32.うまそうな妖怪だ!
マリィたちは極東の河原にて、カッパと出会った。
そこでキュウリをもらって、むしゃむしゃともろきゅーを食べるマリィ。
食べることに夢中のマリィをよそに、ケモミミ料理人カイトと悪魔オセは、カッパから情報を仕入れていた。
『なるほど……つまり妖怪の親玉は、ここじゃない別の世界から転移してきたってわけか。おまえら配下の妖怪どもを連れて』
「その通りだに。呪術王様は、大昔は優しいお方だった。でも、母親を殺されてから、変わってしまわれた。強さを求めるようになったんだに」
『母への復讐のために力を付けたはずが、いつの間にか力を付けることのほうが目的になった……ってところか。まあありがちだな』
カイトはそれを聞いて、呪術王に少し同情してしまった。
沈んだ表情のカイトを見て、オセがため息交じりに言う。
『同情すんな。呪術王を今からおれらは倒しに行くんだ。それに、可哀想な生い立ちがあるからって、他の世界を荒らしていい理由にはならねーだろ?』
オセの言う通りだった。
今呪術王は極東に呪いをかけて、迷惑をかけている。
食料がとれず困っている人たちを、カイトは見てきた。
『それにあの魔女様が、やる気まんまんだしよ。止めても無駄さ』
と、そのときである。
ごぉお……! とカッパたちのいた場所に、突如として炎が襲ってきたのだ。
「うわああ!」
『ちっ! 敵か!』
上空から巨大な【鳥】が姿を現す
いや……鳥というよりは、鶏か。
『見つけたぞ、呪術王さまにたてつく愚か者は貴様らだな』
『なんだてめえは?』
巨大鶏にはにぃ……と笑う。
『おいらは、【波山】! 呪術王さまの下僕が一人! 炎を扱う妖怪よ!』
ゆらりとマリィが立ち上がり、にやり、と笑った。
「いいわねえ……! 最高じゃないの」
「魔女様、戦うのですか?」
「もちろん」
その理由はわかっている。
オセには、わかっている。
鶏のフォルム。
つまり、食べられそうな妖怪が、ようやく現れたから。
あんなふうに、にやっと笑ってるのだ。
「鶏とキュウリで、何が作れる、カイト?」
「え、ええっと……ば、棒々鶏……とか?」
それもまた未知の料理だった。
マリィは決めた。
びし、とマリィは指を波山に向けて言う。
「おまえ、夕食決定!」
【★☆新連載スタート!】
先日の短編が好評のため、新連載はじめました!
タイトルは――
『伝説の鍛冶師は無自覚に伝説を作りまくる~弟に婚約者と店を奪われた俺、技を磨く旅に出る。実は副業で勇者の聖剣や町の結界をメンテする仕事も楽々こなしてたと、今更気づいて土下座されても戻りません』
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