85.一章エピローグ
呪術王の母を、復活させた。
それから数日が経過したある日のこと。
「…………」
『よぉ、起きたか魔女様?』
黒猫オセが自分を覗いていた。
マリィはため息をつく。
「おなかすいたわ」
『開口一番それかよ……ったく、相変わらずだなあんたは』
マリィが身体を起こすと、ふわりとどこからか良い匂いがする。
「これは……お酢?」
『おうよ。あんたが寝てる間に、全部片がついたぜ。今小僧が寿司の準備してる』
「! 寿司!!!!!」
マリィが極東に来た理由だ。
寿司と呼ばれるとてつもなくおいしいものを、食べに海を渡ってきたのである。
「どこ!?」
「魔女様! ここですよ!」
界人が酢飯の入った桶を持って現れる。
マリィはよだれを垂らしながら、寿司の準備ができるのを待つ。
「無事で何よりでした!」
「ええ、寿司速く」
「気絶してしまって、数日も目を覚まさないから心配して……」
「ええ、寿司速く」
カイトは素早く手を動かし、寿司を用意した。
「これが……寿司! 極東のグルメ!!!!」
しゃりの上に色とりどりの魚のネタが載ってる。
「呪術王さんが呪いを解除してくれたんです。お米もお魚もたくさんもらいました! さ、食べてください!」
遠慮無く、マリィはカイトの握った寿司を食べる。
真っ赤な、まるでルビーのような握りを一つ食べる。
「~~~~~~~~~~~~!」
口の中で、今まで食べたことない美味が広がる。
甘酸っぱい米と、新鮮な海の幸のハーモニー。
「極東は改心した呪術王さんが、復興に尽力するそうです」
噛めば噛むほど味が出てきて、涙が出るほどだ。
その姿を見て、カイトが感じ入る。
「極東の人たちが平和に暮らせるようになって、泣くほど嬉しいんですね!」
『ちげえと思うけどなぁ』
ここがどうなろうが、どうでもいい。
ただ、今最高においしいご飯を食べられてることに涙し、そして、感謝する。
「ああ……おいしいわ……頑張った甲斐があったなぁ……」
マリィは寿司を食べながら、しみじみとうなずく。
頑張って食べる料理は、また格別だと思った。
あっという間に寿司を平らげてしまう。
しかしそこに、新しい寿司が追加される。
「極東の人たちから食材は山ほどもらっています! おなかがはち切れるまで……お寿司にぎにぎしますね!」
おいしいお寿司を作ってくれる、カイトにお礼を言う。
「ありがとう、カイト。……これからも、よろしくね」
カイトは顔を赤くすると、晴れ晴れとした笑みを浮かべてうなずく。
「はい! これからもよろしくです!」
かくして、マリィは極東で無事、お寿司を食べることができたのだった。
あとはまあ、ついでに、極東も救って見せたのであった。
【★読者の皆様へ】
これにて一章完結です。
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