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12.軽はずみな発言で偉大なる職人にレベルアップさせる



 魔女のマリィと、料理人の獣人カイトは旅の最中。

 カイトの持つという、七つある料理道具を回収することを当面の目標に設定。


 魔道具屋でカイトの料理道具を発見。それを手に入れるため、マリィは持っている飛行魔道具(ゴミ捨て場のホウキに飛行魔法を付与しただけのもの)を提出。


 あまりのできの良さに魔道具職人のドワーフ……キンエモンは驚愕。

 彼はマリィに弟子にしてくれと頭を下げたのだが……。


「お断りよ。じゃ」


 マリィは颯爽と出て行こうとする。

 キンエモンはその足にすがりつく。


「お願いします! お師匠様! どうか、わたくしめに、魔道具作りの神髄をお教えくださいませ!」

「勝手に師匠にするな」


 マリィは足を部分的に風に変化させる。

 ずしゃ、とキンエモンが地面に倒れる。


「ま、魔女様! 今のは?」

「ただの風魔法よ。身体を風に変えて移動する魔法なんだけどね」


 それを応用することで、物理攻撃を回避したというわけだ。

 もちろん、魔女神時代でも、超高難易度の魔法であり、マリィ以外に使い手はいない。


「すごいです! 魔女様!」


 カイトが素直に褒める一方、キンエモンは何度も何度も頭を下げる。


「お願いします! 弟子に! 弟子にしてください!」

「くどい。私には、弟子なんて取らないわ」


 今の彼女は、空腹で仕方なかった。

 カイトが手に入れた新しい魔道具で、いったいどんなおいしいを提供してくれるのか。


 今のマリィの頭の中を占めるのは、それだけだ。


 しかしキンエモンは引き下がらない。

 何度も何度も地面に頭をこすりつけて懇願する。


 ……彼は、ドワーフ国【カイ・パゴス】の、凄腕の職人に贈られる、【十二頭領】という称号を持っている。


 ようは、国から認められるだけの技術力を、このドワーフは持っているということだ。

 彼には十二頭領であることに対して、自負心を抱いていた。


 12人いる職人のうち、自分こそが、最も優れた技術者であると。

 しかし……おごりだった。


 目の前のこの、美しい女性こそが、世界最高の魔道具師であると、理解した。

 目より先に手が超えることはない。


 キンエモンほどの職人となれば、真贋を見抜く目も十分養われてる。

 そんな彼が認めるのだ。マリィの魔道具は、すごいと。


 マリィは、すごい魔道具師だと。

 しかし……。


「帰るわよ」


 これだけキンエモンが、世界に名をとどろかせる職人である彼が、ここまで頼み込んでも、マリィは見向きもしない。


「どうしても……駄目でしょうか?」

「だめね。そんな時間は無いの」

「!」


 ……時間が無い。それは、どういうことだろうか。キンエモンは考える。何か深い事情があるのではないかと。

 まあ、そんなものは存在しないのだが。


 マリィは帰ろうとして、ふと、近くに展示してあった皿、ナイフやフォークといった、食器類が目に入る。


「あら、良いじゃないこれ?」

「! そ、そう……ですか?」

「ええ、素敵ね。とてもいいわ」

「!!!!!!!!!!!!! ありがとうございます!!!!!!!」


 天才魔道具師(※マリィのこと)から、褒められた。

 キンエモンは天にも昇る心地を覚えた。


「そ、その食器類には自動洗浄の機能がついております」

「あら便利! すごいじゃないの」


 マリィとしては、単にご飯を食べるときに便利だなぁくらいにしか思っていなかった。

 一方で、キンエモンは、感涙にむせていた。


 世界最高の魔道具師から、褒められた! この魔道具こそが、自分が極める道なのだ!

 と。


 そう、マリィは教えてくれたのだ。

 手取り足取りではなく、言葉少なに。


 自分が、極めるべき、進むべき道を示してくれたのである。それ以上の言葉は、アドバイスは、不要だった。(まあ勝手な思い込みなのだが)


「ぐす……その食器は、お持ちください」

「あら、いいの?」

「はい! ただで持ってってください! お礼です!」

「お礼……? まあいいわ。じゃあもらってく。本当に良い食器よ」


(やはり、そうだ。自分は武器よりも、こういう生活に役立つ魔道具に特化した方がいいと魔女様は、そうおっしゃられているのだ!)


※おっしゃってない。


「それじゃ」

「ありがとうございました! 魔女様! ありがとうございましたぁ!」


 マリィが出て行ってもなお、キンエモンはその場で土下座し続けた。

 後に、彼は一皮むけて、歴史に名を残す職人となる。


 武器製作ではなく、生活の役に立つ小物を作ることに力を注いだ結果、十二頭領のなかでもっとも優れた技術者として、国から表彰されることになり、技術書には【生活魔道具の神】としてページにその名が刻まれることになる。


『わたくしがここまでこれたのは、師である魔女様のおかげです。導いてくれた、彼女に深い感謝の念を捧げます』


 ……だが残念ながら、別にマリィは彼を弟子とは思ってないし、導いてもいなかった。キンエモンが勝手に発言をいいように解釈し、勝手にレベルアップした……まあ結局自分の努力のおかげなのだが。


 彼は死ぬまで、マリィのおかげですごくなれたのだと、周りに言って聞かせたらしかったのだった。


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