129.魔女と魔女
マーサの城へと到着したマリィ一行。
しかしマリィが最初にやったのは、お菓子の城の攻略(※食する)だった。
「まぁあああああああありぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」
突如として、頭上から女の声がした。
マリィ以外、全員が空を見上げる。
そこには、一羽の巨大な鷲。
ただしその鷲は、生物ではないことが直ぐにわかった。
全身が飴細工でできていたからだ。
べっこう飴を加工して作られた大鷲の上には、小柄な女の子が座ってる。
『魔女様よぉ、あいつが嫉妬の魔女か?』
オセが一発で魔女だと見抜く。
それは、鷲の上に乗ってる女が、マリィ同様、頭の上に三角帽子を被っているからだ。
「うまうま」
『「聞けよ、話を……!!!!!」』
オセとマーサのツッコミが被る。
だがマリィはスモワを無限にもぐもぐしていて、マーサのことなんて気になっていない様子だ。
「久しぶりじゃあないの、暴食魔女!」
「もぐもぐ……」
「姿が変わってもアタシにはお見通しなんだからね!」
「むぐむぐ……」
「あんたがのんきにメシ食ってる間、こちとらずぅっと牙を磨き続けてきたんだから……って、聞けやぁ……!!!」
マリィはまるで興味なさそうに、お菓子の城から削り出したお菓子を、むっしゃむっしゃと無心で食べている。
どこまでもマイペースな魔女だった。
さて、マリィはマーサに対してさほど恐怖(というか興味)を抱いていない、一方……。
帝国の兵士たちは、ガタガタ……と体を震わせていた。
「ま、魔女だ……」「ああ……」「また、おかしにされてしまう……!!!!」
リアラの部下である、帝国の兵士は一度、マーサの魔法の体感してる。
有為転変。
生物と非生物とを変換させる、恐るべき魔法だ。
兵士たちはマーサの有為転変をうけて、全員が捕虜となっていた。
その経験があるからこそ、全員がマーサを恐れる。
だが……リアラはきっ、とマーサをにらみつける。
「貴様が嫉妬の魔女だな! 私の愛する同胞たちにした非道の借りを、今ここで返してくれる!」
リアラが狙撃銃を構えて、銃口をマーサにむける。
降伏勧告もなく、リアラはマーサに向けて銃弾を放った。それほどまでに、リアラ皇女は怒っていたのだ。
部下をおかしにして、捕らえ、奴隷のように働かせていたことを……。
どどおぅう!
リアラの放った銃弾が真っ直ぐにマーサに襲いかかる。
ずどん! と銃弾はマーサの眉間を打ち抜いた。
マーサがのけぞって動かなくなる。
「や、やったのか……!?」
「で、殿下ぁ……! 腕! 腕を!」
「うで……? こ、これは……!?」
リアラの腕が飴細工に変わっていたのだ。
「ひぃい!」
ぱきんっ、と彼女の腕が簡単に砕け散ってしまう。
「んあぁあ……!」
「「「殿下ぁ……!」」」
リアラが倒れ、兵士たちが近寄ろうとする。
「ち、近づくな……!」
ぱきき……と兵士たちの全身が一瞬にして飴細工へと変化。
そして……ぱきぃん! と全員が砕け散ってしまう。
「あ……ああ……そ、そんな……おまえたち……」
もろく崩れ去ったアメの残骸を見ながら、リアラが絶望の表情を浮かべる。
それを高いところから、マーサが冷たいまなざしを向ける……。
「魔女……これが……」
兵士たちは自分らが何をされたのか、さっぱり理解できずに、砕け散ってしまったのだろう。
リアラはマーサの謎の力をまえに、なすすべがなかった。
ばさ……! と大鷲が地上に降り立つ。
マーサが鷲から降りたって、リアラの元へやってきた。
「う、く……! くそぉお!」
片腕で銃を持って、マーサの眉間に銃口を突きつける。
だがマーサは微動だにしない。
マーサは棒キャンディを加えながら、リアラを見つめる。
……恐ろしい。
その瞳にはリアラが、まるで路傍の石のように映ってる。
引き金を引けば相手の命を奪える銃を、突きつけてる。
圧倒的に優位に立っているのは、リアラの方だというのに……。
「なに?」
「う……あ……ああ……」
リアラはマーサに気圧されて、その場にペンタとへたり込む。
マーサは無感情に銃を手に取って、リアラの眉間に突きつけた。
躊躇なくマーサが銃口を引く。
ずどん……!
痛みが、いつまで経っても襲ってこない。
リアラが恐る恐る目を開ける……。
「ま、魔女殿……!」
マリィがマーサの背後に立っていた。
マーサの腕を取って、銃口を上空へとむけていたのだ。
「あら……アタシに触れるなんて、死にたいの?」
ぱきき……! とマリィの腕が先ほどリアラがされたのと同様、飴細工へと変化する。
ぱきぃん! と腕が砕け散る。
だが……。
砕けたアメが元の形に、そして腕へと変化した。
まるで時間がまきもどったかのようだった。
「! へえ……姿は変わっても、魔法の腕は衰えてないようね」
「私より階梯がしたの分際で、上から目線で魔法を語らないでちょうだい」
「ほんっとに! やなやつ!」
マーサが振り向いて、手をマリィにむける。
手からは魔力の塊が照射された。
魔力撃。
魔力を手のひらにため、相手に向かって打ち出す。
魔法ですらない一撃。
しかし魔女であるマーサが使うことで、その一撃は必殺の威力を持つ。
マーサから放たれた魔力撃は大地を削り、そして背後のお菓子の城の一角を木っ端みじんに吹き飛ばした。
『な、なんつー威力……これで魔法じゃあねえんだから……驚くぜ……』
悪魔ですら驚くほどの魔力撃……。
だがそれを受けても、マリィは平然としていた。
「魔法障壁?」
「いや、そんなの使わなくても、あの程度では私を傷つけることなんてできないわ」
静寂。
そして……マーサが邪悪に笑った。
「さあ、決着をつけましょうか。どっちが本物の魔法使いか!」
ごぉ……! とマーサの体から魔力が吹き出す。
凄まじい体内魔力。
だが……。
マリィは怯える様子はみじんもない。
接骨木の神杖を取り出して構える。
「さっさと倒して、さっさとお菓子タイムの続きよ」
今まさに、魔女と魔女がぶつかり合おうとしていた。




