73.嘆願
マリィは呪術王のもとへ向かう道すがら、眷属の九尾から、王の過去を聞いた。
そして……九尾は言うのだ。
『呪術王様は、母親復活のため強くなろうとしてる』
術師として強くなれば、反魂の術と呼ばれる、特別な術が使えるようになるらしい。
「はんごんの、じゅつ……?」
『死者をよみがえらせる術のことや。呪術王様は、それを修得したいと思ってはる……やけど王が死んでしもうたら意味があらへん』
……どうやら九尾は。
「私が呪術王に勝つと?」
『……わからへん。でも、あんたと呪術王様は、かなり力が拮抗してる。バチバチにぶつかり合ったら、お互い深手を負うやろうな』
マリィは自分の強さに一切興味が無い。
なんとなく周りがもてはやすので、強いのかな?
くらいの認識である。
『呪術王様は、いずれ反魂の術を身につける。今化け物とたたかって、急いで身につける必要あらへんと思ってる』
「…………?」
化け物?
どこ……と首を振る。
九尾はあきれたようにため息をついて言う。
『頼む。帰ってくれへんか? 別にあんたは、ここの出身でもないんやろ?』
マリィは西にある大陸から、海を渡って極東へとやってきた。
確かに九尾の言うとおり、この果ての島国に思い入れなど皆無である。
『なら、ほっといてや。あの人が使命を達成するの、邪魔せんといて』
「…………」
呪術王を思っての発言だろう。
マリィの不興を買えば、狐料理にされるとわかっていて。
なお……仕えるべき主人のために、こうしてマリィに説得を試みているのだ。
「…………」
九尾は怯えていた。
それはそうだ。四天王を軽く葬り去る女がいるのだ。
……力を知ってなお、たてついてくる。
死ぬ覚悟ができているのだろう。
……マリィは、尋ねる。
「じゃあ、あなたは呪術王を説得できる?」
『え……?』
「私はお寿司が食べられればそれでいい」
『す、すし……』
「そう。もう呪術王に、極東に被害をだすなと約束させられるんだったら、私だって無益な殺生をするつもりはないわ」
九尾の表情が晴れやかな物になる。
『わかった! うちが説得して見せる!』
まあ、良いか。
別に強さとか、討伐して何か手入れ隊とか、そういうのはないし。
美味しい寿司がたべられるのであれば、戦闘はスキップしてもいい。
……だが。
ザシュッ……!
『が……はぁ……!』
九尾の腹部を、何かが貫いていた。
それは人の手だった。
「水を差すようなマネをするな、九尾」
マリィは振り返る。
認識阻害の結界を突き破り、現れたのは……。
一人の、美青年だった。
『じゅ……じゅじゅつおう……さま……』
そこに居たのは、呪術王、アベノハルアキラ。
彼は邪悪な笑みを浮かべながら、言う。
「おれは強い敵と戦いたいんだ。興ざめするようなことするな、阿呆めが」
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