40.別にあんた達のためにやってないんだからね
マリィたちは村で一泊することになった。
村の女達は妖怪のせいで、全員死亡していた。
そこをマリィが霊薬を使って、蘇生させたのだった。
話はその後。
彼女は村で最も豪華な家を、借りることになったのだが……。
『これが豪華……ねえ……ただのぼろ小屋じゃあねえか』
黒猫オセが言うとおりだった。
とてもじゃないあが、豪華とはほど遠い。
しかしマリィは気にせず、異空間からベッドを取り出して、そこに腰を下ろす。
『あんた本当に食べること以外、どーでもいいんだな』
「ええ。屋根と壁で囲まれていたら、それでいいわ」
『さいですか……んで、どうすんだこれから?』
「どうもこうも、ここに一泊して明日の朝、出立するわよ」
さっさと妖怪を倒して、マリィは美味しいお寿司を食べたいのだ。
くる、とマリィはカイトを見て微笑む。
「カイト。夕飯は美味しいものがたべたいわ。そうね……シチューとか。たっぷり作りなさい」
するとカイトがピン! と立つ。
「なるほど! さすがです魔女様! なんてお優しい!」
『おいおいまたこの獣人ガキが、勘違いしてるぜ?』
オセの言うとおりだ。
カイトは勝手に、マリィがシチューを注文した理由を、推測(妄想とも言う)したのだ。
「シチューを作り、村のみんなにも振る舞う……そういうことですね!?」
『もしかしておまえの耳は飾りなのか ……?』
しかしカイトにとってマリィはヒーローなのである。
シチューのような一気に大量に作る料理を、まさか一人では食べないだろう(と思ってるがもちろん全部自分で食べるつもりのマリィ)。
なぜ大量に作るのか?
それは村人に振る舞うため! さすが魔女様!
とカイトは思ってるのである。
「どうでもいいけどさっさとしてちょうだい」
「はい! あ、でも……魔女様。飲み水がありません」
なんですって、とマリィが顔をしかめる。
『どこでもレストランには、たしか水場も着いてなかったか?』
「食器を洗うようです。人の口に入る水は、買ったり井戸から汲んだりしてます」
『なるほどなぁ。じゃあ汲んでくりゃいいんじゃないか?』
「それが……」
カイトたちが村の外へ移動する。
村唯一の井戸へと到着。
カイトが桶を落として、引っ張り上げると……。
『うっわ……こりゃひでえ。泥水じゃあねえか』
泥のほうがまだましだったかもしれない。
桶にはいっていたのは、紫色した毒の水だった。
「魔女様……どうしましょう」
「大丈夫よ、カイト。こんな魔法で一発だから」
マリィは右手を前に出して、光魔法を使う。
「【浄化光】」
マリィの右手から、魔法の光が発せられる。
「オセさん、これは?」
『浄化光。文字通り浄化の魔法だな。毒や幽霊などを、清め取り払う力がある』
魔法の光が収まる。
カイトがうなずいて桶を、井戸の中に入れる。
そしてひっぱると、とても澄んだ水が入っていた。
「「「おおおお! 魔女様、すごいです!」」」
村の全員が目を輝かせる。
「妖怪の毒におかされた井戸水が、こんなに綺麗になるなんて!」
「ありがとうございます、魔女様!」
そこへ、カイトが笑顔で言う。
「少し待っててください! 魔女様が、皆様にシチューを振る舞ってくれるそうです!」
「「「おおおおお! ありがとうございますぅうう!」」」
マリィは小さく息をついた。
オセが彼女を見上げていう。
『で?』
「別にあなたたちのためにやってないから。勘違いしないでちょうだい」
本心からだった。
水を浄化したのも、シチューを食べたいがため。
しかし……。
「「「ツンデレ! ありがとうございます!」」」
……カイトのせいで、もうすっかりツンデレが定着してるのだった。
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