あのひとと、わたしと、きみと
ああそうだ、ケイの言葉が合図だって約束したなぁ。
全てを思い出した時に、頭の中に、声がする。
ああ、ただ一言の、声がする。
思い出せないけど、それは契約の声。ひとつだけしっかり解ってる、これはもう一人、大事な大事なお友達のこえ。
一言の内容は、約束の代償。
ほんの少しの言葉を伝えたくて、それでもその言葉を伝えられなかった私に対す
る、時間の代償。
お友達の準備が終わって、私の時間が無くなった事の、お知らせ。
『契約、履行だ。構わないか? 主よ』
――うん、いいよ、お友達との約束だから、私の我儘はコレでおしまい。
仲良くなれるかな、あなたとケイは。
『きっと無理だろう、そんな気がする』
そうなんだ、ちょっとだけ、残念。
『それでも構わないか? 主よ』
選べないよ、君とケイなんて。
……だから、私は選ばない。ただ私は、約束を守る。
私を助けてくれた君との約束を守って、今度は私が、力になる。
『ありがとう、主よ。では、改めて……契約履行だ』
ああ、全部終わっちゃう。
最後に考えるのは、ちょっとした後悔。
きっと、伝えられる。
きっと、伝わる。
そんな甘い事を信じていた、私に対する後悔だった。
無理だって、解ってたけど。ちゃんと伝えたかったなぁ。




