Prelude
『神様』
誰しもが一度は聞いたことがある存在。
世界には「人間は神様の姿を与えられた存在だ」と豪語する者もいるだろう。
存在していると謳う人もいれば、それを否定する人だっている。
何より可笑しいのは、後者が危機的状況に瀕したとき、自分たちが否定してきたそいつに泣きながら懇願するさまだ。
そんなシーンを今まで本や映画などの媒体を通して幾度となく見てきた。
私はそんな存在を目にする度、心の中で蔑む。
私は人生でうまくいかなかったことなんて記憶を辿る限りないと言っていいだろう。
どんなに嬉しいことがあっても、自分自身を心の底から褒めたし、それを天を仰いで感謝することなんてなかった。
神様なんて所詮『作品』としか思っていなかったから。
でも、私はある日間違いを犯した。
これから80年程生きたとしてもこれほどの後悔をすることはないと確信できるくらいのだ。
一人部屋の中で苦しみ、嘆いた。
もう少し素直に生きていれば、もう一度あの日に戻れたら、そう『神様』に願った。
滑稽だよね。
そして、その時私は思い出す。
昔暇つぶしで考えたもしもの世界。
自分なりによくできた都合のいい設定だなと当時は思ったな。
どこかに記した気がするけど、どこだっけ。忘れてしまった。
なんで今そんなことを思い出したかはよくわからない。
今となってはくだらない妄想だなって思う。
でも、私の身体は勝手に動いていた。
記憶にある説明書通りに。
そうして私の旅は始まった。