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101/142

101.時よ止まれ



 変わり果てた番人を、元に戻すことにしたマリィ。



「【風刃ウィンド・エッジ】」



 手始めに風の刃での直接攻撃を図る。

 ズバンッ! という音とともに、泥の化け物の腕がぼとりと取れる。



「やったか!?」

『いや……まだだぜ皇女さんよ。アレをみな?』

「!? す、直ぐに体が再生しただと!?」


 

 切断面から新しい泥が生えて、それが腕の形へと変化した。

 マリィはそれを見て考察を述べる。



「おそらく体の細胞が、スライムのような軟質性のものに性質変化させられてるのね。物理的な攻撃は全て無効にさせられるでしょう」

「敵の性質を一瞬で見抜くなんて……さすが魔女様です!」



 カイトが相変わらずよいしょする一方、マリィは結界を張って、彼らをガード。

 異空間からホウキを取り出して、それに乗っかって飛翔。



『魔女さまよ、何するんだ?』



 黒猫のオセが、同じくホウキに乗ってマリィに尋ねる。



「斬撃、打撃、そういう攻撃がきかないのなら、きくようにするまでよ」

『オボロロオロォオオオオオオオオオオオオオオオ!』



 ドバッ……! と泥の化け物が、体の泥を照射。

 マリィめがけて、溶解毒の泥を飛び散らせる。


 

 マリィは飛行魔法で泥をすべて華麗に回避して見せた。

 敵の泥は防壁を突破してくるので、仕方ないのである。



「見事な回避でございますな!」

「けど……大丈夫だろうか。魔女殿。あれでは近づけないではないか……」



 帝国組が心配そうに、マリィの戦う姿を見ている。

 一方でカイトは確信めいた様子で言う。


「問題ありません。魔女様はお強いですから!」



 マリィと出会い今日まで、彼女が戦う姿をたくさん見てきた。

 カイトからすれば、こんなの困難でもなんでもないのだ。



 マリィは泥の攻撃を避けながら魔法を完成させる。



絶対零度棺セルシウス・コフィン


 ガキィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!

 ……突如として湖、そして泥の化け物、そして周りの氷すべてが、氷に包まれた。


『さ、さみいぃ……なんつー出力の魔法だ。辺り一面が氷河期だぜ』



 氷の棺に泥の化け物が閉じ込められている。

 一歩も動けない様子だ。



『なんかあっさり倒したな』

「まだね」

『なんだって……?』


 

 びきっ、ばきっ、と氷の棺にヒビが入る。

 ばきぃいいいいいいいいいいいん!



「そ、そんな……! 魔女殿のすごい氷の魔法を、打ち破ってきたですって!?」



 キールが驚くのも無理はない。

 あんな凄い氷の魔法に閉じ込められたら、何をどうやっても外に出ることは不可能だろう。



「い、一体どうやったのでありましょう……?」

「ふむ……あの泥、どうやら氷の溶かしてしまうようね」



 物理攻撃、そして魔法での攻撃も、あの泥は溶かして無効化してくるということだ。



『オボロロロオォオオオオオオオオオオオン!』



 泥の化け物が、頭上めがけて泥を吐き出す。

 巨大な泥の玉……いな、泥のシャボン玉がふわふわと浮いていく。



「ふぅん、なるほどね」

『ま、魔女さまよ、あいつ何するつもりなんだ?』

「あれは泥で作ったしゃぼんだまよ。おそらく、空中で爆発させて、散弾のように周りに泥をまき散らすつもりみたいね」



 マリィは敵の狙いを一瞬で看破する。

 彼女は転生前、そして転生後も、たくさんの戦いをくぐり抜けていた。



 その経験があるからこそ、ある程度は敵の攻撃を予測できるのである。



『って! どうすんだよ! 全部避けるのか!?』

「いや、大丈夫。もう魔法は完成してるわ」

『あんたなにを……?』



 泥の化け物の頭上に、1本の杖が浮いていた。



『ありゃたしか……魔女さまの、接骨木ニワトコ神杖つえ?』



 極東で見せた、マリィの使う杖だ。

 彼女の魔法をアシストする機能が搭載されている。



「術式解放、時間停止タイム・ストップ



 その瞬間……。

 泥の化け物、そして化け物が照射した泥のしゃぼん玉が、硬直したのだ。



「な、なにが起きてるのでありますか……?」

「麻痺の魔法……?」



 帝国組が首をかしげる一方で、マリィは説明する。



「時間を止めたのよ」

「「じ、時間をとめたぁ……!?」」


 

 驚く二人を前に、マリィは淡々と種を明かす。



「あの軟質の体を攻略するためには、一度あのぶよぶよの体を固める必要がある。でも氷すら無効化するなら、あとはもう時間を止めるしかないじゃない」



 確かに細胞の時間を止めてしまえば、体が変形することはない。



『言うは易しだけどよぉ……時間を止めるなんて、そうそうできるもんじゃあねえぞ……』

「できるわよ。オカシナこと言うわね」

『そりゃあんたが異常なだけだよ……! やばすぎだろ……ったく』



 マリィはパチンッ、と指を鳴らす。

 その瞬間、風の刃は泥の化け物の体をバラバラに引き裂いた。



 どぼん……! と湖のなかに泥の化け物の体が次々落ちていく。



「す、すごいです魔女様! あんな化け物を、一瞬で倒してしまわれるなんて!」


 

 カイトから賞賛されても、マリィの表情は暗いまま。

 倒したところで食べられないからである。

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★1巻10/20発売!★



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