表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

92/142

92.次元の狭間



 マリィ一行は、蓬莱山ほうらいさんへと向かうことになった。

 その前に、蓬莱山ほうらいさんの情報を集めるため、古今東西の叡智が詰まっているという、禁書庫へ行くことになったのだった。


「で、なんでまた人が増えているの?」


 帝城の庭にて。

 リアラ皇女と、その部下である軍人、キールが立っている。


「わたくしめも微力ながらお手伝いさせていただきたい!」

『キール……だっけか。そういやこいつ、蓬莱山ほうらいさんから一人だけ生きて帰ってきたんだっけか?』

「はいであります! なので、少しならば案内できるかと」


 キールはどうやら奥までいった経験はないらしい。


「足手まといね」

「うぐ……そ、そうであります……ね。でも! リアラ殿下をお守りしたいのであります!」


 マリィは若干いらっとした顔になる。

 彼女の目的は、蓬莱山ほうらいさんの美味しい果物を、いち早く食べることだ。


 どう見てもこのキール、そしてリアラはこちらの足を引っ張る、障害でしかない。

 本当のことを言うならリアラもおいてきたい……が。


「あ、そ。勝手にすれば」


 リアラにもしものことがあったとき、そっちを守るリソースを割くよりは、盾を用意しておいた方がいいだろう。

 そう判断して、着いてくことを許可したのだ。


『んで、魔女さまよ。その禁書庫っつーのはどこにあるんだよ?』

「次元の狭間よ」

『だからそれ、どこから行けばいいんだよ』

「? 次元の切れ目から入っていけばいいじゃないの」


 ほら、とマリィが指さす。

 だがオセも、そしてリアラ皇女たちも首をかしげる。


 どう見ても何もない空間にしか見えないのだ。

 マリィはため息をついて、右手を前に出す。


 マリィは魔法を発動させる。

 どがぁあああああああああああああん!


「うぉお! す、すごいのであります……これが、噂に聞く、伝説の極大魔法!」

「いや、ただの火球ファイアー・ボールだけど」

「初級魔法でこの威力! さすがでございます! 魔女様!」


 マリィの放った火の玉。

 それは何もないところで着弾した……はずだった。


「! 皆さん見てください! なにか……裂け目ができてます!」


 カイトが指さすさきには、何もない空間に、縦に裂けた切れ目があった。

 その向こうには、帝城の庭とは別の世界が広がっているように見えた。


「さ、いくわよ」


 マリィを先頭に、裂け目の中へと入っていく。


『ここが次元の狭間にあるっていう、禁書庫? ただの森じゃあねえか……?』


 森というには、少々、異質な感じがした。

 その正体には直ぐに気づく。


「空が……赤いですね。なんだか不気味です」


 夕暮れというより、血の赤に近い空が、どこまでも続いてるのだ。

 どさ……とキールがその場に倒れ伏す。

「ど、どうしたのだキール!?」


 リアラ皇女がすぐさま近づいて、彼の肩を揺する。

 彼は恐怖で震えながら、空を指さす。


「あ、赤い空……こ、ここです!」

「ここ? ここがどうした?」

「ここが! 蓬莱山ほうらいさんです!」


 はて、とマリィたちが首をかしげる。


「禁書庫のある、次元の狭間よここ。ちがう場所でしょ」

「いや! ここです! おれたちが迷い込んだのは、この赤い空の広がる、不気味な森でした!」


 なるほど……とオセが納得いったようにうなずく。


『……つまり禁書庫と蓬莱山ほうらいさんは、同じ次元の狭間にあるってことか』

「手間が省けたわ。まずは禁書庫へ行くわよ」


 恐れず、堂々と進んでいくマリィ。

 そんなカノジョの姿に、キラキラとした目を、キールが向ける。


「こんな危険な場所を、恐れず進んでいくだなんて……」

「そうです、魔女様は、勇気ある素晴らしいお方なのです!」


 カイトが誇らしげに言う。

 だが単に、マリィは早くデザートを食べたい、ただそれだけで、急いでるだけだった。


 恐れとか、そんなものみじんも感じていなかった。

 それより食欲。そう、彼女はエゴイスト魔女であり、食欲魔神なのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

★1巻10/20発売!★



https://26847.mitemin.net/i766904/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ