74.VS呪術王、開戦
領地シナノの、北部にある大都市。
廃墟となった街のなかで、マリィは呪術王と相対した。
『じゅ、じゅじゅつおう……さま……なん……で……』
九尾の腹部に、腕が貫通してる。
マリィが振り返ると、そこには黒髪の少年がいた。
白い着物をラフに羽織っている。
鋭い目つきは猛禽類のようだ。
彼は口の端をつり上げて邪悪な笑みを浮かべている。
その赤い瞳が、九尾に向けられる。
「おれの邪魔をしたからだ」
その瞳には明確な怒りが見て取れた。
呪術王……アベノハルアキラが腕を抜く。
大けがを負った九尾が、地面にどちゃりと倒れた。
それを虫けらのように見下しながら、呪術王が言う。
「おれは強い敵と戦いたいのだ。それを貴様は邪魔をしたのだ」
『で……も……呪術王様は……強くなって……御母堂さまを……復活……』
ぐしゃり、呪術王が、九尾を踏み潰す。
その瞳には何の感慨もなかった。
ただ、蟲がいたから殺した。それだけのようだ。
「おれが望むのは強者との殺し合い。それだけだ。それ以外どうでもいい」
……なんとも自己中心的な男だ。
マリィは思った。
どこか、自分に似てる気がすると。
「魔女よ、待ちわびていたぞ」
九尾に向けていた表情から一転する。
にいぃ……と実に楽しそうに、呪術王が笑った。
「四天王を屠り、呪術を独学で身につけるほどの、術者としての才がある。おまえを殺すのを、心待ちにしていた」
「ふぅん……」
マリィは、ぼろぞうきんのように転がされてる、九尾に……。
治癒の術を施した。
「ほぅ、呪禁ではないか!」
呪禁。それは、呪いの術のひとつ。
相手の傷をいやす呪いだ。
妖怪には、光魔法(治癒魔法)が効かないと考え、呪禁を使用したのである。
「まさか呪術のイロハを受けぬおまえが、呪術の奥義の一つを身につけるとは! これは、殺しがいがありそうだ」
「あ、そう」
九尾の傷は、完全には治っていない。
まだ呪禁を完全にマスターしたわけではないのだ。
「あなたが呪術王ね」
「いかにも。名前はアベノハルアキラという。貴様は?」
「マリィよ」
「そうかマリィ。覚えておこう」
ごぅ……! と呪術王の身体からプレッシャーが放たれる。
空気をふるわせ、そして周りに居る妖怪たちを恐怖し、その場で気絶させるほどの強烈なオーラを放つ。
「久方ぶりに、楽しい殺し合いになりそうだ」
一方でマリィは、静かに魔力を練り上げる。
「気が合いそうにないわね。食のない戦いなんて、楽しくなんて一ミリもないのに」
【★読者の皆様へ お願いがあります】
ブクマ、評価はモチベーション維持向上につながります!
現時点でも構いませんので、
ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂けると嬉しいです!
お好きな★を入れてください!
よろしくお願いします!