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103/142

103.



 マリィは禁書庫の番人ロウリィを救出した。

 


『改めて……魔女さん、自分を助けてくれて、ありがとうっす』



 見上げるほどの大きな竜が、マリィの前に平伏する。

 その姿にオーディエンス(カイトとリアラ)は、竜を従える魔女すごいと尊敬のまなざしを向けていた。



 一方でマリィはその場にくら……と倒れる。

 カイトは慌ててマリィを抱き起こす。



「魔女様! どうしたのですか!?」

「……お腹減ったわ。だいぶ魔力を使ったから」



 ロウリィとの戦闘、そして時間を巻き戻す大規模な魔法を使ったことで、マリィは魔力を大量消費した。

 その結果、腹が減ったのである。



「任せてください! 魔女様がご満足いただける料理を作ります……!」

「……そう、頼むわ。なにかこう……がっつりとしたものが食べたい……肉とか」

「肉……ですか……」



 ジッ……とカイトとマリィの視線が、ロウリィに向く。

 二人の視線に、よからぬ物を感じて、ロウリィが額に汗をかく。



『な、なんすか……』

「ドラゴン」「肉……」

『いやいやいやいや! やめてくださいよ! 自分、死にたくねーっす!』

「「肉……」」

『ああもう! ちょっと待つっす!』



 ロウリィはそう言って翼を広げる。

 ぼこっ、ぼこぼこぼこぼこ!



「! 急に湖のほとりの地面が、隆起しだしたぞ!?」

「これは……植物、でしょうか?」



 一瞬で畑ができて、そこにはたくさんの緑がなっていた。

 カイトが近づいて、すんすんと匂いを嗅ぐ。



「これ……じゃがいもです! ほうれんそうもあるし……お野菜たくさん生えてます! しかも凄いたくさんの種類があります!」



 色とりどりの野菜が辺り一面に生えていた。

 リアラ皇女が目を剥いて言う。



「すごい……さっきまで何もないただの地面だったのに、一瞬で植物を生やすなんて。これは……魔法?」

『そっす。うちの魔法は、超再生っす。あらゆる生命の成長を促進するすげえ魔法っすよ。どや!』


 

 ふふん、と得意げのロウリィ。

 ようするに再生の力を使って、そこら辺に生えていた植物の根っこから、このようなたくさんの野菜を作ったのだ。



 しかし……。



「野菜か……」



 今マリィはがっつりとしたものが食べたい気分なのだ。

 野菜じゃ物足りないのである。



「やはり……ドラゴンステーキ……」

『うひぃいいい! 死にたくねーっす! おたすけ~!』



 そこへ、黙考していたカイトが口を開く。



「これだけたくさんの野菜があって、満足が得られるというと……キッシュとか……どうでしょう」

「キッシュ! それだわ。直ぐ作ってきなさい!」

「あいあいさー!」



 マリィに命じられて、カイトはウキウキしながら野菜を採取する。

 リアラ皇女も「手伝おう!」と嬉々として野菜を回収してる。



「お、皇女殿下ともあろうおかたが、土いじりなど!」

「よいのだキール。私はここに来て何もしていない。せめて、魔女殿のお役に立ちたいのだ!」

「は、はあ……では、わたくしめも手伝うのであります」



 とまあ部下達をこき使う一方で、マリィは木陰でのんびり休む。

 オセはロウリィに尋ねる。



『しかしおまえさん、こんなすげえ魔法使えるのに、蓬莱山のその……嫉妬の魔女? ってやつに出し抜かれるなんてな』

『うう……めんぼくねーっす……。でもうちの固有魔法、戦いに向かないし……』



 確かに超再生は凄い力だが、彼女が言うように、戦闘向きとはいえない。

 回復や補助の技だった。



『番人が負けてちゃ意味ねえわな』

『うう……いやでも、しゃーないんすよ。嫉妬の魔女、めちゃんこ強くて……』

『竜が出し抜かれるほど、つええのか、そいつ?』

『はいっす。やばい強いっす』



 オセはロウリィから情報を収集、カイトたちはマリィのために野菜を集め……。

 当の本人はというと……。



「キッシュ~……たのしみぃ~……」



 と食事に思いをはせているのだった。

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★1巻10/20発売!★



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