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 アシュフィールド邸のパーティーは昼間のガーデンパーティで、両親とフェリシアだけでなく、十歳の妹ローズマリーも一緒に家族四人で揃って出席した。


 メイジーとサイラスがパーティーだかお茶会だかを開催したかどうかは知らない。

 あの様子だと、サイラスはメイジーに押し切られて、何かしらのイベントに付き合わされたのではないかと思う。


(一応、サイラスは私の婚約者なんだけど……)


 フェリシアのいないところでサイラスに会うべきではないとか、そういう配慮をメイジーに求めるのは難しい。

 なぜだかわからないけど、「人がわざわざ言わないようなこと」に対して、メイジーは異常に鈍感なのだ。 

 わざとじゃないかと疑いたくなるくらいに、鈍い。


 はっきりと「それはダメ」と言われない限り、ふつうはしないだろうということをさらっとやってのける。


 そして、この「ふつう」というのは基準が曖昧だ。

 なぜそんなことができるのか、そんなことをするのかと、聞くこと自体もまた「わざわざ言わないようなこと」に分類されたりする。

 

 どうでもいいことばかりなのだ。


 フェリシアの家の侍女にメイジーがお茶の支度を命じたからと言って、それを「わざわざ」咎めることはできない。

 たとえそこで何か言っても、話は「お茶は必要なかったのか」という方向に流れる。

 それを乗り越えて「他人の家の侍女に勝手に命じたこと」が問題なのだと指摘すれば、今度はフェリシアの度量の狭さが浮き彫りになるのだ。


 度量が狭いとかではなく、「ふつう」の「当たり前」のことを言っただけだとしても。


 メイジーはきっと「少しくらい、いいじゃない」と言うだろう。

 あるいは「そんなことで、怒られるなんて」と、困惑してみせる。


 メイジーは今日、フェリシアのいないところでサイラスと会う。

 それは、ほとんど間違いないことだと思われた。


 そして、もしそのことで誰かに咎められても「そんなつもりじゃなかった」と、被害者のように呆然とするのだ。


(謎すぎるわ……)


 本当に何もわかっていない可能性があるところが、マジで謎だった。


「お姉様、もうすぐ着くわよ」


 ローズマリーに声を掛けられて顔を前に戻した。

 馬車の窓から外の景色を眺め、どうでもいいことをぼーっと考えているうちに、アシュフィールド邸の門の前に到着していた。


 父が先に降りて、母とローズマリー、フェリシアの降車を助ける。

 母もローズマリーもフェリシアと同じプラチナブロンドと青い目を持っている。顔立ちもよく似ているため、三人が一緒にいると、注目を浴びることが多かった。


 特に十歳のローズマリーはみんなのアイドルだ。

 ローズマリーを連れていける昼間のガーデンパーティーは、父にとって嬉しい社交の場なのだった。


「ニコラス、よく来てくれたな」

「エドガー、招いてくれて感謝する」


 アシュフィールド伯爵と父が固い握手を交わした。

 伯爵が冗談交じりにお祝いの言葉を述べた。


「フェリシアの婚約、おめでとう。うちのバーニーにと思っていたので、ちょっと残念だけどな」

「私も残念だ」


 父が笑う。


「だが、バーニーはアシュフィールド家の大事な跡取りだからな。我が家の婿養子に来てもらうわけにはいかんだろう」




たくさんの小説の中からこのお話をお読みいただきありがとうございます。

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