15.悪霊退散(無自覚)
【★おしらせ】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
魔女マリィは妖精の世界を元通りにした。
彼女の目的は、妖精界に生えている花の蜜。
「よし、これでハニトーが、食べれる……!」
マリィの治癒魔法のおかげで、荒廃しきっていた妖精界は元通りになっている。
あとは花を適当につんで、帰ろうとした……そのときだ。
しゅうう……と花々が枯れて行くではないか。
「あ゛……?」
びきっ、と彼女の額に血管が浮く。せっかくハニトーが食えると思ったところに、誰かに邪魔された。そのことが、腹が立って仕方なかった。
一方、妖精たちはおびえた表情で周囲を見渡す。
『ま、魔女様! お気を付けください! あの悪魔が、どうやら気づいたようです!』
「あ、悪魔……ど、どこに!」
ケモミミ料理人カイトも周囲を見渡す。だがマリィはうつむいたままだ。
そこへ……。
『おれの食事の邪魔をするやつは、どこのどいつだぁ……!』
空が暗雲に包まれる。黒い靄のようなものが集合し、それは1匹の【豹】へと変化した。
『魔女様! あやつです! あやつがこの妖精界に闇をもたらした元凶……! 悪魔……【オセ】でございます!』
老妖精が何かを言ってる。だがそんなことは、どうでもいい。
『そう! おれはオセ! 悪魔がなぜこの土地にいるのかというと……』
「おい」
ごごご……と彼女の身体からすさまじい魔力があふれていた。
感情の荒波がそのまま、外に放出されているようだ。
天地が鳴動し、今にも天変地異が起きそうな、そんな予感をさせる。
妖精たち、カイト、そして……悪魔すらおびえていた。
「あなたがどこの誰で、なんでここにるかなんてどうでも良い。だが一つ。ただ一つ言いたいのは……私の目の前から……失せろ。でないと、消す」
『『『おお! 魔女様――――!』』』
妖精たちは歓喜した。彼らの目には、こう見えていた。
妖精を虐げる悪魔。そんな妖精たちに同情し、義憤に駆られた正義の魔女が、悪魔に啖呵を切っている……と。
カイトの目にも同じように見えていた。しかし、実際のところは違う。
彼女が怒っているのは、ひとえに、ハニトーのためのミツ採取を、邪魔されたからだ。
どうやらあの悪魔の呪毒が花を枯らしてるようだった。
ならば悪魔が消えれば、花が枯れることもなく、無事目的を達成できる。
……もっと言えば。
一時的に立ち退いて、彼女が食べる分の蜜を回収さえできれば、もう後はどうなろうと知ったこっちゃないのである。
そう、今、彼女がこの場にいる一時だけ、居なくなれば良かったのだ。
……それを、悪魔オセは、勘違いした。
目の前の人間が、不遜にも悪魔に勝負を挑もうとしてると。
『いいだろう……ソロモンの悪魔の中で、もっとも毒の扱いに長けたこのおれ、オセが、貴様に呪いをかけてやる! くらえええ!』
オセが口を大きく。そこから、黒い靄が吐き出された。
靄には大量の呪毒が含まれてる。
触れれば死は免れない。しかもこの致死性の毒は、死後も魂をむしばみ続ける効果があった。
触れれば即死、そして死んだ後も苦しい思いをする。そんな、邪悪極まる毒であった。
『い、いかん! あの毒は妖精王すら太刀打ちできなかった強毒!』
『いかに貴様の治癒魔法がすごかろうと、即死したら魔法をかける暇もないだろう! がははは!』
もう駄目だ……と誰もが絶望するなか、ひとり、カイトだけは前を見ている。
「いいえ、悪魔オセ。あなたは、魔女様のお力を侮っている!」
『なんだとぉ?』
「魔女様は負けない。おまえなんかに! そうでしょう!」
そのときだ。
彼女を包み込んでいた黒い靄が、一瞬で消えたのである。
『な、なにぃい!? ば、馬鹿な! 即死の毒だぞ! どうして貴様、生きてるのだぁ……!』
反魔法、という魔法がある。一言で言えば、魔法を解除する魔法のことだ。
悪魔の使う呪いの根底には、闇の魔法が使われてる。ようするに魔法なのだ。
魔法であるのならば、反魔法で打ち消すことは可能。
マリィはオセからの魔法攻撃を受けた瞬間、すさまじい速さで反魔法を展開したのだ。
魔法の発動の速さにおいて、マリィの横に出るものはいない。
が。
「警告はした。死ね」
マリィは別に敵に解説するような優しさなんて持ち合わせていない。
エゴイスト魔女にあるのは、最高のハニトーを食べるという気持ちのみ。
それを邪魔するオセに対しては、怒りしか覚えていない。
彼女は右手から光の魔法を発動させる。
「【ターンアンデッド】!」
肉体を持たぬ死霊系のモンスターにきく魔法だ。
そう、モンスターにだ。
『ふはは! ばーか! おれはモンスターじゃあない! その魔法はモンスターにしかきかなギャァアアアアアアアアアアアアアア!!!!』
めちゃくちゃ、効果てきめんであった。
『なんでぇだぁああああああああああああああああああああああ!!!』
ただの魔法ではない。マリィの、世界で最高の魔女が使う魔法なのだ。
その威力、その効果は、通常のターンアンデッドとは桁外れ。
モンスターだけでなく、悪霊すらも、退散させてしまうのだ。
結果、オセは敗北。
『魔女様が悪を倒してくださったぞ!』
『わあい!』『ありがとうございます!』
感謝する妖精たちと、そしてケモミミ料理人。
「さすが魔女様です! 正義の魔女! かっこいいです! 尊敬です!」
マリィは治癒魔法で枯れた花をなおし、1本手で折って、にっこりと笑った。
……それは、悪魔から弱気者たちを守れて、満足だ……と。
まるで正義のヒーローのような、そんな笑みを浮かべるものだから、妖精たちもカイトも感涙を流す。
……しかし実際には。
「これでおいしいハニトーが、やっと食べられるわ……!」
彼女は正義のヒーローなんてものではなく、ただのエゴイストの魔女なのであった。
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タイトルは――
『聖剣学園の特待生は真の力を隠してる(と思われてる)~聖剣を持たない無能と家を追放された俺、大賢者に拾われ魔法剣を極める。聖剣を使わない最強剣士として有名になるが、使わないけど舐めプはしてない』
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