77.ピンチに覚醒
呪術王の攻撃が、マリィの腹部を貫通した……。
『魔女様……!!!!』
オセが飛び込んで来る。
毒の霧を発生させ、呪術王に噴射。
「ちっ……煙幕か……!」
マリィはそのすきに、【風刃】で呪術王の腕を切断すると……。
飛翔の魔法でその場から距離を取る。
『おい大丈夫なのかよ!?』
オセはマリィの肩に乗って慌てて尋ねる。
この魔女が攻撃を受ける場面なんて、初めて見た・
「問題ないわ」
マリィは口から吹き出した血をぬぐって、呪術王の腕を引き抜く。
すぐさま治癒の魔法で、傷口を治した。
マリィが無事で安堵する一方で、マリィにダメージを負わせた呪術王にたいして、戦慄を覚える。
『無敵の魔女に攻撃を食らわせるなんて……』
「なかなかやるわよ、あいつ」
すぐに呪術王は解毒し、にぃ……と笑う。
「そうだよな。それくらいで死んでもらっても困るよなァ……!」
呪術王が凄まじい早さで接近する。
マリィは接骨木の神杖で、魔法を多重展開。
それを素手でぶち破りながら呪術王が接近。
「ふん!」
腹部に向かって貫手を放ってきた。
マリィは防ぐのでは無く、体をねじってそれを避ける。
「らぁ……!」
避けたと思ったら、呪術王が蹴りを食らわせてきた。
マリィの顔面に蹴りが当たって、すっ飛んでいく。
『魔女様!』
マリィが吹っ飛ばされると同時に、オセもまた慣性で飛んでいく。
「魔女よ。貴様の魔法の腕は素晴らしい。賞賛に値する……が」
呪術王は落胆の息をつく。
「貴様は、フィジカルが弱すぎる」
そう、呪術王の膂力と、マリィの魔法は拮抗してる。
しかし呪術王のほうが勝っている部分がある。
体術だ。
マリィは物理攻撃の手段をほとんど持たない。
一方で、呪術王は己の体を武器として鍛えている。
頑強な体に、数え切れないほどの強敵と拳を交えて磨き上げてきた、体術がある。
いかにパワーが拮抗していようと、体術の差で負けてしまう。
「身体強化の術はあるのだろうが、まあ使ったとろでか」
呪術王が近づいてくる。
マリィは表情を表に出さない……が。
ぎゅっ、と杖を握る手に力がこもった。
一方でオセが毒霧を吐いて、煙幕を作る。
『逃げろ、魔女様!』
「余計なマネをするな」
呪術王は恐ろしい早さで拳を振る。
毒霧が一瞬で晴れてしまう。
邪魔者であるオセを蹴飛ばすと……。
「さ、殺し合いの続きといこうか」
タンッ……! と地面を蹴って呪術王が接近する。
マリィは結界を展開するが……。
「洒落臭いな」
呪術王は結界を、すり抜けてきた。
結界が拳を弾くことなく……。
「ふんっ!」
「ガッ……!」
呪術王の拳を杖でガードしようとしたが、杖を粉砕し、マリィの体にダメージを負わせる。
彼女は凄い勢いで吹っ飛ばされていく。
建物に激突しようとした、まさにその瞬間だった。
「魔女様!」
誰かが後ろから抱きしめてくれた。
だがそれくらいで勢いは止まらず、ふたりして壁に激突。
「っつ……カイト!!!!」
自分と建物の間に挟まっていたのは、ケモミミ料理人のカイト。
彼がクッションとなってくれたおかげで、大けがを負わずに済んだ。
だが、カイトはというと……。
「え、へへ……魔女様の、お役に……建てましたか……?」
今の衝撃で、大ダメージを負っていた。
腕が変な方向に曲がっているし、口から血を吐き出している。
げほげほっ! と咳き込むたび血が吹き出る。
折れた骨が内臓を傷つけているのだろう。
「良かった……無事で……」
「カイト! いや、いやよ! 死んではいや!」
「だい……じょうっぶ。料理人は……たくさんいます……ぼくの、かわりは……見付かる……」
ふるふる、とマリィは首を強く横に振る。
「あなたの代わりはいない!!!! 私のわがままに完璧に応えてくれて、美味しい料理を作ってくれる人なんて! 世界にただ一人あなたしか!」
マリィは、このとき初めて……。
自分のこと以外に、力を使う。
治癒の魔法を、カイトに施そうとした……そのときだ。
カッ……! とカイトの体が、光り輝きだしたのである。
「私の魔力を喰らって、変身しようとしてる……? これは……」
そこに居たのは……。
巨大な、狼だった。
美しい毛並みをもち、神々しい光を放っている……。
「まさか……神狼フェンリル……? カイト……あなた、フェンリルだったの……?」
【★読者の皆様へ お願いがあります】
ブクマ、評価はモチベーション維持向上につながります!
現時点でも構いませんので、
ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂けると嬉しいです!
お好きな★を入れてください!
よろしくお願いします!