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空間魔法



"ラピスラズリ・無料券"


これはセツがリックにだけ特別に支給したものだ。


支給するに至る経緯としては、まあ要は、お土産に対するお礼である。


お土産も最初のうちはセツもちゃんと遠慮してたし、そもそもねだっていた訳でもなかった。なのに、拒否しても店に置き去りにしてきたり、しゅんとした顔を見せてくる。

色々と諦めて、ありがたく受け取ることにしたのだ。


かと思えば、遠慮ではなくただただリックを拗ねさせた時には、まじでくれなかった。

さらには、ご機嫌を取らないといけなかったりで、普通にイラっとくることもあった。


何度も思っているが、あんたほんとに年上?

ほんとに8歳差??



まーぶっちゃけ、値段的にも価値的にも、貰うものと全く釣り合っていない。

だけどリックに何度言っても、これで良い、これが良いと言い張る。その結果、「もういいや」と、この"ラピスラズリ・無料券"が定着したのである。



リックが店で飲食したらレジでこのカードを出してもらい、裏面に私がマジックペンで〇と書く。

一回の滞在期間に何回店に来たのか分かると楽しくなる、と言われて、私が〇を書き始めたのがきっかけだ。

ポイントカードみたいなもんか?と思いつつ、でもそもそもタダで飲み食いしてるのに…?とまたハテナが浮かんだ。




「いやぁ、でも50回はすごいね。ラスターにずっといるわけでもないのに」


「だろ??」


ドヤ顔であからさまに胸を張ってくる。


「あ、もうそろそろ丸印を描く枠も無いね。

新しいカード作るわ」



そう言い残して、厨房の端に立て掛けるように取り付けられた階段をセツは登っていった。


ラピスラズリの2階がセツの居住スペースになっている。

そこに寝泊まりし、生活しているのだ。


無料券を作るために厚紙とサインペン、ハサミ、そして保護フィルムのような硬い膜を作れるマジックアイテムを取ってきた。

そして、またリックの元へと戻ってくる。



「おっまたせー」


「おう」


リックの目の前でキュキュと音をたてながらサインペンを動かす。厚紙を切り、最後にプレス機の要領でガシャンッとマジックアイテムを使った。


正直言うと、こんなテキトーに作ったカードなんて無くても、顔パスで好きに飲食してくれればいいと思っている。

だが、リック自身が「何か証明書みたいなの無いのか?」と言ってきたので作ってみたという訳だ。



「どーぞー」


「おっ!あざす!

つーかだんだん作るの早くなってくるな」


「だってもう5枚目だし。

それよりもさ。このままポケットに入れて、んでそのまま忘れててクシャクシャにしちゃう未来が見える、ので……私の目の前で空間に入れて」


へいへい、と苦笑いしつつリックは自身の空間を開き、その中にポイっとカードを放り込んだ。




リックは剣士である。

しかし、魔導士でもないし習ってもいないのに空間魔法が使えてしまう。

空間魔法とはかなり高度な魔導であり、職業として魔導士を名乗っている者の中でも、習得している者はかなり少ない。


以前セツが、何故リックは空間魔法が使えるのか、と聞いたところ、数秒の沈黙の後に

「天才だから?」

と首を傾げつつ答えていた。

リック自身もなぜ使えるのかわかっていないらしい。


本人もよく分かっていない魔導のおかげで、お土産が新鮮なままラスターに帰ってきてくれている。

それに、魔法書などの見つかったらやばいものも安全に私の元へと届けてくれる。


空間魔法は、中に入れた物の時間を止めて入れた時の状態のまま留められる。さらに、空間内のものは、何でも好きな時に出し入れができてしまう。

何を入れたのか忘れてしまうと永遠に取り出せなくなるそう。そのため、出し入れのたびにメモを書き込むなどする魔導士がほとんどだ。もしくは、そもそも空間に入れるものを限定しているか。


リックを見ていると、何でもかんでも空間に入れて持ち運びしているようだ。ちゃんと全て覚えているのだろうかと疑問に思う。

メモを取っている様子もないし、もしかすると、空間内に忘れ去られた物も多いのではないか?と。



空間魔法が使える者はかなり少ない。さらに、リックのように先天的に使える者がいるとは聞いたこともない。

そのため、空間内に何を入れたのか確認する方法は一応存在するが、リックは空間内探知にかけられることがない。

魔導士ではないし、空間魔法の使い手だと世間に知れ渡っていないからだ。


……リックは悪用する気も無さそうだから良いけど、そういう人が存在するってかなり危ないよね?


ま、それはいいとして。




最近、リックの空間魔法の恩恵を1番受けてるのって私じゃね?と真剣に考えるようになってきた。

いや、リック自身が当然1番だろうし、各地の現地彼女さんにもいろいろ渡してるんだろうけども。



それに、魔法を渋ることなく目の前で見せてくれることは、他ではなかなかないのでかなり嬉しい、という部分もポイントだ。


空間が開かれる瞬間には金粉のような何かが舞っているし、空間内は白と赤と紫が混ざった複雑な色をしている。


空間内の色は人によって違うらしいが、リック以外に見たことがないのでわからない。

とにかく、どれもこれも美しくて魅入られてしまうような輝きがあるそうな。




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