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【書籍化】転生魔女の気ままなグルメ旅~婚約破棄された落ちこぼれ令嬢、実は世界唯一の魔法使いだった「魔物討伐?人助け?いや食材採取です」  作者: 茨木野
二章

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120.自業自得




 ルグニスが地団駄を踏んでいる一方、王都は大変な事態に陥っていた。



「きゃああ!」「いてええ!」「たすけてぇえええええ!」



 王都内には、無数の蟲たちが入り込んでいた。

 黒光りする、固そうな虫。



 魔蟲と呼ばれる恐るべきモンスターたちだ。

 蓬莱山に住んでいたのだが、マーサの魔物に住処を追われて、こうして下界へと降りてきたのだ。



 魔蟲は人間を餌とする。

 ちょうどいいことに、美味そうな人間たちがたくさん集まってる場所があった。


 蟲たちは人間を食らおうと地上へと襲いかかる。

 


「みな! 城へ逃げるのだ……!」



 騎士団長以下、騎士たちは果敢に、魔蟲に挑む。

 だが……



「だ、団長! 攻撃がまったく通じません!」

「敵の外殻に、我らの攻撃がすべて弾かれてしまいます……!」



 魔蟲を覆う外殻はオリハルコン並の硬度を誇っている。

 騎士たちの使う鋼の剣では、外殻を切り裂いて、相手にダメージを与えることはできない。



 魔法の付与された武器ならいけるかもしれないが、そんな高級なものを、騎士たち全員分に配給できるわけがない。

 よって……。



「い、ぎゃぁあああああああああ!」

「お、おい! 大丈夫か!?」



 騎士のひとりが、右腕を失う。

 魔蟲に食われてしまったのだ。



 ぎしぎし……と魔蟲が不気味な笑い声を上げながら、騎士の腕をむさぼる。

 その姿に騎士たちは恐怖し、士気が低下してしまう。



「逃げるな! 立ち向かえ!」



 そんな中で騎士団長は部下たちを鼓舞し、盾を使って魔蟲の侵攻をとめようとする。



「我らが逃げれば、王都の民たちが死ぬ! 我らが騎士の誇りにかけて、王とその民たちを守るのだ……!」



 誰もが魔蟲の恐怖におびえるなか、騎士団長だけが勇敢に、敵と戦おうとしている。

 その姿をみて、なんとか勇気を奮い立たせ、騎士たちは魔蟲へと立ち向かう。



 ……そんな中。

 城では暴動が起きていた。



「聖女を出せ!」「聖女はどこにいるんだぁ!」「聖女ぉ!」



 避難してきた王都の民たちが、城のなかで聖女グリージョを探していた。



「結界はどうなってんだよ!」「そうだ! 聖女の結界があれば、この国は安全なんじゃなかったのかよ!」



 王都の民達の怒りは聖女にむけられていた。

 その中には貴族も含まれていた。


 

 王都に住む彼らは高い税金を強いられていた。

 それは他とちがって、王都は聖女の結界の恩恵を最も受けることのできる場所だったからだ。



 また、グリージョの普段の態度も悪かった。

 王都を歩くときはいつもえばり散らしていた。



 何か、王都の民が反論しようとしたら、「あたしが街を守ってるのわすれたの?」とマウントを取ってきた。

 ……その全てが今、グリージョに帰ってきていた。



「くそっ! あたしにどうしろっていうのよっ!」



 グリージョはベッドの上で丸くなって、ことが過ぎるのをまつ。

 結界を張り直せばこの騒動は収まるだろう。



 しかしマリィの強化魔法が消えてしまっている今、彼女にはどうすることもできない。



「でてこーい!」「聖女でてこいや!」

「おれらから高いかねぶんどってるんだから働け!」「おれらのことを馬鹿にしておいて、サボってんじゃあねえぞぉ!」



 王都の民たちの不満が、今、爆発していた。

 普段のグリージョの行いに加え、この緊急時。



 誰もがストレスのはけ口を探しているのだ。

 そして、自分の役割をこなさい(結界を張らない)聖女に、彼らの怒りの矛先が向いてる。



 そう、事情を知らぬ民達からすれば、グリージョは緊急時にも姿を見せず、結界も張らず、サボっているように見えるのである。



 ……だが事情を話したところで、混乱は収まらない。



「あの馬鹿姉のせいだわ! あの女……! あたしに迷惑かけやがって……! ちくしょおお!」


 

 別にマリィはグリージョに迷惑などかけていないのだ。

 グリージョが無能なのは自分のせいだし、暴動が起きているのも、普段の振る舞いが原因。



 自分マリィがいなくなったことで、グリージョが困ることを、忠告しなかったのかが悪いのか?

 ……残念ながら、マリィは婚約破棄・追放されるさいに、きちんと説明していた。



 自分がいなくなれば大変な事態になると。

 ……それに対して聞く耳を持たなかった、グリージョが悪い。



 そう……結局のところ、今の事態はグリージョの自業自得だった。

 まあそれがわかったところで、今の事態を打破することはできない。



 どうしようと思ってた、そのときだ。



「どけ! 貴様ら! 私は王太子だぞ!」

「! る、ルグニス殿下……」



 まずい。こんな状態で、ルグニスにあいたくなかった。

 がちゃり、と扉が開くと、ルグニスがやってくる。



「グリージョ!」

「で、殿下……すみません。姉の呪いのせいで、結界が出せなくて……」



 もうこうなったら全部姉のせいにしてしまおう。

 そうするほかに生きる道はない。



 だが……ルグニスはグリージョの手をつかむと、外へと連れ出そうとする。



「ど、どこへ……?」

「城の外だ!」

「外!? や、やめてください死んでしまいます!」



 外はとんでもない量の魔物がうろついてる。

 出て行ったところで殺されるのがオチだ。



「大丈夫! グリージョ、君なら呪いごときに負けない!」

「……はい?」

「きっとピンチになれば力が覚醒し、呪いを凌駕してみせるに違いない!」



 ……ルグニスはとんでもない誤解をしている。

 今ピンチなのは、マリィによる弱体化の呪いのせいだと。



 だから呪いを克服すれば、いつも通りの力が発揮でき、王都には平和が戻るだろうと……。

 しかしそれは間違いだ。



 弱体化してるのではなく、強化の魔法が解けただけ。

 そう、今この状態がグリージョ本来の力なのだ。



 ルグニスは、それをわかっていなかった。



「さぁいこう! 君が本来の力を出せば大丈夫さ!」

「い、いやですわ! 死にたくありません!」

「なにをいってるんだ! すぐに前に出て力を示せ! でないと、君を擁護した私にまで責任が及ぶだろう!」



 この王子もまた、自己保身のために、グリージョに力を使わせようとしていた。

 グリージョの失態は、聖女に選抜した王太子の責任であると……。



「ああもう! どうしてこうなっちゃうのよ!」


 自業自得だった。

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