131.格の違い
マリィと相対する嫉妬の魔女マーサ。
魔法矢による攻撃は、すべて術式を上書きされ、キャンセルされた。
「死ね! 煉獄業火球!」
『! 極大魔法を詠唱破棄でだと!?』
オセが驚く一方、マーサの放った極大魔法がマリィに直撃する。
ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
『詠唱破棄してこの威力……やはり魔女ってことか。すげえ』
「詠唱破棄するとなにかちがうんですの?」
『ああ、詠唱を省略すると通常は威力と射程が落ちるはずなんだ。だが、マーサのやつの魔法は、まったく威力が落ちてない』
しかし真に恐ろしいのは、極大魔法の一撃を受けても……
服に焦げひとつすらついていない、マリィのほうだ。
『障壁を展開したのか?』
「だから、使う必要ないわよ。あんな弱っちい一撃で」
『んじゃあんたはどうして無事なんだよ?』
「それは……」
マーサがもう一度極大魔法、煉獄業火球を放ってきた。
マリィは右手の人差し指で銃の形を取り、そして放つ。
「【石弾】」
びきき……とマリィの人差し指の先に、小さな石が出現。
そが凄まじい勢いで、前方に向かって照射される。
小指の先ほどの石弾は……。
しかし、極大の炎を穿って見せたのだ。
「どうなってるんですの!? 魔法が消えましたわ!」
『恐らく魔法の核を打ち抜いたんだ』
「魔法の……核!?」
『ああ。魔女さまがいってたんだが、魔法ってのは小さな核を作り、それを中心に肉付けすることで、自然現象を起こしてるんだそうだ』
裏を返せば、核が消滅すればそれに肉付けされていた魔法がほどける……という仕組みらしい。
マーサは戦慄の表情を浮かべていた。
「どうなってんのよ!? 魔力の核は隠蔽魔法でわからないようにしてたのに!? それを正確に打ち抜くとか! あり得ないわ!」
「あり得てるのだけど?」
「っとに! ムカつくのよあんたってやつはぁあああ!」
マーサは異空間の穴を作り、そこに手を突っ込む。
そこから取り出したのは、1つの布袋だ。
マーサはそれを放り投げて、同じく石弾でぶち抜く。
袋が破けると、ドバッ……! と中身がぶちまけられる。
「なんですのあれは!?」
「あれは……砂糖です!」
リアラの質問にカイトが答える。
すんすん、と彼が鼻を鳴らしながら、確信を持ってうなずく。
「間違いないです! あれは粉砂糖です!」
「で、でも……粉砂糖なんて何に使うんですの……?」
マーサの意図をリアラもカイトも測りかねている様子。
その間に、マーサが魔法を発動させた。
「有為転変!」
すると空中に、突如として巨大な何かが出現する。
『あれは……トロル!!!!!』
トロル。巨人とも呼ばれる亜人型の魔物だ。
それが空から、無数に墜ちてくるのだ。
「トロル!? どうしてそんなのが急に!?」
『! わかったぜ! マーサの野郎……有為転変で、砂糖を生物に……巨人に変えたんだ!』
マーサの固有魔法、有為転変。
生物から非生物、その逆へと自在に形を変える魔法。
ただしそれには、お菓子に限るという縛りが発生してる。
ようは、生物をおかしに、おかしを生物にという変換しかできないということだ。
しかし……
『マーサはその【お菓子】の解釈を広げて、砂糖もお菓子ってことにしたんだ』
「! つまり……あの粉砂糖をお菓子ってことにして、それを生物、トロルに変えたと!?」
粉砂糖1つぶ1つぶがトロルになっている。
凄まじい数の巨人が、雨あられとなってマリィに襲いかかる。
上空から巨大な存在が墜ちてくる。
それらをもし避けたとしても、巨人に囲まれて絶体絶命……。
「烏合ね」
ぱちんっ、とマリィが指を鳴らす。
するとトロルたちが一斉に消えた。
「なんですってぇ……!? 消えた!?」
マーサが思わず叫んでしまう。
「どうなってるのよぉ!?」
「そんなのもわからないの?」
「むきぃいいいいいいいいいいいいい!」
その様子を遠くから見てる、オセ一行。
リアラがオセに尋ねる。
「今のはどういうことですの? 一瞬でトロル魔法で消したとか?」
『いや……ちがう。魔女さまは魔法を解除したんだ』
「魔法の解除?」
『ああ、魔女さまは有為転変を解除する魔法を開発してただろ?』
有為転変を食らったクッキー兵士たちを、マリィは元に戻したことがあった。
『あの魔法を使っただけだ。有為転変は脅威だが、結局生物をお菓子に変えるだけ。あの解除の魔法が使える限り、魔女さまに有為転変を使った攻撃は通用しない』
「つ、つまり……?」
『通常の魔法でも、固有魔法でも、魔女さまのほうがマーサより実力で上回ってる……圧倒的格上ってこった』




