84.世界扉《ワールドドア》
マリィは呪術王の母親を、蘇生させると言ってきた。
『そんなの、できるわけないだろ。死んだ人間はどうやったって生き返らない』
悪魔オセが常識的な意見を言う。
呪術王もうなずく。
一方でマリィは、無視して、術式を展開する。
彼女はまず、土の魔法で魔導人形を作る。
そこに加えて、魔法陣を展開した。
「! これは……西の魔法と、東の呪術、ふたつの術を組み合わせた……まったく新しい魔法陣!?」
呪術王すら驚愕する魔法陣を、マリィは作り上げたのだ。
「信じられん……こやつ! おれとの戦いを通して、世界最高峰の呪術を身につけていたのか!」
マリィはもともと、西大陸の魔法をマスターしている。
加えて、ここ極東の地で、呪いについて学んだ。
妖怪、そして呪術王と、呪術使いたちと戦った結果……。
世界最高峰の呪術をマスター。
そのうえで、ふたつの奇跡の技を合成させ……まったく新しい奇跡を、体現する。
「開け……【世界扉】!」
その瞬間、マリィの足下から、巨大な鏡が出現した。
『な、なんなんだこれは……世界扉……?』
「この世界と、別の世界をつなぐ……扉よ」
『別の世界だと!?』
マリィは世界扉から、一つの魂を呼び出す。
「これは……冥界にとらわれし、女の魂よ。これを……魔導人形に入れる」
するとただの魔導人形に変化が起きる。
ぐにゃあ……と姿形が変わり、やがて黒髪の美女が出現した。
「は、母上! 母上……!!!!!」
呪術王が母親の元へ駆け寄る。
マリィが魂を呼び出し、仮の肉体に憑依させた……母の元へ。
「阿部童子……ああ、あなたなのね」
「母上! おれは……おれは……うわぁあああああああああああん!」
本物の母と再会でき、呪術王は感謝の涙を流す。
マリィは小さく息をついて……そのまま倒れる。
「魔女様!!!!」
巨大なフェンリルの姿から、小さな獣人の姿に戻ったカイト。
マリィに近づいて、抱き寄せる。
「大丈夫ですか!?」
ぐぅう~~~~~~~~~~~!
……答えは、腹の虫の声で帰ってきた。
色々頑張りすぎて、お腹が減ってしまったのだろう……。
カイトはほっと安堵の息をつき、そして、慈悲深い魔女に対して、こういう。
「さすがです、魔女様。死闘を演じた相手の、心すら救ってしまうなんて!」
【★新作投稿しました!】
先日の短編が好評だったので、連載版はじめました!
『【連載版】迷宮の聖女は魔物達から溺愛されてる~追放された私、奈落の森に捨てられるも、神に祈りを捧げていたら、いつの間にかそこが聖域化していた「国が亡びるからと王子が君を連れ戻しに来たけど撃退しといた」』
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