43.米のためだ
翌日。
シチューを振る舞ったことで村人達の顔色はすっかり良くなっている。
だがマリィにとってそんなものはどうでもよい。
カイトの作る美味しい朝食のシチューを食べ終えたら、さっさと出て行くつもりだ。
「魔女様。お願いがあります」
「なぁにカイト?」
マリィはどこでもレストランでシチューをすすっていたところだ。
「村人さんたちから、頼まれたのです……なにか、守る手段をいただけないかと」
『守る……? ああ、妖怪どもからってことかよ?』
現在、極東は呪術王の放った妖怪のせいで、多大なる被害を受けている。
妖怪のせいで村人達はまともな生活が送れないで居るのだ。
「守る手段……ねえ……」
『おいおい坊主よぉ。それは無理だぜ。このじこちゅー魔女が、人助けなんてするわきゃねーだろ』
オセの言うとおりだ。
マリィは全てが己の食欲を満たすために、行動するような女なのだ。
人助けのために動くとは到底思えない。
……が。
「? 何言ってるんですか? 魔女様は今までもずっと、弱者を助けてきた、素晴らしい魔女様ではありませんかっ!」
『ああ、おまえの曇った眼じゃそう見えるんだったな……』
魔女の行いは、全て己のため。
結果として人を助けている物だから、カイト視点ではマリィは正義のヒーローに見えるのである(※女だが)。
「お願いします、魔女様! どうか、村の人たちを守る何か手段をさずけてあげてください」
「…………ふぅ」
マリィは当然ながら、彼らを守る義理など一切無い。
駄目、そう言おうとしたのだが……。
「このままじゃ彼らの食べるお米も作れない……」
「……お米、作ってるのこの村?」
「はい」
「なるほど……わかったわ」
マリィは深くうなずいて、立ち上がる。
「村の連中を集めなさい」
「! それじゃあ……」
「仕方ないから、守る手段を授けてあげるわ」
「おおお! さすが魔女さまっ! やっぱり、弱い人たちを守る……優しいお人ですね!」
そんな様子を見て、オセがため息をつく。
『そんなわきゃねーだろ。どうせ、寿司のための米を、せしめようっていう魂胆だろ?』
「? ほかにないでしょ」
彼女が極東に来た理由はただひとつ。
寿司を食べるため。
寿司には白米が必要。
となれば、この村に恩を売っておけば、米が手に入りやすい、そう思ったのだ。
『あのガキも村の連中も、こんなのが救いの神なんて不憫だな……ぐえええ!』
風重圧で押しつぶされるオセ。
マリィはため息をつきながら、食後のお茶をすするのだった。
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