56.なんか強くなってね?
マリィはヤマタノオロチの炭火焼きを食べ、とても満足したらしく、すぐに眠ってしまった。
テントを張って、その中で眠る二人。
『やれやれ……不用心なやつらだぜ、ったくよ』
悪魔オセだけが起きて、見張りをしていた。
オセはマリィの下僕であるため、彼女を守る義務があるのだ。
『しっかしよく食べる女だなあいつ……やめてほしいんだが』
悪魔は契約者の負の感情を糧としている。
マリィがメシを食うたびに、幸せな感情を抱くたびに……。
オセは苦しみを味わっているのだ。
『ん? なんだ……』
闇夜に紛れて、何かがうごめいている。
『! 妖怪……!』
手の長い化け物、足の長い化け物が、肩車してやってきた。
『て、てめぇら、何ものだ!』
オセは臨戦態勢をとる。
彼らからはかなり強い気を感じた。
そう……マリィが瞬殺していくから、いまいち強さが伝わらないが。
妖怪とは本来、かなりの高レベルモンスターなのである。
マリィたちが元々居た大陸でいうところの、Sランクモンスター以上の強さを持っているのだ。
現在のオセでは、太刀打ちできないような相手。
『わしらは足長手長。ぬらりひょんさまの命令で、魔女を倒しに来た』
『ぬらりひょん……?』
聞いたことないが、おそらくは妖怪の仲間なのだろう。
手の長い化け物、足の長い化け物。
2体の妖怪とのバトル。
しかし……マリィは眠っている。
……別に、マリィなどどうでもいいんだが。
しかし今まで旅をし続けてきた相手を……。
見殺しにするのは、寝覚めが悪かった。
『ああくそ! 守ってやるよ! こい化け物め!』
オセは毒を操る悪魔だ。
あらゆる毒を使うことができる。
とはいえ。
相手は格上。
今のオセでは倒せないはず……なのだが。
かきーん……! と。
『は……? な、なんだ……い、石になったぁ?』
足長手長たちは、オセが殺気を込めてにらんだだけで、石になってしまったのだ。
一瞬、何が起きてるのか理解できなかった。
『石化……? ま、まさかおれが石化なんつー、高度な状態異常スキルを使ったってのか?』
なぜか、と考えて……一つの結論に至る。
『まさか……』
オセはマリィのテントを除く。
目に魔力を込めて、よーく目をこらして見ると……。
マリィの体から、膨大な魔力が流れている。
そして、魔力はオセへとむかって流入していた。
『やっぱそうだ……あの魔女様。妖怪を喰らうことで、魔力を吸収し、強くなってやがんだ!』
一般には知られてないことだが、魔物を喰らうことで、体内魔力量が増える。
しかしこのルールを知っていたとしても、人間では通常、魔物を喰らうことはできない。
なぜなら、魔物の体には(妖怪もだが)、毒が含まれているからだ。
しかし。
『そうか……あのケモミミ料理人……魔物や妖怪の毒を、調理の段階で抜いて、魔女が喰いやすいようにしてるのか……』
ようするに。
カイトは、魔物が本来持つ毒を除去する。
魔女は魔物を喰らうことで、さらに強い個体へと進化する。
で、配下であるオセも、また進化した……という図式らしい。
『魔女様の異常さばっかりが目立つけど、あのガキも大概だな。魔物の毒、しかも初見の魔物ですらも、調理方法を見つけだしてしまうんなんてよぉ……』
オセは検めて、魔女とカイトの化け物っぷりを目の当たりにして、ため息をつくのだった。
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