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 土曜日、フェリシアはサイラスと十二回目のデートの約束をしていた。

 待ち合わせ場所である公園のベンチに行くと、なぜかメイジーが先に来ていた。


「フェリシア、遅かったわね」


 約束の時間は十時で、今は九時五十五分なので、遅くはないと思う。

 しかし、問題はそこではない気もする。


 サイラスは「僕も今来たところだよ」と気を遣ってフォローするが、メイジーの存在についてはスルーした。


「じゃあ、行きましょうか」


 メイジーが元気に歩き出す。


 サイラスの袖を引いて、「どうしてメイジーがいるの?」と小声で聞いた。

 サイラスは「いつもみたいに、きみが誘ったんじゃないの?」と、あまり気にする様子もなく聞き返してくる。


「誘ってないわ」


 というか、誘ったことは一度もない。

 婚約者とのデートに、なぜ従姉妹を誘う必要があるのか、知っている人がいたら教えてほしい。

 いつだって、メイジーのほうから「私も行っていい?」と聞いてきて、サイラスもはっきり嫌だと言わないから、一緒に来るのを許してきただけだ。


「サイラス、この前と同じボートに乗るんでしょ?」


 メイジーが池のボートを指さした。


「この前?」

「ああ、先週の土曜日、きみがアシュフィールド邸のパーティーに行ってた日だけど、トビーたちとボートに乗ったんだ」

「そう。メイジーも一緒だったってこと?」

「うん……。なんだか、断り切れなくて……」


 ボートに乗ってからも、メイジーはフェリシアの知らない話をたびたびサイラスに投げかけた。

 「トビーが言ってた、あの話だけど……」だとか「ニールの冗談が最高だった」とか。


 そのたびにサイラスは困ったような顔でフェリシアのほうをチラチラと見た。

 ボートを降りる時に小声で「僕も困ってるんだ」と言った。

 フェリシアは「別に気にしてないわ」と答えた。

 

「きみが聡明な人でよかったよ。ヘンな誤解をしないでくれて、ありがとう」


 サイラスはメイジーの目を盗むように言い、それからもちょこちょこ話しかけてきた。


「信じてほしいんだけど、ほんと、マジで、きみとメイジーでは月とスッポンだから」

「あんなのに靡く僕だと思わないでほしい」

「男爵家の娘のくせに、ちょっと図々しくないかな」


 フェリシアの機嫌を取っているつもりらしいが、それらの言葉を聞くと、サイラスに対する気持ちに疑念が生じてきた。

 

 同じ侯爵家の出身で、年齢のつり合いも取れている。

 背も高いほうだし、わりとハンサムで、王立騎士団でも一目置かれている。

 父や母をはじめとして、まわりの人がみんな喜んでくれるし、学園の友人たちからも祝福されて、羨ましがられて、よい結婚相手に恵まれてよかったと思っていた。

 婿養子にも来てくれるし……。


 けれど、本当に、サイラスでよかったのだろうか。


 特別嫌なところはないと、暴力的でもないし、人前で恥ずかしいことをする人でもないし、わりときちんとした人だと思ってきたけれど、でも……。


 プライドの高さというよりも、人を見下す物言いがなんだか気になった。

 メイジーのすることには、フェリシアも思うところが多々ある。


 けれど、サイラスの言葉を聞いて、単純に喜ぶ気にはなれなかった。

たくさんの小説の中からこのお話をお読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
こういう天然を装った確信犯にはキッパリ『ついて来るな!』と断言しないとダメ。
[気になる点] 婿に行けないとサイラスは貴族でいられなくなるのだからフェリシアの方が立場が上なわけで、「婿に来てもらう」は違うんじゃないかな。サイラスでなくでも山ほど希望者はいるだようし 女が嫁に行く…
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