55.接骨木の神杖
マリィたちは野営をすることになった。
山中で、カイトがたき火の前で料理をしている。
マリィは敷物上に座って、カイトの料理を待っていた。
『そういやよ、魔女様よ』
黒猫の悪魔オセが、気になっていたことを尋ねる。
『あんたがさっき使っていた杖……接骨木の神杖だよな?』
マリィは首をかしげる。
「名前なんてついてたのね」
『知らずに使ってたのかよ……』
「そうね。使ったのは魔王を倒すのに1度だけだけど」
魔法の多重展開を可能にする魔道具だ。
神器と言って差し支えないほどのものである。
『あんなやべえやつ、どこで手に入れたんだ』
「なんだか怪しげな職人から、使ってみないかって渡されたのよね」
『職人?』
「ええ。気持ち悪かったから折ったわ」
『折ったんかい! それ神器だぞ!』
神器。
それは神のごとき力を発揮する、特別な魔道具のこと。
とても稀少で、金銭での売買が不可とされている。
「呪いがかかってたのよね。だから、私が新しい物を作ったの」
『接骨木の神杖を、改良したってことか?』
「ええ。ちょっと出力は落ちたけど、杖にかかっていた呪いは解除できたわ」
『……なんかもう、あんたってやばいレベルを二段も三段も超えてるんだな』
神器の創造なんていう離れ業をなしたというのに、本人はそれが凄いことだとはみじんも思っていない。
これが、マリィとい女である。
「魔女様! お夕飯が完成しました!」
「でかしたわカイト!」
目をキラキラさせるマリィ。
彼女にとっての関心事は、戦闘やその強さなどではなく、料理ただそれだけだ。
カイトが提供する美味しい料理に胸を弾ませながら、問いかける。
「今日はどんなご飯?」
「極東の郷土料理です……じゃーん! 【ヤマタノオロチの炭火焼き】でーす!」
蛇の肉を、串に刺せて焼いた、シンプルなものであった……。
オセは口元をひくつかせる。
『い、いや小僧よぉ……。さすがにこれは……グロすぎないか?』
「そうですか? 美味しそうですよ! ね、魔女様!」
『いやぁ……いくら暴食の魔女でも、こればっかりは……』
しかし、マリィは特段気にしたお薄も無く、炭火焼きをはむはむと食べる。
「ん! 皮はパリッとしてて、中身はとってもジューシィだわ。白身魚みたいな、淡泊な味わいに、皮のパリパリ加減と、ぴりりと来るスパイスが絶妙に……いい!」
どうやらビジュアルはあまりきにしないようだった。
マリィはうまうま、と気にせず炭火焼きを食べるのであった。
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