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「父上、何してるんだい? 皆さん、お待ちだよ」

「ああ、そうだった。すぐに行くよ」

 

 金茶色の髪と明るいはしばみ色の目を持つ二つ上の幼馴染が、フェリシアを見ると、ポンと軽く肩を叩いた。


「やったな、フェリシア。婚約おめでとう」


 バーニーはニカッと笑った。

 差し出された肘に腕を預けながら「ありがとう」と笑い返す。


 みんなで連れ立って、屋敷の広間を通り抜け、広々とした庭に出た。

 居間や庭には、すでに二、三十人ほどの人が集まっていて、軽い食事を摘まみながらグラスを片手に談笑していた。


 アシュフィールド伯爵と父が挨拶をしながら、みんなの間を歩き始める。

 母とローズマリーはアシュフィールド夫人と一緒に庭のパラソルの下に置かれたガーデンチェアに落ち着いた。


 フェリシアはバーニーに誘われて庭を歩いた。


「だけど、サイラスのやつ、よく婿養子になんてなってくれたな」

「バーニーったら……。サイラスのほうが年上でしょ? そんな口の利き方するから、サイラスに睨まれるのよ」

「え、俺って、サイラスに睨まれてるの?」


 バーニーはまったく気づいていなかったらしく、くりっとした目をさらに丸くする。

 愛嬌のある顔がますます親しみやすくなるが、こういうところも、もしかするとサイラスは気に入らないのかもしれないなと思った。


「別に睨まれたっていいけどさ。それより、俺の友だちに紹介させてよ。みんな、ガッカリしてるけど」

「がっかり? どうして?」

「きみが婚約したからに決まってる。知らないのかい? フェリシアにはファンが多かったんだぜ」

「あら、ほんと?」


 思わずにっこりと笑ったフェリシアに「詩のファンだけどな」とバーニーは言い、ニカッと笑った。

 フェリシアはドンとバーニーを突き飛ばした。


「からかったわね」

「ごめん、嘘だよ。詩だけじゃなくて、ほんとに人気があったんだ」

「もう騙されないわ」

「ほんとだって」


 二人がじゃれ合いながら庭の真ん中あたりまで行くと、「仲がいいな」と笑いながら声をかけてくる人がいた。


「ケヴィン」


 濃い茶色の髪と瞳を持つ背の高い青年がにこにこ笑って立っている。

 控えめに言っても、かなりの美形である。


「ケヴィン殿下……」


 フェリシアは思わず目を見開いた。

 アクランド王国の第二王子にして王室騎士団の精鋭。

 エイドリアン・ワイスと並ぶ剣の名手。


 ケヴィン殿下の顔はもちろん知っていたが、直接話すのは初めてだった。


(そう言えば、サイラスたちが、バーニーは殿下と仲がいいって言ってたわね……)


「はじめまして、フェリシア」

「はじめまして」


 軽く膝を突いたケヴィンに手の甲を差し出し挨拶を受けた。

 ケヴィンはすっと目を細めて「もう少し早く知り合いたかった」と言った。


「去年の王室選詩集の作品を読んで、どんな人だろうと思っていました。こんなに魅力的な人だったなんて」

「残念ながら、フェリシアは婚約しているよ」

「知っているよ。だから、もう少し早く知り合いたかったと言ったんだ」


 冗談だとわかっていても、そんなふうに言われるとついドキドキしてしまう。

 赤くなった頬を見て、バーニーがからかった。


「フェリシア、早速、浮気か?」

「な、何言ってるのよ、バーニー! そんなんじゃないわよ!」

「顔が赤いぜ」

「しょうがないでしょ! 憧れのケヴィン殿下に会ったんだから……」

「憧れのケヴィン殿下?」


 バーニーだけでなくケヴィンにまで問うように見つめられて、ますます赤くなる。

 フェリシアは仕方なく白状した。


「御前試合を観戦してから、殿下のファンなのよ……」


たくさんの小説の中からこのお話をお読みいただきありがとうございます。

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