30.カッパなんて食えるわけねえだろ!
マリィたちは極東にて、呪術王を倒しに来ている。
妖怪、土蜘蛛を討伐したマリィ。
「う……!」
「魔女様!」
森の中にて。
マリィはフラッ、とその場に崩れ落ちる。
ケモミミ料理人カイトは不安げにマリィに尋ねる。
「どうしたのですか魔女様! もしや……先ほどのクモの化け物から、攻撃を食らっていたのですか!?」
『んなわけあるかよ、この化け物がよぉ』
黒猫の悪魔オセは、焦るカイトとは対照的に、あきれたようにため息をついて言う。
『どうせ腹減ったんだろ?』
「…………」
『そんな、どうしてわかったのみたいな顔すんじゃあねえよ』
マリィは、腹ぺこだった。
力を使い、空腹だった。
「い、今すぐタコ料理を!」
「待って……カイト……。タコ料理は……あきた」
さすがにタコの連続で、マリィはもうあきあきしていたのだ。
「おいしいを……私に新しいおいしいを……」
『そういってもよぉ、ここにゃ獣もいないしなぁ』
と、そのときである。
ぴんっ、とカイトがケモミミを立てる。
「川のせせらぎの音がします! 近くに川があるかも!」
川があるなら魚があるかもしれない。
マリィは立ち上がると、綺麗なフォームで走り出す。
「川! 魚!」
しかしそこにあったのは……。
毒におかされた、汚水が垂れ流される川だった。
ずしゃあ……! とマリィが膝から崩れ落ちる。
『呪術王ハルアキラのせいで、食物とれねえつってただろ?』
「こんなに川が汚染されているのじゃ、魚は無理ですね……」
ぎりぎりぎり、とマリィが歯がみする。
「……許せないわ、呪術王!」
その瞳には明確なる敵意の炎が浮かんでいた。
「魔女様……そうですよね! ゆるせないですよね! 川をこんな汚して! 川の恵みを享受できない人たちのため、一刻も早く呪術王を倒しましょう!」
『この女……別に誰かのためにっつーか、川魚が食えなかったことで切れてるだけのようなきがするけどな』
オセの言うとおりだった。
別に義憤になんて一ミリもかられていなかった。
食べ物の恨みである。
「ん? 何か居るわね……?」
『ほんとだ。こんなきったねえ川に……生き物?』
川の中に何かが居て、泳いでるようだった。
「…………」
『おいおい魔女様よ、アレ食うのか?』
「水よ!」
マリィは声を発する。
水よ、と。
総声を発するだけで、水がドバアッ……! と上空へとあふれ出た。
「な!? どうなってるんですか、あれも攻撃魔法?」
『少しちげーな。高位の魔法使いともなれば、ささいな動作に魔力が宿り、それが魔法にかってになっちまうのよ』
呪文をとなえ、魔法を放つなんてプロセスを踏まずとも、呼びかけるだけいい。
火をおこす、水をあふれさせる程度の簡単な命令なら、呪文をとなえる必要すら無いのだ。
「すごいです、魔女様!」
「さて……お魚ゲットよ!」
しかし川から出てきてきたのは……。
『痛いよぉ~……なにすんだよぉ~……』
緑色をした、妙な生き物だった。
一瞬カエルかとカイトは思った。
しかしカエルにしてはでかいし、頭の上にはお皿が載っている。
「あなたは、誰ですか?」
『おらはカッパだに』
「カッパ……」
やはり、川魚では無かった。
ぷるぷる……とマリィが怒りで肩をふるわせながら言う。
「だから……なんで? なんで妖怪ってっやつは、みんな食べられるような見た目してないのよ……!」
『ひぃ! お、おらに言われてもぉ~……』
【★☆新連載スタート!】
先日の短編が好評のため、新連載はじめました!
タイトルは――
『伝説の鍛冶師は無自覚に伝説を作りまくる~弟に婚約者と店を奪われた俺、技を磨く旅に出る。実は副業で勇者の聖剣や町の結界をメンテする仕事も楽々こなしてたと、今更気づいて土下座されても戻りません』
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