表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

80/142

80.奇策



 呪術王とマリィの戦いは続く。

 フェンリルをぶっ飛ばし、呪術王は高笑いする。


「ははは! いいぞ犬! もっとだ! もっとかかってこい!」


 フェンリルのフィジカルは呪術王に勝るとも劣らない。

 だが所詮は物理攻撃しかできない犬。


 フェンリルが体当たりを加え、呪術王の体にダメージを与える。

 だが彼は即座に、反魂の術で回復してみせる。


「ふん!」


 ばごん! と呪術王がカイトを殴り飛ばす。

 地面にたたきつけられるカイト。


「所詮体力だけ。貴様は恐くもなんともない」


 呪術王の体が回復する。

 彼が身につけたのは、超高速の反魂の術。

 

 ダメージを負った瞬間オートで回復する術だ。

 ……そう、彼が極めたのは、反魂の術。

 ……なぜその術を極めたのか。

 今の呪術王は、覚えていない。


 彼が強くなろうとした動機を、彼は忘れてしまっているのだ。


「カイト!」


 マリィが、カイトに心配そうに近づいてきて、回復を施す。

 ……それに呪術王は、少なからず違和感を覚えた。


「あの女が、犬を心配するだと……?」


 どうにも解せない。

 だが、敵はどう見ても、今まで戦ってきた魔女だ。


 だが、まあいい。

 そっちから接近してくれたのなら、好都合だ。


 呪術王はカイトたちのもとへ接近。

 カイトはマリィを守るように立ち塞がるも……。


「邪魔だ」


 どがん! とカイトが蹴飛ばされる。


「カイト……!」


 がしっ、と呪術王はマリィの首をつかんで、持ち上げた。


「ようやく、詰みだな」


 しかし……違和感。

 そう、おかしい。あの女を、こんなにあっさり捕まえられるだろうか。


「いいえ、呪術王様。あなたの負けです」

「なに!?」


 どろり……とマリィの顔が崩れる。

 そこに居たのは……。


「九尾!」


 そう、呪術王の部下、九尾の狐だ。

 彼女は変身能力を持っている。


 マリィに変身していたのだ。


「くそ!」


 だが逃げようとしても、呪術王は体が動かないことに気づいた。


「これは……毒!」

『そうさ、悪魔特製の毒だぜ!』


 カイトの体にこっそり隠れていた、黒猫のオセが顔を覗かせる。

 呪術王が蹴飛ばした瞬間、麻痺毒を打ち込んでいたのだ。


 マリィに化けた九尾が、しゃがみ込んで治療していたのは、オセを忍ばせるためだ。

 では……なんのために?


「王手よ、呪術王」


 振り返ると、そこにはマリィがいた。

 呪術王の肩を後ろから叩いている。


「しま……」

「神域……解放!」


 マリィが叫ぶ。

 神域……。


 それは、マリィが持つ、秘奥義だ。

 呪術王は知らない。


 魔女が、どこまで魔法を極めたかを。

 彼女は、人の身でありながら、どこまで到達したのかを。


「思い知るが良いわ」


 その瞬間、マリィの体から無数の蝶が湧き上がる。


「なんだ……この……蝶……は……」


 ぐらり……と呪術王の視界が暗転する。

 そして……気を失った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

★1巻10/20発売!★



https://26847.mitemin.net/i766904/
― 新着の感想 ―
[気になる点] >マリィに化けた九尾が、しゃがみ込んで治療していたのは、オセを忍ばせるためだ。 "オセ"ってなんですか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ