面から寺を見たながら、ここも空っぽだったらどうしようかと考えていると、寺から手にバケツを持ったお坊さんが出てきた。

 あまりに自然な挙動に見逃しそうになったが、お坊さんの驚いたような仕草に、遅れて私も驚いたのだ。


 お坊さんは見た目こそ若かったけれど、話に出てくる内容から、もう随分とこの寺で過ごしたていたのだろうと推測できた。

 この場所については何も教えてもらう事が出来なかったが、掃除を手伝ってくれればご馳走してくれるとのことで快く引き受けた。


 あるいは、ここで甘言に乗らなければ、徹底的に聞いていれば、私の記憶力が良ければ、そんな後悔雑念はここで綴っても意味がない。欠落した記憶はどうにもならない。


 掃除とは、箒で床を掃いて、たまに蜻蛉が落ちてくるから、その落とした張本人だけがその蜻蛉の種類ごとに適切な対処法を取るとのことだった。

 例えば、


黒蜻蛉は箒で叩くだけで良い。できなければ    なる。

赤蜻蛉は「  」と唱える。できなければ ぬ。

半黄蜻蛉は「    」と唱える。できなければ滅びる。

透黒蜻蛉は   をする。できなければ世界が終わる。

 蜻蛉は  を  する。できなければ    。

??、?は「      」を   し  で 。………。

蜻蛉は


 お坊さんが手本に部屋の半分程掃いたところで黒蜻蛉が落ちてきた。

 即座に反応したお坊さんは蜻蛉の頭部を叩き、蜻蛉は消滅した。

 残りを床の流れに沿ってやってみろ、とお坊さんが持っていた箒を渡され、掃きはじめた直後、体の左半分だけに黄色の線が入った蜻蛉が落ちてきた。

 ついさっき教えてもらったばかりの呪文を唱えようとするが、出てこなかった。

 焦りだったのか、そもそも覚えていなかっただけか、どちらだろうと結果は同じだ。

 背後で見守っていたお坊さんは最初こそ冷静だったものの、半黄蜻蛉が落ちてきても何も唱えない私に、だんだんと血相を変え、声色を変え「何をしている」「どうしたんだ」「早く唱えろ」と矢継ぎ早に言っていたが幾ら思い出そうとしても出てこなかった。


 そうしているうちに半黄蜻蛉は動き出す、飛んでくるのではなく、その場で蠢き出した。

 内から何かが喰い破るように、その形をまるで卵に変形させるかのようにだんだんと、人間の半分くらいの大きさだった蜻蛉は少しずつ小さくなり、どこが何だったのか分からなくなるほどに、黒く纏まったと思っていたら。



 空はきっと雲一つ無い快晴で、黒く暗く輝き、どこまでも嘲るような空の下。

 黒く纏まった何かは、一本ずつ鮮やかな紫色をした足を八本生やした。胴が生えそこからさらに目やら触覚やら牙やら色々はえて、腹に紫で模様を描き、足先が紫に染まった美しく毒々しい蜘蛛が産まれた。私はその過程を眺めることしかできず、遂に呪文を唱える事が叶わず産まれてしまったのだ。もうきっと長くは保たないこれはきっと走馬灯なのだ。これは罪か?これは残り少ない命で出来る贖罪なのだろうか。そもそもわたしはなぜ、なぜなぜなぜなぜ。


もう気が付くことはない。




ビスロ・イギヴィ女王・ブリュメール・ナポパルト・厳禁・四民 (昭和1984年14月6日). テスト終了後に些細な

  ミスが発覚し寝たあとにみる夢 末化古書店出版 11093-11090p

以下、作:ビスロ 「テスト後に……」110901pより抜粋

「私は伝える事が出来ただろうか、私の後悔を、嘆きを、記憶を。

きっとこの本を読んで動く心など微々たるものだろう、いや、一切無いのかもしれない。

しかし書かずにはいられなかった、伝えずにいられなかった

老いぼれてなお、滅ぼしておいてなお、こんなものを残すことを許してほしい。

諦めぬ事を許して欲しい」

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