97 忘れてない?禁止点は夏休み返上だよ?
翌日の雲の上学園
桜は、昨日の夜更かしの寝不足の目をこすりながらも、真面目に学校へ登校した。
「ふぁ…。」
「おっはよ!桜!」
机の上で眠っていた桜をたたき起こしたのは、七海であった。
「七海…。」
「どうしたの?眠そうにしているね。」
「いや、ちょっと寝不足でね…。」
「どうせゲームとかしてたんでしょ。」
前科があるから反論できなかった。
「桜ちゃんおっは~♪」
「何年前の流行語?」
「あ、それより~、」
急に出てきたのは南であった。
その南は鞄の中からあるものを取り出す。
「ほら♪昨日の答案用紙♪点数の見せ合いっこ忘れてたでしょ?」
いつも、テストが返却されると、いつも三人で点数を比べあう。
だが、昨日、桜は座敷わらしの件があったので、二人を置いてとっとと帰ってしまったのだ。
「そうだよ。昨日なんか桜が帰っちゃったからさ。私達二人でやるのもね。桜がかわいそうでしょ。」
「私達三人でやるからいいんだよぉ♪」
七海もプリントを取り出した。
「桜はだらしないから、まだ鞄の中にプリントが入ってるでしょ?」
桜はこの仲間、友情というべきか。この意識に少し感動していた。
同時に、昨日のことも思い出した。二宮金次郎という仲間が戻ってきたときの座敷わらしの顔は、うれしそうであった。
「二人とも…」
うるっと涙が瞳からこぼれそうになる。
その桜の感動をぶち壊す刺客…椿がぬっと現れた。
「でも、昨日、桜がいないとどちらかがビリになるから明日にしようって言ってたわよね。」
ピシっ
爆弾を落とすだけ落として椿は逃げ出した。
空気が固まる。
「…」
「……」
「ふ~ん。そうなんだ~。」
南と七海はあからさまに目が泳ぎ始めた。
「ななんの…こことかなぁ?」
「わわわ、わから、らないね???」
「嘘つけえぇ!!」
ガブリっと噛み付いた。
「じゃあ、始めよっか。」
「「ふぁい…」」
噛み付かれた後が目立つ二人。
三人がプリントを出す。
「じゃあ、五科目でビリの人が罰ゲームね。」
「あ!こんなときに罰ゲームつけやがって!」
桜
国語 50点
数学 50点
社会 50点
理科 50点
英語 99点
七海
国語 70点
数学 30点
社会 90点
理科 60点
英語 60点
南
国語 40点
数学 90点
社会 49点
理科 90点
英語 40点
「っということで、総合得点桜がビリ~!!!」
「わぁ~い!」
「…」
喜ぶ二人は舞い出した。
「さっくらの罰ゲーム♪」
「さっくらちゃんの罰ゲーム♪」
「…い…」
ボソリとつぶやく。
「いやだああぁああ!!!“あれ”だけはいやだあぁぁ!!!」
「桜!?」
絶叫した桜は逃げる。窓から飛び出して逃げる。
「ば!桜!ここ4階よ!!」
「ぁぁ!え!?」
足が地面につかない。足が空を切る。
「いやあぁっ!って…」
桜は4Fの高さから落下する。
このままでは地面へと直行してしまう。だが、桜はこのような場合のために、訓練をしていた…というよりやらされていた。祖父とのトレーニングにより…
足を伸ばせば横に見える校舎へ足が届く。
校舎を蹴り、向かいにある木へ足を届ける。
それを繰り返し、ジグザグの軌道をとり、地面へと落ちる。
その様子を4Fから、七海、南は見ていた。
「あいつは猫か?」
「獣類だよね。人類の枠をはみ出しているよね?」
と、いつもどおりの桜怪物論をする二人。
「って、そうだ。私達三人とも禁止点にはならなかったから、夏休みはあるんだよね。」
「そうだよぉ。その嬉しさを分かちあおうと思っていたのにぃ、桜ちゃんバックれちゃったねぇ。」
「まったく…。そんなに“あれ”が嫌なのかしらね。」
「“あれ”はね…。」
南は思い出す。桜が“あれ”をやったときのことを。
その後の桜は、あまりにも“不憫”や“哀れ”という言葉が似合う姿で落ち込んでいた。
「夏休みは、生徒会メンバーで旅行なんて考えていたんだけどね…。まぁ明日にでも話そうかな。」
翌日。
朝、執事である識と一緒にクラスへと歩いていた。
「しかし、禁止点とらなくてよかったな。」
「まあね。これで夏休みは理事長と顔を合わせなくてすむ。こんなに嬉しいことはない!」
ピピピピ
桜の元へメールが届いた。
『差出人・七海
おいしい和菓子作ってきたよー。』
「おかし!!!!」
「???」
桜が絶叫した。
「何だよ?」
「知らないの?七海の作るお菓子は、っぱないっすってくらい美味しいんだよ!それじゃ!」
教室へ向かっている足を回転させ、生徒会室へと直行する。
「トリックアトリーーート!!!!」
生徒会室へ入った第一声はこれであった。
「あ、来た。」
「遅いよぉ~」
生徒会室には、七海、南、氷柱の四人がいた。
「で、お菓子は?」
「その前に聞きなさい。旅行の話よ。」
「旅行?」
氷柱が、ペーパー式の世界地図を取り出す。
「っということで、旅行先を決めましょう。」
「はいは~い♪」
南は元気よく手を上げる。
「とてもいい旅行先の決め方がありま~す。」
「何?」
取り出したのはダーツ。
桜と七海は“まさか”と思う。氷柱は頭の上にドでかい“?”を浮かべる。
「“世界ダーツの旅~”」
((やっぱり…))
ゴンっと机に頭を打つ桜と七海。対照的に氷柱は面白そうな顔をしていた。
「やりましょう♪なんだか面白そう!」
氷柱がダーツをとった。
その瞬間、桜と七海が驚愕の表情を浮かべる。
「ダメよっ!氷柱が投げたら…」
氷柱がダーツを地図に向かって投げる。
投げられたダーツの向かった先は…
「ぎゃあああっ!!」
桜の額にダーツの矢が刺さる…寸前で腕で矢を止める。
ほっと七海が胸をなでおろす。そして、キッと南を睨みつける。
「氷柱がこういうの持たせたら怪我人が出るって知ってるでしょ!桜なら問題ないものを…」
「あるよ!」
「ごめんよぉ~。はい、じゃあ七海ちゃん投げて。」
まったく…と言い、七海が矢を持つ。
「ぶー、ウチも投げたかったのに!」
「はは、残念。黄金の矢は私を選んだ!」
「5部ですかー。ちょっと台詞が違いますよー。。」
「うっさい!」
そして、七海が矢を投げた丁度その時、ふてくされた桜は机の上にあった、七海が作ったと思われる和菓子に手をつけた。
それを見た途端、七海と南が叫んだ。
「「ダメーーー!!!」」
パクリ。
和菓子を一口。
「ぶるわああぁぁぁ!!!」
桜は倒れた。
「ちょっと!桜?どうしたの?」
「我が生涯…一片の……って無理…」
「桜!?桜!?」
氷柱が桜を揺さぶるが、気を失ってしまったようだ。
その様子を見ている七海と南が顔を合わせる。
(あのお菓子…)
(氷柱ちゃんが作ったんだよね…。)
小さな声で話し合う。
(だって食い物で釣らないと、昨日の“あれ”の件もあるし、絶対に来ないと思ったからさ。)
そう、氷柱は学業面では完璧超人であるが、料理はテロ級の破壊力を誇る人物であった。
そして、七海の投げた矢が刺した地図の場所は…
グアイ島。 美しい砂浜、美しい自然。人はそこを“楽園の国”と呼ぶ。
次回予告
桜「テスト編終わった!」
識「この章を作った感想だが、反省するところがあるらしい。」
桜「え?何?」
識「前話を作ったあと…少ない“お気に入り”と“評価”の数字が下がった。」
桜「まじで?」
識「まじだ。その点とかな、100話を迎える前に一度、反省会をしたいと思う。」
桜「まぁ。“妖力”とかいきなり超展開ワロタとかなるだろうな~とか思ってたけどさ。」
識「そういうことを99話で話し合いたいと思う。」
桜「98話はどうするの?」
識「短編とか入れるんだろ…きっと。」
桜「そうかぁ、ってことで、次の章は100話からだよ。その名も“夏休み旅行編”ってね。」
識「それじゃあ、期待して待っていてくれ!少ない読者さんたち!」
桜「ばいば~い。」