21.海と言えばタコ
【★おしらせ】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
魔女マリィたちは海を渡って、極東へ向かっている。
その船内でのこと。
コンコン……。
マリィの船室のドアを、誰かが叩いた。
「だれでしょう?」
「無視しなさい」
マリィはケモミミ料理人カイトにそういう。
『おいおい魔女様よ。別に今あんた何もしてないじゃあねえか』
「してるわよ」
『ただ椅子に座ってぼうっとしてるようにしか見えないがね?』
「カイトの作った蒲焼きの余韻に浸ってて、忙しいのよ……」
『実質何もしてねえじゃねえか!』
先ほど、カイトは海魔蛇の切り身をつかって、蒲焼きを作ったのだ。
マリィはそれを食べて、大変満足してたところである。
椅子にふんぞり返って、幸せな表情を浮かべるマリィ。
「世の中にはまだまだ食べたこと無い美味しいであふれてるのね……」
一方カイトは迷った後、ドアを開けて外に出る。
魔女の邪魔にならないように、外で話を聞くことにしたらしい。
するり、と黒猫の悪魔オセもまた外に出る。
そこには、船長らしき男と、彼の部下である船員が数名いた。
「魔女様に何かご用でしょうか?」
船長達は、魔女が出てくると思っていたので困惑する。
だが、メッセンジャーなのだと理解して、本題に入る。
「実は、魔女様に近海の主を倒してほしいのです」
「きんかいの……ヌシ?」
『海の化け物ってことかよ?』
オセの言葉に船長がうなずいて説明する。
「近海の主とは文字通り、ここいらの海に出没する、強大な力を持ったモンスターのことです。あやつのせいで、毎年かなりの数の被害者が出ております」
『そいつのいないルートを通ればいいじゃねえか』
「そうなのですが、あやつめはルートを変えたとしても執拗に追いかけてくるのです」
『そんなことじゃ、船なんて全滅だろう。どうして今まで無事だったんだ?』
「みな、高いお金を出して魔物よけのポーションを買い対策しておるのです」
だがその薬はかなり高額らしい。船を出すたびにそんな大金がかかっては、いずれ破産してしまうと。
「そこで、魔女様にどうにか近海の主を、討伐していただけないかと……」
『なんであの女なんだ? ほかのやつらじゃだめなのかよ?』
「ええ。すでに冒険者を雇って討伐を試みたのですが、海の上だと彼らも力を十全に発揮できないらしく……」
『なるほどね。魔法がない世界じゃあ、遠距離での攻撃手段なんて、せいぜいが弓くらいだもんな』
最も高火力な遠距離攻撃の手段である、魔法の無い今では、海上の魔物を倒すのに非常に苦労するようだ。
「魔女様が起こしたあの奇跡……感動いたしました。まさに、魔女神様に匹敵する強さ!」
『ひってきっつーか本人なんだが……まあ信じねえか。なるほど、であの女に魔法でどうにかしてもらいたいと』
船長達は深々と頭を下げる。
「お願いします、魔女様! もうあなた様に頼るしかないのです! なにとぞ、なにとぞ~!」
だが……返事がこなかった。
『当然か。食欲にしか従わねえ女だもんな。ま、あきらめな』
「そんな……」
するとカイトが尋ねる。
「近海の主ってどんなモンスターなのですか?」
「クラーケンという、巨大なタコの化け物です」
「タコ……それだけ大きなタコなら、おっきい【たこ焼き】がいくつも作れるかも……」
ばーん!
「話は聞かせてもらったわ」
「「「魔女様!」」」
『でたな食欲の魔女。ぐえええ!』
マリィがオセを踏んづけて、にやりと笑う。
「私に任せなさい。クラーケン、討伐してやるわ」
「「おおおー!」」
「さっすが魔女様! やはり、困った人はほっとけない、素晴らしいお方……!」
「「ありがとうございます!!」」
船員達が頭を下げる一方で、マリィが鼻を鳴らして言う。
「勘違いしないでちょうだい。別に、あなたたちのタメじゃあないんだからね」
「「「おおー! ツンデレ!」」」
『これツンデレじゃないんだよなぁ~……』
マリィは未知なるたべもの、【たこやき】のために、クラーケンを討伐することを決めたのだった。
『しかしどーすんのよ、魔女様よ』
マリィは甲板へと向かう。その方の上にオセが乗ってる。
『近海の主は、どこにいるのかわかってるのか? この辺の海域っていっても、結構広いぜ?』
「問題ないわ。船長、帆をたたんで、船を止めなさい」
船長が命令し、マリィの言ったとおりにする。
風を受ける帆がなくなったので、船が停まる。
『船なんてとめてどーすんだよ』
「こーするのよ」
マリィは船の先頭にたち、右手を前に出す。
「【水竜大津波】」
その瞬間……。
ごぉおおおおおおおおおおおおおお! と船の目の前に、巨大なうずしおが出現した。
『大津波を起こす水の極大魔法じゃねえか!』
「それを応用して、このあたりの海流をそうさし、うずしおを発生させてるのよ」
『海流を操作……? まさか、うずを発生させて、海中の化け物を引き寄せるつもりか!』
激しい水の流れが海中の生き物たちをかきあつめる。
その中心から……。
どっぱーーーーーーーーん!
「「「で、でたーーーーーーーーーーーーーーーーー!」」」
化け物のようにでかい、巨大なタコが出現したのだった。
『こんだけの大きな渦を発生させるなんて、魔女の魔法相変わらずやべえ……』
「さ、調理の時間だわ」
【★新作の短編、投稿しました!】
タイトルは――
『伝説の鍛冶師は無自覚に伝説を作りまくる~弟に婚約者と店を奪われた俺、技を磨く旅に出る。実は副業で勇者の聖剣や町の結界をメンテする仕事も楽々こなしてたと、今更気づいて土下座されても戻りません』
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