テオとリア
「わぁ〜セツ!久しぶり!
うん?あっえっどうしたのその髪飾り!何?贈り物??だれだれ??だれから??」
「うん、早々に勢いが強い」
リアの言葉に思わず数歩下がってしまったのを見たテオが、リアの額にデコピンをした。
「いたぁ!!」
デコピンを受けたリアは、その痛さにテオを睨んでいた、が、
「で?その髪飾りの真相は?」
「まだ話続けるんだ…
えっと、イリアさんの店で買っただけ。別に深い意味はないよ?
あ、でもこれさ、魔法がかかってるみたいなんだよね。
あとで見せてあげる」
「えええええええええええ?」
「その恨みがましい目やめてってば」
「だってせっかく面白い話になるかなーと思ったのに残念。いっそ私が誰か見繕った方がいい?」
心底やめてくれ…と本気で嫌な顔をしてしまう。リアの世話になるのは色々と恐ろしい。
対価の要求が怖いというわけではない。何か奇妙で珍妙な事件が、降りかかってきそうな気がするのだ。
とりあえず、出来るだけ痛くなるように、えいっと全力のデコピンをかましてやった。
「もー2人とも痛いんだけど」
文句を垂れるリアには目もくれず、テオとセツは並んでスタスタと市場を歩いていく。
その後ろには不満げながらも、はぐれないようしっかりリアもついてきていた。
「ん?そういや今日は荷物が多いな。あれか?前に言ってたストレス発散か」
そう言いつつ、スムーズな動きでセツの買い物袋を奪った。
「うん、そー。だから明日と明後日は店閉まってるからね。
あと荷物ありがとう。助かる」
そう、セツが言った途端、テオとリアの歩みがピタリと止まった。
「「まじか」」
「え?」
「俺ら明後日に大きく時間作れたからさ。店に行こうと思ってたんだよ。だから、、、うーんまじかぁー」
思いっきり落ち込むテオと無言でいじけているリア。
ラピスラズリが愛されている事を感じて、ほんのりと嬉しさが込み上げてくる。
「じゃあ明後日厨房に来ない?
試作品の味見してよ。厨房の端にテーブル置いて、紅茶もつけるから。どう?
他のお客さんへの接客もないし、私も話しながら作業できるよ」
セツの提案内容を聞くにつれ、2人の目は輝き、顔を綻ばせていく。
リアに至ってはスキップまでしていた。
「ほんと!?いいの!?嬉しい!!」
「嬉しいけど、やっぱり迷惑じゃないか?」
「いやいや、こっちから誘ってるんだし。
寧ろ私が試食お願いしてる立場だから。よろしくね。」
かなり嬉しがっている様子の2人に、そんなに喜ばれてこっちが恥ずいわ!と声に出したいのをグッと堪えた。
「そういえば、試作品って既にある程度出来てたりするの?」
ぽつりとリアが疑問を口にした。
「うーん、まあ結構?これまで営業時間外にコツコツやってたから。
明日と明後日は、気楽なクッキングタイムを味わいたいがためって気はするかな、ストレス発散に。
だから、1人で何か作るのもいいけど3人で話しながらも楽しいよね。
……いやほんとに、アイツと同じ域に行くかなり前の、過労死の10歩手前には休息を入れてあげたい。自分のために。あの域に入ったらもう終わりだと思ってるから。」
「アイツ?」
「仕え先に恵まれなかった哀れな社畜野郎のこと。
逃げたくとも逃げられない。やりたくもない積み上げられていく仕事。無能な仕え先。
うーんやっぱり神はいないみたいだよ。献身度に対するリターンの少なさったら見てらんないもん」
「………可哀想な人もいるもんだね…」
おそらく、その社畜野郎本人がその場にいれば
「うんうん」と大きく頷いていた事だろう。
また、セツのアイツを心底哀れんだ顔と発言に、正直かなり引いたリアだった。
しかしそのわずか数秒後には、明後日の予定に心躍らせるくらいには、心に響かぬ出来事ではあった。
「おっセツ!買い出しだな?良い荷物持ち連れてんじゃねぇか」
そうこう話している内に、目的のダグの青果店に着いた。
セツを一目見た店主に、笑顔で手招きされる。
「ダグさん!
荷物持ちというか、うんまあ荷物持ちにしちゃってるんだけど…
さっきばったり会ったの。友達だよ」
「ほぉーん?にしても兄ちゃんは背が高けぇな。何センチだ?」
「190ちょっとだな」
「ほお、そりゃあすげぇ。
で、セツ。今日は何を買いに来た?」
テオの身長に興味があるんだかないんだか。
うん、無いんだろうな。
自分で聞いたくせに、次の話題にすぐさま移った。
「えーとね、甘酸っぱい系のフルーツって何か入ってる?
ジャムにしようと思ってるから、見た目が悪くても全然良いんだけど。2、3種類あれば嬉しいかな」
「そうだなぁ。サキツがあるぞ。サキツのジャムはあまり見たこと無いが、やってみたらどうだ?
んーあとティップもある。
ティップってのはコレだ。北部の果物で、ここらでは珍しいだろう?色も紫で鮮やかだし、中を割ってもこの色なんだよ。
最近入手ルートを手に入れたから、今後安定して市場に出せるぞ?
買っていけよ」
梨のような見た目で、色は紫。成人男性のちょうど拳大ほどある果物を見せてくれた。
「へぇ。いいね。じゃあどっちも1キロ分ちょうだい」
「おう!まいどあり!」




