22.たこ焼きじゃー!
船上のマリィは、極東へと向かう途中、海に住まうモンスターの討伐を依頼された。
うずしおを発生させることで近海の主……クラーケンを捕らえることに成功したのだった。
「さぁ、巨大たこやき……いただきます!」
『この暴食魔女……もうタコをたおして食ったきでいやがるぜ……』
船の前には巨大なタコがいる。
名前はクラーケン。
この大型船より一回り体のサイズは大きい。
大樹のごとき八本の足がうねうねと、それぞれ蠕動している。
ぎろりと、クラーケンがこちらを見下ろしている。
知性があるらしく、マリィに怒りのまなざしを向けていた。
「ひぃい!」「あれが数々の大型船を沈没させてきた近海の主!」「ベテラン冒険者がクランをくんでも勝てなかったらしいぞ……!」
船員達が完全に萎縮してるなか、マリィは不適に笑うと、右手を前に出して魔法を発動させた。
「【颶風真空刃】!」
マリィお得意の風の魔法だ。
海上に巨大な竜巻が発生する。
逆巻く風のうずのなかには、無数の真空の刃が含まれている。
「でた! 魔女様の必殺技! 颶風真空刃! 相手は粉々になって死にます……!」
『ん? まて! 様子が変だぜ魔女様よぉ!』
マリィも気づいていた。風の魔法を受けても……。
「ぴぎゅうううううううううう!」
「なっ!? い、生きてるだってぇ……!?」
ケモミミ料理人カイトが驚く。
彼はマリィの魔法をずっとそばでみてきた。
彼女の放った風の刃は、今までどんな魔物の体もバラバラにしてきた。
しかし、このクラーケン、五体満足である(タコに適用して良い表現かは定かではないが)。
「そんな……どうして!?」
「体が柔らかいのね。だから、刃が通らない」
クラーケンは冒険者達の武器攻撃がほとんど効いていなかったという。
それはどうしてか。
クラーケンの体は軟質性であり、刃が通らないのである。刃が肉体を切断する前に、肉体が体を変形させ、斬撃をとおらなくしているのだ。
『おいおい魔女様どーすんの? 今まで敵をすべてワンパンでたおしてきたけど、ここでようやく強敵おでましかぁ?』
「ぴぎゅぅうううううううううう!」
クラーケンが口から大量の酸を吐き出した。
「まずいですぞ魔女様! あの酸はどんなものも溶かしてしまう強酸と聞きます!」
「問題ないわ」
マリィは右手を前に突き出す。
結界の魔法が発動。クラーケンの酸を正面から受け止めた。
『へっ! ばかタコがぁ! 悪魔のおれの酸を受けても溶けない強固な結界だぞぉ! てめえごときちんけなタコの酸がきくわけねーだろうがよぉ!』
「すごい! 魔女さま! なんでオセさんが得意げなんですか?」
酸を防いだマリィ。
『んでどーすんよ?』
「問題ないわ」
クラーケンが怒ったのか、その巨大なたこの足を振り上げて……。
船にぶつかるまえに、固まった。
『なぁっ!? た、タコの野郎が攻撃をやめただと……いや! 違う! 固まってやがるんだ!』
オセが叫んだとおり、タコの体が徐々に硬くなっていく。
「凍っていきます! あの大きなタコが、まるごと!」
『そうか! 柔らかくて斬れなくても、硬くすることで斬撃がとおるようになるんだな!』
「凄い発想です! さすが魔女様!」
あとは、マリィはいつも通り、颶風真空刃を発動させて、クラーケンをぶつ切りにして海に沈めた。
マリィは優雅にきびすを返す。
それを見ていた船員、船長達が、ひざまづいて言う。
「ありがとうございます! 魔女様!」
「長らくわれら海の民を苦しめていた怪物をたおしてくださり! ありがとうございます!」
マリィはさらっ、と髪の毛をすきながら、クールに言う。
「別に、あなたたちのためじゃないんだからね」
自分の食欲のタメなのだ。しかし……
「「「おおお! なんという、ツンデレ!」」」
『こいつらほんとに感謝してるのか……? 馬鹿にしてるように聞こえるけどよぉお』
どちらにしても、マリィにとっては関係のない話だった。
【★新作の短編、投稿しました!】
タイトルは――
『伝説の鍛冶師は無自覚に伝説を作りまくる~弟に婚約者と店を奪われた俺、技を磨く旅に出る。実は副業で勇者の聖剣や町の結界をメンテする仕事も楽々こなしてたと、今更気づいて土下座されても戻りません』
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