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中編


 オークに滅ぼされたダークエルフコロニーの生き残りである私、アイリス・スタークは生き別れた妹のサリーを探していた。

 色々あって奴隷として捕まっていたオークのスペースコロニーから脱出ポッドでオーク星に向かっていたのだけれど、運悪く脱出ポッドの故障で知らない星に不時着してしまったらしい。


「いたた……。ここはどこ?」


 壊れた脱出ポッドから外に出るとそこは湿地帯のジャングルのようだった。

 植物が複雑に生い茂り、そこかしこに水気が滴り光は木々に遮られて薄暗い。

 宇宙暦が始まる前のエルフやダークエルフはこういう大森林の中で生活していたらしい。


 だが、宇宙生まれ宇宙育ちのダークエルフである私にとってはただの未開の地にしか見えない。


「空気があるのはありがたいが、ちゃんと知的生命体はいるのかしら?」


(ちゃんとおるわい。このもやしっ子エルフめ)


「うん?」


 誰かに話しかけられた気がして周囲を伺うも、視界には変な虫が何匹かいるだけで言葉を発するような生物は見当たらなかった。


(ワシはそこから少し離れたところから話しかけておる。こちらへ来るのだ……)


「え? まさか念話? そんな魔法とかファンタジーの世界じゃないんだから……」


(エルフが何を言っておる。さっさとこっちに来い)


 私は高圧的な念話の主にムカついたが、このままジャングルの中で毒虫や獣に襲われてもかなわないので苦労しながら言われた通りの方角へと移動していった。













 招かれたの洞窟の中に住む念話の主は年老いた男のドワーフだった。

 ドワーフ自慢の髭は真っ白で、ふらふらと杖をついて生活しているようだ。


「よく着たなダークエルフの娘よ。今からお前に宇宙の暗闇に立ち向かうフォースを――」


「アンタここに一人で住んでるの? 他に住人は?」


「ここは見捨てられた流刑の星。古の魔法を守る役目を負ったワシしか住んでおらぬ。それおりお前にフォースの使い方を――」


「あー。昔はよかったとかいって大昔の遺物に固執して一人で辺境に住む頑固ジジイ的な? 悪いけどそういうの間に合ってるんで。それよりオーク星に向かいたいんだけど手を貸してくれない?」


 年寄りの戯言に付き合うつもりのないアタシの態度にドワーフ老人は露骨に不満そうな態度を示した。

 客人であるアタシにお茶の一つも出さずにぶつぶつと不満を漏らしている。


「年寄りの言うことを聞きもしない……これだからエルフは嫌いじゃ」


「ちょっとそれ種族差別だって。宇宙暦以前じゃあるまいし」


「ワシは宇宙暦以前から生きておる最後の生き残りじゃぞ。相応に敬うがいい小娘めが」


「敬ったらオーク星への行き方を教えてくれる?」


「いいじゃろう」


「よしっ! じゃあこれからよろしくねお爺ちゃん」


 態度を豹変させたアタシにお爺ちゃん、後でヨルダと名乗ったドワーフの老人は苦虫を噛み潰したような表情をしつつもアタシを歓迎してくれた。


 ヨルダはアタシに宇宙暦以降に失われた魔法のフォースを教えてくれた。

 魔法は故郷を滅ぼしたオークに復讐し、妹のサリーを助け出すのに役立つ力であることは間違いなかったが、一向にオーク星への行き方は教えてくれなかった。


 そんな日々が10年ほど続いた後、辺境のこの星に敵がやってきた。














「フーハ―……貴様が『ダーク・タマシイ』制作者チーム生き残りのアイリス・スタークか?」


「その肩書きやめろ。ダークエルフコロニーの生き残りのアイリス・スタークよ」


 アタシとヨルダが住む洞窟の前にやってきたのは真っ黒の仮面と真っ黒のマント、全身黒ずくめの怪しい格好をしたヤツだった。


「オークソフトウェアが遺した最後の名作、『ダーク・タマシイⅢ』のデータを渡してもらおうか。渡さぬというのであれば……」


「いやこれまだ未完成だから渡しても遊べないよ?」


「フーハ―……力ずくで奪うまでよ!」


 いきなりビームセイバー(なんか光る剣みたいな武器。斬られると死ぬ)を抜き放ってそいつは飛びかかってきた。


「危なっ!?」


 間一髪で躱すことができたが相手は本気でアタシを殺すつもりらしい。

 ゲームひとつのために人を殺すような狂人を相手にしてられないのでアタシは洞窟の奥に逃げ込んだ。


 洞窟の反対側の出口から逃げようとするアタシの前にヨルダの爺さんが立ちふさがった。


「お爺ちゃんアイツやばいよ! お爺ちゃんも逃げないと!」


「よいのだ……アイリス。ヤツはワシの息子だ」


「え? ごめん。展開早くてよくわかんないんだけど」


「ヤツのことはワシに任せろ。今からお前を魔法のフォースでオーク星に転送する。これまでの教えを忘れるでないぞ。正しい心で扱わねば魔法のフォースは……」


「いや普通にお爺ちゃんも一緒に逃げればよくない? ていうか魔法で転送なんてできるならもっと早くオーク星に送りやがれよ! ジジイの道楽に10年も付き合わせやがって!」


 私の文句に耳を貸さずにジジイは杖で魔法陣を書きながらまたいつもの愚痴を吐いた。


「ふ……最後まで減らず口の直らぬ弟子であったな。去らばだ――」


「ちょ――」


 眩く光り輝く魔法の光で視界が埋め尽くされていく。


 薄れゆく視界の中で、ヨルダの背後からあの黒尽くめの男が現れ。

 ビームセイバーをヨルダに向かって振り上げ――――そこで視界は完全に光に埋め尽くされた。






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