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お花畑嬢のお花畑



『お前らが優雅に生活できてんのは俺らが汗水流して時には鼻水垂らしながら頑張ったおかげ!!わかってんのか!?!?

それを「街を美しくしたいの♡」とかいう意味わからん言葉に流されて薔薇を全世帯植えるように育てるようにって本当バカなのか???バカなんだな????

別に街を綺麗にって意見に異論はねぇが薔薇ってなんだよ薔薇って!!ちげぇだろ!?!?

街道の整備なり老朽化してる公共施設の建て替えなり経済やら商店の活性化なりよぉ!!!幾らでも金の使い道はあんだろうが!!!!!!

そんで「本来、平民たちに自己負担させるべき所を我々王家が負担するのだ。彼らも薔薇に囲まれた美しい毎日を送れるのだ。文句はあるまい」って……文句しかねぇわ!!!!!

いや、さ???うん、もうさ!!まずさあ!!!!何から言えばいいんだ!?!?とりあえず種と植木鉢だけ渡されても世話も色々面倒なんだよ知らんのか!!!

もう突っ込みどころしかねぇし俺らの暮らしを理解してなさ過ぎるからそんなアホな事ばっかり言えんだろうよ!!

短期間でもいいからせめていっぺん街に降りて生活してみろ!!!!!!!!!』



約2ヶ月程前に聞いた言葉が、瞬時に頭の中で再生された。


先日、おつむがちょっとアレな例の王子によりお触れが出されたのだが。

それに対し、怒り心頭だった三軒向こうに住む鍛治士ガルツの言葉だ。

まったくもって正論である。

周囲にいた人々も同意見だったようで、拍手が巻き起こったほどだ。


後にこのお触れは手違いであったとして王家が正式に撤回したのだが、まあ手違いというより、バカがただ暴走したのだろうと国民は捉えている。



「…えーと?王子が貢いだ相手ってまたお花畑ちゃん?というか、ついに王家の予算にまで手を出したの」


「ああ、また"あの"お花畑嬢。アレが絡むともう面倒くさい疲れる。

持ち出した金額も半端ない。2000万ギルだ」


おぉう。


1ギルは日本円で約1円の価値である。

この世界での言語や文字、お金の価値、物価の相場などはほとんど日本と変わらない。

世界観も中世ヨーロッパ風ではあるが、魔法が発達しているため現代日本とあまり変わらない生活ができている。

蛇口をひねれば水が出てくるし、カセットコンロのようなマジックアイテムですぐに火をつけられる。

アイテムのスイッチを押せば、夜中でも部屋に明かりが灯る。


うーん大賢者様万歳。



「2000万ギルも何に使ったの?まさか旅行にでも行った?」


「ふっ甘いな…。答えは"ドレス"と"アクセサリー"だ」


なにが甘いな…だよ。どんだけ疲れた顔してんの。


「にしてもそれだけで2000万ギルだなんて。どれだけ買ったんだか。」


「いやいや、やっぱりセツはあいつらの日常にまだ染まってねーな。

ドレスは1着!アクセサリーは3つ!」


「は?」



よくよく話を聞くと、ドレスだけでなんと1000万ギルもしたらしい。

アクセサリーは耳飾り、首飾り、指輪を買って、それぞれ300万、300万、400万と。

4点ともオーダーメイドでこだわりにこだわって作っているのはもちろん、他国で生産されたこの国では流通の少ないものや遠方の領地の希少な布や鉱石を使っていたり。


トータル2000万ギルにも納得してしまった。

いや失礼、ほんと心底呆れた。


これだけ金をかけているのに

「ドレス一式でいいだなんてマリーはなんて謙虚なんだ」

と呟いたバカと、

「だってアルがくれたものなんだから、なんだって嬉しいに決まってるもん♡」

と言い放ったお花畑嬢には殺意が沸いたらしい。


ちなみに"お花畑嬢"というのは、最近王子がご執心の男爵令嬢マリアンヌ様のことだ。

脳内にはさぞかしお綺麗なお花畑が広がっているんだろうよ…とルディが悪態を吐くご令嬢。

また、巷ではある事件から、このところ"薔薇姫"だなんて呼ばれていたりする。

勿論侮蔑の意味を込めて。


ああ、本人は気づいていないようで、

「ねぇアル。最近ね、私みなさんから薔薇姫と呼ばれているみたいなの」

「ああ、そうなのかい?きっとマリーの美しさに見惚れた輩が言い出したんだろうな。言い得て妙だよ。」

との会話には思わず鼻を鳴らしてしまったそうだ。

かなり近い距離だったため、もしかすると聞こえてたんじゃねぇか?とケタケタ笑っていた。


……それ笑ってて良いのか?相手さん権力者だぞ?





「というか大丈夫なの?罪に問われたりしない?」


勿論バカを心配している訳ではない。側近たるルディを心配しての言葉だ。何かの責任を被せられでもしたら、こんなに苦労しているのに可哀想すぎる。

普段薄情だとよく言われる私にしては、珍しくそんな事を思う。

その程度には彼を大切な友人だと認識しているのだ。


「いや、手をつけたのが王家の予算だったからまだマシだ。一応王族の私有財産ってことになるからな。

しかしその金も要は国民の税金だから批判殺到だが。

多分国家予算ならまず間違いなく犯罪行為として罪に問われてただろうな。

まあ陛下の所まで説明に伺って、宰相のもとで少しお話して、財務大臣に頭を下げて、議会で状況把握のため意見を聞かれただけだ。

……………俺が。それもバカが遊び呆けている間に。


えっえっおかしいよな?俺は何も悪いことしてないのに。

あの馬鹿のためにどんだけ頭を下げたんだ?それなのに他の側近連中もバカと一緒になってマリアンヌ嬢に媚び売って…

まじで何で俺だけこんなに働いてんの????

俺この現状に不満を抱かないほど愛国心も忠誠心も強くないんだけど???え???」


しかしこれだけ凄まじい勢いで話しているのに、スイーツを食べる所作はとても美しい。

カモミールティーを注ぐ姿にはお上品の一言である。


「なぁーんで俺はあのバカに仕えてるんだっけ?ちょっと色々わかんなくなるわぁ。

ああああもう辞職したい退職したい転職したいいいいいいいいい」



………本当に哀れだなぁ







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