94.わかってるね
マリィは禁書庫へと向かう。
その後ろからついて行く、カイトたち一行。
「ギャアギャアぎゃあ!」「うほぉおうほぉおおお」「ぐぎゃぎゃああす!」
森のなかを獣の鳴き声が響き渡る。
そのたびカイトたちはおびえた表情となる。
だがマリィは歩みを止めない。
「やっぱり……魔女様は、すごいお方です」
「やはり、そう思うかカイト少年」
「はい、皇女様!」
ふふ、と二人は微笑む。
二人の話しについて行けない、黒猫とキール。
『なにわかりあってんだ?』
「いや、魔女殿のあの堂々たる足取りについてだ」
『堂々? ただおまえらをおいて、先に進んでるだけだろ?』
「いや、魔女殿はああいうふうに、前をどんどん進んでいくことで、我らに勇気を与えておられるのだ」
『勇気、ねえ……』
リアラ皇女は感心したように何度もうなずく。
「この恐ろしい魔物がはびこる森の中を、ああやって進んでいくことで、大丈夫、私が居るから安心だよ! と背中で語っておられるのだ」
「皇女様……わかってらっしゃる! すごいわかってますね!」
「ああ、君もわかってるな」
うんうん、とうなずきあうふたり。
だが残念なことに、ふたりの考えは的外れだった。
マリィはただ、早くおいしいものが食べたいだけなのである。
『さ、さっぱりわからん……』
オセは深々とため息をつくのだった。