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後編


 オークに故郷のスペースコロニーを滅ぼされて生き別れになった妹のサリーを探す旅をしていた私、ダークエルフのアイリス・スタークは。

 紆余曲折あって妹がいるというオーク星に辿り着いた。


 オーク星はアタシが想像していたより遥かに栄えており、巨大なビル群が立ち並ぶ摩天楼をエア馬車(空を飛ぶ機械仕掛けの馬車)が飛び交っていた。


 辺境のダークエルフコロニー出身のド田舎娘であるアタシはこんな巨大な都市で妹を見つけなければいけない現実に早くも絶望しかかっていた。


 それでもなんとかスラム街の酒場でハーンと名乗る男のアウトローから情報を得ることができた。

 ハーンは外見的には300歳くらいの老け顔だが、エルフより遥かに短命な人間で30歳くらいのガキだった。

 どうやらダークエルフを知らない田舎者らしく、180歳の私を自分より年下の小娘のように扱うのに腹が立ったが、妹を助けるためには背に腹は代えられない。


「お前の妹さんはオークソフトウェア本社のビルに囚われているようだぜ。地上からの侵入は難しいが、俺様の愛馬『キャプテン・ファルコン』を使えばビルの屋上までひとっ飛びだぜ」


 『キャプテン・ファルコン』というのはハーンが所有しているボロいエア馬車の名前らしかった。

 古いとは言え元は軍隊払い下げの機体らしくそのまま宇宙航行も可能だとか。


 ハーンはどうやらアタシの身体目当てのようだったがアタシはこんなガキを相手にするつもりはない。










 そんなわけで夜闇に乗じてオークソフトウェア本社ビルに屋上から忍び込んだアタシとハーンは妹の居場所を聞き出すべく、社長室へと殴り込んだ。

 広すぎる社長室は豪奢な内装と壁一面の巨大な窓があり、窓際の社長机にどっかりと社長のオークロードが座っていた。

 社長はぶよぶよの脂肪を揺らしながら気持ち悪い声で話し始めた。


「ふふふ……待っていたぞアイリス・スタークよ。妹を返して欲しくば『ダーク・タマシイⅢ』のデータディスクを渡すがよい」


「え、これ? いいよ。はいあげる」


「え、いいのか? ありがとう」


 アタシは普通にデータディスクをオークロードに手渡した。

 その様子を見てハーンは仰天して目を白黒させていた。


「いいのか? そのゲームはお前さんたちが何十年もかけて開発していたモンじゃないのか?」


「だって奴隷として作らされてただけだし。妹を返してもらえるならそれでよくない?」


 そんなやりとりをしている間にデータ内容を確認していたオークロードは急に怒り出した。


「なんだこれは! 完成していないではないか! プロジェクト管理のサワタリのやつ、虚偽の報告をしておったな!」


 あのオーク、サワタリって名前だったのか。アイツも大変だったんだなぁ。


「データさえ渡せば許してやるつもりだったが……気が変わった。ゲームを完成させるまで妹は返してやらんっ!」


「なんですって!? やっぱりオークは汚い奴らだ! ならば殺してでも奪い返す!」


 アタシはヨルダから譲り受けたビームセイバーを抜き放って社長オークロードに飛びかかった。

 しかしその時、アタシを遮るように小さな影が立ちはだかった。


 その姿は数十年振りでも見間違うはずもない、生き別れた私の妹のサリー・スタークだった。


「サリー!? どうしてそんなヤツをかばうの?」


「とうとう現れたわねラスボス! 今度こそ決着を着けてやる!」


 サリーはヴァーチャルゲームを遊ぶためのヘッドギアを装着させられている。

 彼女はゲームで遊んでいるつもりなのだろうが、手にしているのは本物のビームセイバーだった。 


「くくく……こんなこともあろうかと、お前の妹には『ダーク・タマシイⅡ』で遊ばせてあったのだ。さぁ妹と殺し合いたくなければ大人しく『ダーク・タマシイⅢ』を完成させるがいい!」


「くっ! 卑劣な!」


 攻撃を躊躇うアタシにサリーは容赦ない斬撃を繰り出してきた。

 このまま戦えばアタシかサリー、どちらかが死ぬことになってしまう。


「どうすれば――――ハッ!」


 逡巡するアタシの脳内に今は亡きヨルダの声が聞こえた気がした。


(アイリスよ……フォースを使うのだ!)


 その声に閃いたアタシはハーンに念話を送って指示を出した。そして。


「今よハーン!」


「おう!」


 アタシの合図とともに部屋の壁際までこっそり移動していたハーンが部屋の電源を落とした。

 だだっ広い社長室がまっ暗闇に沈む。


「きゃあ!? 停電? あと少しだったのに!」


 急にヘッドマウントディスプレイが消えたサリーの動きが止まる。

 アタシは魔法のフォースを集中させ、暗闇の中ゴソゴソと逃げ出そうとする社長の位置を突き止めた。


「そこよっ!!」


 渾身の力で投げつけたビームセイバーは寸分違わず社長の胸元に突き刺さった。


「ぐわあああああああああああ!!」


 悪しきオークロードは断末魔を上げて灰になった。


「お姉ちゃん!?」


 ハーンがすぐに電源を復旧してくれて、ヘッドギアを外したサリーと私は40年振りに再会することができた。








 こうしてアタシは故郷のダークエルフコロニーを滅ぼされた復讐を果たし。

 生き別れになった妹を救い出すことに成功した。


 ついでに持って帰った『ダーク・タマシイⅢ』のデータ完成させて大儲けして、ダークエルフコロニーを再興させた。


 今ではアタシは宇宙的大企業となったダークエルフソフトウェアの社長。

 妹のサリーは副社長で、ハーンにはとりあえず営業課長の職を与えた。

 ハーンのヤツは凝りずにアタシにモーションをかけてくる。

 今のところそのつもりはないけど、アイツも頑張ったしいつか願いを叶えてやってもいいかもしれない。


 新しく移住してきたダークエルフの同胞たちはアタシのことを「遺失魔法の使い手」だとか「ゲームの女神」なんて言っているらしいが、そんなご大層な肩書きなんていらない。



 アタシは今、妹と幸せに暮らしている。


 それだけで十分だよね。


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