31.かっぱの恩返し
マリィたちは河原で休憩を取っている。
緑色の肌に、頭に皿を載せた妖怪……カッパが正座してる。
「なんで妖怪は、どいつもこいつも食べられないフォルムしてるのよ! モンスターを見習いなさい! あいつらは食べられるわ!」
カッパが困惑したように首をかしげ、悪魔オセを見やる。
『聞き流して良いぜ。この魔女さん、ちょっとパーなんでな……ぐええええ!』
マリィは魔法でオセを痛めつける。
念力の魔法でぞうきんみたいに絞る。
それを見て、カッパが驚愕していた。
「あ、あんた……ほんとに強いんだな」
「それほどでも。はぁ……お腹すいた……」
ちら、とカッパをマリィが見やる。
「この際……カエルでも……」
「ま、待って欲しいんだに! 食料ならある!」
きらん、とマリィの目が輝く。
「なに?」
「これ!」
それは……緑色をした、細長い棒だった。
マリィの目から光が消えて、右手をカッパに突き出す。
「【天裂……】」
「まったまった! 食料だからこれ! 食べれるから!」
どう見てもただの植物だった。
とてもじゃないが食えそうにない。
しかしケモミミ料理人カイトは、目を輝かせていう。
「これって……きゅうりですか?」
「おお、よくしってるなぁ、坊ちゃん。そのとおりだに。これはきゅうり。野菜の仲間」
ふーん……とマリィがきゅうりをまじまじ見やる。
「こんなのが食べれるのね。どうやって食べるの?」
「そのままでもいけるが、味噌とか漬けて食べると美味いんだに」
「味噌……」
がしっ、とマリィがオセをにぎりしめる。
『ぐええええええ』
「味噌だしなさい」
『口でいやいいだろ! ったく……』
オセはあらゆる調味料を出すことができる。
悪魔の尻尾から、にゅるっと茶色いペースト状のもの……味噌が出される。
キュウリに味噌をつけて食べるマリィ。
「…………」
「ど、どうかや……?」
ほぅ……とマリィが満足げに息をつく。
「うまいわ」
「よ、よかったぁ~……。まだいっぱいあるから、良かったら食ってって」
「太っ腹ねあなた」
むしゃむしゃ、とマリィがキュウリの味噌漬けを食べる。
カッパは苦笑しながら言う。
「これはお礼だに」
「お礼? なにかしたかしら、私?」
「ええ。あんたは土蜘蛛を倒してくれた。あいつはこのあたり一体を牛耳ってるやつだった。おいらたちカッパは、あいつに住処を追われていたんだに……」
マリィは魔法で土蜘蛛を倒した。
そのおかげで、カッパたちにまた平和が訪れたのだ。
「ありがとう、魔女様。なんとお礼も仕上げて良いやら」
マリィはごくん、とキュウリを飲み込んだ後にいう。
「別に、あなたのために倒したわけじゃないんだからね」
と。
カッパは目を点にしたあと、言う。
「ツンデレかや?」
「はい、ツンデレです!」
どうやら極東にも、ツンデレという単語が存在する。
もちろん、マリィは自分のためにやったのだった。
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