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臨時休業2日目。



シャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカ



虚空を見つめる虚ろな目と、一切ブレない手元。明らかに無心で行われている作業。


おそらく既視感を覚える者もいるだろう。




シャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカ


(いやぁ昨日は大変だった)


シャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカ


(魔法書っていう誘惑に打ち勝つの大変だったよね。なんとか引き出しに仕舞い込んだけどさ。)


シャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカ


(たぶん開いて眺め始めたら止まらないもん。あの髪飾りだって分解してみたいし、分解とまでいかなくても多少の観察時間は欲しい)


シャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカ


(けど、テオとリアとの約束もあるし、没頭しちゃだめだって理性で抑え込んだ!えらい!)


シャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカ


(まーお菓子作りも、こっちはこっちで楽しいから全然良いんだけど………)



シャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカーーーーーー



「ハッッッッッ!!!」


そう言って、虚な目に突如ハイライトが戻った。


「あれ?2人が来るって言ってた時間、もう過ぎてるよね?

もしかして、ノック音に気づかなかった!?」


11時過ぎに向かう、とのテオの言葉に対し、現在は12時前である。


「いや、でもリアなら魔術で建物内にも知らせを送ることは出来るだろうし…

ノック音に気づかなかったとしても、何かしらアプローチはあったはず」


約束の時間変更にしても、ドタキャンにしても、何の連絡も無いことが気にかかる。


「何かあったのかな」


これまでの作業を一時中断して、2人がやってくるだろう裏戸口から外へ出てみる。


すると、なにやら喧騒が。



「はぁ!?なんでアンタがここにいるのよ!」


「私がどこに居ようと勝手だろう。なぜ君の許可がいる??」



男女2人組が言い争う現場があった。


「くそ、痴話喧嘩か」


思わず悪態をついてしまったセツであったが…


ん??

あれ、リアじゃない?



「許可が要るとか要らないとかって話じゃないでしょ!

そりゃ勝手にこの辺で買い物する分には好きにすれば良いわ。けど、セツに迷惑かけるなって話よ!」


「ほぉ。セツさんというのだな。君がそれほど大切にしている存在に、興味がある。

………会わせろ」


「はぁ!?!?!?!?」



え、まさかの喧嘩の内容って私???

というか、あのいかにも「貴族ですぅぅぅぅ」ってナリした坊ちゃんは何者??



「………テオはどこだろう…」


思わず、場を収めてくれそうなテオを探してしまう。


セツの願いが通じたのだろうか。

遠くの方に、息を切らしつつも、2人の元へ駆けてくるテオの姿が見えた。



「おいリア!何してんだ!」



待ってましたヒーロー!

ナイスタイミング!!



「おお。セリウスではないか。やはりお前も絡んでいたか。

それに、ここでの君は“リア”なのだな。承知した」


青年の姿を捉え、その言葉にピタリとテオの足が止まった。

その後、諦めたようにため息を吐き、


「どうぞ、こちらへ。

現状、かなり目立ってしまっています。ひとまず場所を移しましょう。

リアもついてきて」


と、路地へ案内し始めた。




「これ、どういう状況なんだろう?

一目につかないように、ってことならウチに来てもらった方がいいよね」


よく分からない展開に疑問符を浮かべながらも、家に来てもらうことにした。



「テオ!

路地より建物内の方がいいでしょ。来て。」



いきなり声をかけたセツに一瞬驚いた顔を見せた。

そして、謎の青年とセツとを見比べて逡巡すること数秒。


「ありがとう。助かる」


大人しく家まで皆を連れた。










カチャリ。


全員を中に入れてから、戸口の鍵を閉めた。



「………とりあえずクッキーでも食べる?」


「セツ、約束の時間に遅れてしまってすまない」


苦笑いしつつ、話を振ったセツに、テオが申し訳なさそうに謝罪の言葉を述べる。



「ごめんね、セツ。

テオの仕事が急に入って、時間に間に合いそうに無かったの。

だから、私が遅れるって知らせを送ろうとしたんだけど……やっぱり1人で行っちゃえ!って思っちゃって」


「おい」


テオが真顔で突っ込む。



「で、1人で身支度してやっと店の前に着いたと思ったら、コレに絡まれて」


「コレって言うな」


「ホントにごめんね。コレが居なければ、時間通りに着いてたし、裏口で騒ぎになる事も無かったんだけど。

やっぱりコレのせいで……」


「コレって言うな」


謎の青年に対する“コレ扱い”が淡々となされてて、ちょっと哀れになる。

青年も一応嫌そうにしてるのに、ガン無視されてるし。



「まー了解。とりあえず2人に何も無くてよかったよ。

事故とか事件でも起きてるのかって一瞬焦ったし」


すまない、とまたテオ。


「そもそも、お菓子作りに集中し過ぎてて、今の今まで喧騒にも気づいてなかったしね……」





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