132.力の差は歴然
マーサは完全にマリィに押されていた。
『力の差が歴然過ぎる……』
魔女同士の戦いをながめ、オセがそういった。
カイトをはじめとしたオーディエンスたちも、マリィのその圧倒的な強さに驚愕していた。
「この! くそ! くそぉお!」
焦ったマーサが魔法を連発する。
業火、烈風、濁流、落雷。
次から次へと、魔法が繰り出される。
だがマリィは最小限の魔法……というか、ほぼ全ての魔法を石弾で打ち消していた。
『魔女さま……やべえ』
「たしかに魔法を全部打ち消してるのはすごいな……」
『皇女さんよ、そうじゃあねえんだ。あの女の本当にやべえとこは、そこじゃあねえ』
リアラ皇女も、そしてカイトも、オセの言いたいことがわからないようだ。
『いいか? あの魔女さまはよぉ、一度もデカい魔法を使ってないんだ。それで、魔女を……おれらからすれば凄い強い敵を、圧倒してるんだ』
「余力を残してる……ってことです?」
『そうだ。魔女さまはたぶん、マーサを一切脅威に感じてないんだ。必要最小限の魔力で、十分勝てる相手なんだって、相手の強さの【底】を見極めたんだろうな』
カイトはマリィを見ながら感想を述べる。
「たしかに……呪術王と戦ってるときとちがって、魔女さまからは余裕が感じられますね」
極東にいた呪術王アベノハルアキラ。
やつと戦う際、マリィは持ちうる技術をフル活用し、大魔法を連発して勝利を収めた。
あの戦いと比べ、今回の魔女VS魔女の戦いは実に地味だ。
マリィの使う魔法に多才さはなく、さらに魔力消費の激しい魔法は使っていない。
『転生後、どれだけマーサが成長したかわからなかった。だから最初は警戒してたように思える。でも力のボーダーを見極めた魔女さまは、もう不必要な力を使いすぎないように立ち回ってるように思えるぜ』
「す、すごい……! 帝国軍を壊滅に追い込んだ、嫉妬の魔女をまるで赤子扱いだなんて……!」
『ああ、あの魔女さま、普段の言動があれだけど……』
オセ、そして観客たちは確信を持って言う。
『「「 魔女さまは、強い……!」」』
マリィが強いのは疑いようもない事実だった。
マーサの脅威は、帝国軍人たちは嫌というほど味わってる。
下手したらあの少女に帝国を潰される危険性すらあったのだ。
だが今はどうだろう。
「こんのぉお! 死ね死ね死ねぇええええ!」
マーサの放つ魔法はどれ一つとして、マリィに当たらない。
それどころかマリィは……。
「チョコレートうまうま」
『「「チョコレートフォンデュ片手に戦ってる……!?」」』
カイトが作ったチョコレートフォンデュに手を突っ込んで、チョコレートを直接すすりながら……。
逆の手で石弾を発動させてる。
「文字通り片手間……!」
『あの女、生のチョコレート手で掬って飲んでやがる……糖尿病にならねえのかあれで……』
もはやこれは戦闘といえるのだろうか。
マリィはぺろぺろと、片手でチョコレートなめ回しながら、片手でばんばんと魔法を打ち落としていく。
「馬鹿にしやがって馬鹿にしやがって馬鹿にしやがってぇ~~~~~~~~~~~~~!」
「なんだか不憫に思えてきました……」
ついこないだまで恐るべき魔女にしか見えなかったのだが……。
今では年上姉にかまってもらえなくて涙を流す、幼い妹にしかみえなかった。
『まあ、でもそろそろ決着がつくと思うぜ? ほら』
「! 魔法の威力が弱まってますね」
『小僧の言う通り。魔力切れだ……にしても、あの魔女さまもえげつないことしやがる……』
マリィは世界で唯一、食べることで魔力を回復させられる技術を持ってる。
あの一見すると相手を舐め腐ってるような態度(チョコ舐め)は、実は魔力補給してるのだ。
一方、マーサはそれを知らないし、できない。
ようは、マーサは一方的に魔力を消費するかたわら、マリィは魔力を回復しながら、最小限の消費魔力でマーサを圧倒してるということである。
『大人げねえ……そんな都度回復なんてしなくても、あんたなら勝てる相手だろうに』
「小腹が空いたからね」
『魔女相手に戦って、魔力を消費してるはずなのに、小腹レベルですんでるのか……まじですげえなあんた……』
やがて……マーサは完全にガス欠を起こす。
大汗をかきながら、肩で息をしていた。
「こ、のぉ……」
「落雷」
マリィは綺麗なほうの人差し指を前に出し、片手のチョコをペロペロなめならがら……魔法を放った。
閃光が走る。
「ぎゃふん……」
目に見えない雷の一撃をうけてマーサは気絶。
「な、なんともあっけない終わり方でしたわね……」
『そう見えるのは、マリィがそれだけ、マーサと比べて格上だったって証拠だよ』
「なんにしても……魔女さまはすごい!」




