127.マーサ、待ち構える
しばらくして……。
蓬莱山にある、不死の山。
お菓子の城にて。
嫉妬の魔女マーサは、玉座に座りながらにやり、と笑う。
「くく……来たわね。マリィ……!!!」
マーサはギラギラとしたまなざしを、明後日の方向に向ける。
そこに先はマリィがいた。
マーサたち魔女は、魔力を感知するという技術を持ってる。
「わかるわよ、暴食の魔女……。あんたが転生して、膨大な体内魔力と、魔力出力を手に入れてるってねえ!」
体内魔力とは、文字通り体内に内包【できる】魔力量のことだ。
いわば、バケツの容量。
どのくらいの水(魔力)を蓄えておけるか、の数値のことだ。
前世のマリィ……ラブマリィのときの体内魔力は、さほど多くはなかった。
だが転生後のマリィには、莫大な量の体内魔力が秘められてる。
そして、魔力出力。
これは単純に、一度の魔法の行使で、外に排出できる魔力の限界量のことをいう。
マリィを最強の魔女たらしめているのは、ひとえに、尋常ならざる魔力出力があるからだ。
いかに体内魔力が多かろうと、放出する量が少なければ、たいした威力の魔法を発生させられない。
ダムのごとき膨大な量の魔力量があっても、それを排出する蛇口が小さければ、そんなに多くの量の水を排出できないと同様……。
魔力出力は、魔法使い同士の戦いにおいて、重要なファクターなのだ。
「暴食の魔女……あんたに負けた屈辱、忘れた訳じゃあないわよ!」
マーサは玉座に座りなおし、にやりと笑う。
「あんたに負けてから幾星霜……。再びあんたと相まみえたとき! ぶったおすため、しこしこと力を貯めてきたのよ……!」
マーサが高らかに笑う。
「あんたにかって、最強魔女の座はいただくわよぉ! おーっほっほっほぉお~~~~~~~!」
……独り言の多い女だ、と突っ込ものは誰もいない。
マーサは「ふん……」と鼻を鳴らす。
「あたしは高位の魔女なの。孤高なる存在……強いから群れないのよ」
暗に、仲間と一緒に旅してるマリィをディスっていた。
当然、賛同するものも、否定するものもいない。
「さぁ……こいマリィ。来なさいよ。あたしの作った自慢の魔法で、あんたをぎったんっぎったんにしてやるんだからぁ……!」
マーサの瞳には復讐の炎が宿っていた。
……まあその、幼い見た目でいくらすごんでも、恐くはないのだ。
しかし幼女な見た目をしていても、中身は魔女。
強力な魔法を使う、恐るべき存在なのだ。
まあそれをいうなら、マーサ以上の魔力出力を持つマリィは、竜や雷なんて比じゃないレベルで、凶悪な存在なのだが……。
まあそれはさておき。
「さ、来なさいマリィ! いつでも返り討ちにしてやるわぁ……!!!!」
しーん……。
「あ、あれ……? おかしいな。まだこないのかな」
マリィはマーサのお菓子の城の前まで来ている。
魔力を感知することで、その位置は把握していた。
「なのに、一向に入ってこないのは、どういうことなのかしら……?」
あれぇえ? とマーサは首をかしげる。
「ちょっと様子見にいかせるか……」
マーサは手に持っていたキャンディを取り出し、空中へと放り投げる。
マーサの得意魔法、【有為転変】。
物体の性質を無視して、姿を変化させる能力だ。
ただし、縛りとして、【生物】と【おかし】の二物質の変化しかできない。
生物をおかしに、おかしを生物に、代えることしかできないということである。
キャンディを鳥にかえ、外に放り出す。
創出された魔法生物は、マーサの使い魔。
彼女の目となり、耳となることができる。
マーサの使い魔は外の様子を見て、絶句していた。
「な、な、なぁああ!?」
そこにあったのは……。
「うまうま。おいひー!」
お菓子の城にかぶりついている、暴食の魔女マリィの姿だった。
「なぁああにやってんのよぉあんたぁああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」




