93.番人
マリィは次元の狭間へとやってきた。
赤い空が広がる不気味な森を中を、すたすたと歩いて行く。
「うう……こわいです……」
カイトがおっかなびっくりと、マリィの後をついて行く。
その胸には黒猫オセが抱かれていた。
『仙人が住むって言うやべえとこだからな、どんな化け物がでるかもしれねえしよ』
「ふ、不安をあおらないでくださいよぉ~」
泣きべそをカイトがかいても、マリィは後ろを振り返らず進んでいく。
その勇敢な姿に、リアラ皇女と従者キールは感動していた。
『んで、魔女様よ。その禁書庫っつーのはどこにあるんだよ』
「この先に湖があるわ。そのほとりに、たくさんほんの置いてある場所があるの」
『その湖ってどこにあるのか、正確な位置はわかるのかよ』
当然、とばかりにマリィがうなずく。
彼女のそばには、木の棒が浮いていた。
「これはなんですか、魔女様?」
「魔力を探知する魔法をかけた、棒よ。禁書庫にいる【あいつ】の魔力を探知してるわ」
「あいつ……? だれですか?」
「禁書庫を守る、番人よ」
「ば、番人……! そんなのがいるんですか……魔女様はすごいです! 何でも知っててすごい!」
ふと、オセが首をかしげる。
『番人ってやつは、外部の人間に対して友好的なやつなのか?』
「まさか。番人よ? よそ者を入れるわけないじゃない」
『え、じゃ、じゃあ……まさか……』
「ま、そのうち出てくるわよ、たぶん」