表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/48

(4)

 ある日、メイジーの詩が授業の中で優秀作として取り上げられた。


「おめでとう、メイジー」

「フェリシアの詩も相変わらず素敵だったけど、今回のメイジーの詩、とてもよかったわ」

「特に、冒頭の物悲しい場面が引き込まれたわね」


 後半は……、と言いかけて曖昧に言葉を濁す。

 正直なところ、後半というか、冒頭以外は、とても読めたものではなかった。

 まるで別人が書いたのかと思うほどだ。


 みんなに注目されたメイジーは、ふだんのおどおどした大人しさを捨て去って、嘘のように堂々と微笑んでいた。

 まるで選ばれるのはいつものこと、当然だとでも言いたげに、ツンと顎を上げて「ありがとう」と礼を言う。


「どうやって、あんな素敵な場面を書いたの?」


 熱っぽく讃えられて、小首を傾げる。


「さあ。自分でも、よくわからないの」


 みんなは感心したように頷いた。


「やっぱり従姉妹ね」

「フェリシアも、いつも好成績を残してすごいけど」

「血は争えないって、こういうことかしら」


 実は、メイジーとフェリシアに血のつながりはないのだけれど、まわりは知らないのでそんなふうにも言われた。


 メイジーはいつの間にかフェリシアの隣に並んでいた。

 たまたまだが、そこは教室内の輪の中心に位置していた。


 みんなの視線が自然と集まる立ち位置で、フェリシアにそんな意図はなかったが、どこか一段高い場所にでも立っているような錯覚を覚える。

 みんなを見回し胸を張るメイジーは、ビックリするほど得意げだった。


 フェリシアは学園内で人望があるというか、誰とでも仲よくなれて友だちも多かったので、同じ括りで認められたことが嬉しかったのだろうか。

 でも……。

 それにしたって、なんでそんな得意そうに? 


 フェリシアは胡乱な気持ちで隣のメイジーに視線を向けた。


 メイジーはよくわからない子だ。


 いつもフェリシアにくっついて回り、フェリシアの友だちを自分の友だちのように扱う。

 仲のいい友だちと別の友だちが仲よくなることは、ふつうならとても嬉しいことだ。

 けれど、メイジーの場合は、何がどうして、とうまく言えないのだが、なんとなく居心地が悪くなった。


 たぶん、みんなに迷惑がかかるかもしれないと思うからだ。


 メイジーは、最初から相談して何人で行くと決めてあった友人宅でのお茶会に「私も行っていい?」と、おずおず聞いてくる。

 それぞれ他の予定がある時に「今週末、海辺にピクニックに行かない?」と誘ってきて、何人かが「行けない」と断ると、ひどく傷ついた顔で、それでいてものすごく必死になって「じゃあ、来週は?」と聞いてくる。


 結局、執拗な誘いにみんなが折れる形で、行く予定のなかった海辺のピクニックに出かける。

 行けばそれなりに楽しいので、大きな問題にはならないけれど、なんとなくペースが乱れて、次の約束が間遠になったりするのだった。


 迷惑だとはっきり言うほどではないけれど、ビミョーに図々しい。

 フェリシアに遠慮しつつもメイジーを疎ましく思う気配を、チラリと匂わされることも少なくなかった。


たくさんの小説の中からこのお話をお読みいただきありがとうございます。

下にある★ボタンやブックマークで評価していただけると嬉しいです。

どうぞよろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ