91 サイド乙姫
「うむ、あの“うつけ”共、わらわからはぐれおった。」
浦島の妹である乙姫も同じことを言っていた。さすが兄弟である。
乙姫がいる場所は、格納庫のような場所であり、周りにはヘリコプターや、高級車が駐車してあった。
「おお!あの車など、わらわが手をつければ、そこいろの戦闘機になど負けんぞよ。」
目を輝かせて、近くの車へと近づいていった。
その時、乙姫は特殊な色をした眼鏡を取り出して、装着した。
「ん?おお、これは防犯用赤外線レーザーであるか。わらわを罠にはめようとは100年は早いぞよ。」
と言い、再び何か道具を取り出していると、
ピッ
何かを踏んだ。
「これは予想外であったな。」
その時、ガシャリと何かが動き出した。
その数分前、
「よし、じゃあ二人のうちどちらかが見つかったら、連絡して。」
桜は浦島たちを救出するためのミーティングを行っていた。
ピピピピピピ
鳴ったのは桜の携帯電話であった。
「はい、って茜さん。」
『桜ですか?今モニタールームにいるのですが、桜のご友人らしき方が二人ほど迷子になってるようですが。』
「そうそう!それだよ!その二人を今から探しに行こうとしてるの!」
『そうですか。でも今防犯用スイッチが機動したので危ないですよ。』
「ってかなりピンチじゃないですか!冷静言わないでください!」
茜は二人のいる場所を桜に言った。
『ごめんなさい、桜。あれはここからでは制御ができない防犯装置なの。桜捕獲用と違って、ここでは制御ができないから、直接部屋へ行ってパスワードを入力してきてください。』
止める方法を聞いて、桜は班を二つに分けた。
屋敷の構造がわから桜と識を分け、
桜、椿
識、間宮
の二班に分けた。
桜たちは、乙姫のいるエリアへと近づいていた。
「ちょっと、桜。あなたの家って遊園地なの?」
「時々、ウチもそう思うよ。」
トラップが作動して、桜へ向かって、ハンマーが振り下ろされる。それを軽々と避ける。
続いて、椿へ向かってダーツの矢が発射されるが、余所見をしながら矢を掴む。
「あそこだよ。乙姫がいるのは。」
「駐車場かしら?」
廊下を抜けて、大きな駐車場へと出た。
最初に目に飛び込んできたものは、車が変形をし、二足歩行している警備ロボットであった。
「何かしら、あれ?」
「最近仕入れた警備ロボットだよ。それじゃあ、あのロボのコントロールパネルが部屋の所、っとこれか。」
警備ロボットを停止させるためのパネルは入り口のところにあった。
先ほど茜から聞いたパスワードを入力して、停止させようと手を伸ばしたとき…
ビュンッ
何かが飛んできた。
飛んできたのは、ロボのロケットパンチ。桜たちを視界…いやサイトにいれて、迎撃行動をした結果であろう。
その拳は、桜をはずし、コントロールパネルへと直撃し、黒い煙を上げさせた。
「あ、やば。」
「どうするの?」
固まる桜、なぜか楽しんでいる椿、そして…
「ぬしら!いい加減助けぬか!!」
ロボからの攻撃を車を盾にして逃げ回っている乙姫。
「とりあえず、もうあれを破壊するしかないかな。」
「でもいいの?あれ高いんじゃなくて?」
警備ロボなど、桜邸では今回試験的に配備をさせてみた。それゆえ、費用もそこそこかかったのは桜も知っていた。
ロボを仕入れた当日、桜は茜にこう言われていた。
『これ、壊したら、桜も壊しますよ♪』
「ってわけだから、大破はさせたくないんだよなぁ」
「仕方ないわね。行動が停止したら、バッテリーを抜き取れば問題ないわ。」
「お、いいね。」
桜と椿が作戦を立てていると
「だから早く助けぬか!この大うつけ共!だが、作戦は理解した。わらわにいい考えがある!まず助けろ!」
桜が前へ出る。乙姫を狙っているロボへととび蹴り。
「っ!?重い。」
蹴りを入れたがロボ自体は少しもよろけなかった。
「桜、手を抜いたでしょ。」
「バレた?」
壊れることを恐れてあまり力を入れなかった。
だが、蹴りを入れたことで、ロボの標的は乙姫から桜へと変わった。
グイーンっと機械音を鳴らして、桜へとボディを向ける。
「よし、まな板女、よくやったぞよ。」
「てめ!助けたのになんだそのまな板って!」
「事実でしょ。」
とどめは椿がボソリと言う。
「では、わらわは秘密兵器にて対処する。」
「「秘密兵器?」」
乙姫の秘密兵器とは?と考えていると、ロボは右腕を上げ、拳を桜へと向ける。
「うわ!乙姫早く!」
桜へ向けて拳を飛ばす、ロケットパンチ。と言っても拳は本体とワイヤーでつながっている。
ロボ自体が大きいため、拳の大きさは桜の胴体分の大きさであった。
「ふんぎっ!!」
拳を身体で受け止める。だが、
ブシューーッ
拳の後ろからジェット噴射。さらに勢いをつける。
「これは…!」
勢いに負け始めた桜は、後ろへと下げられる。さらにロボは左腕を上げ、もう片方のロケットパンチを放とうとしている。
「仕方ないわね。」
今までずっと観戦をしていた椿が歩き出した。
「私、黒雛椿がお相手して差し上げるわ。」
いつものように扇子をバッと広げる。そして扇子を後ろへと振るい…
「待たせたであるな!」
椿が言った言葉ではない。構えた椿を遮るように声を出したのは、乙姫であった。手には大きいトランクを持っている。
「それが秘密兵器かしら?」
「得とごらんあれ、わらわの科学の結晶であるぞ!」
トランクを胸に当てると、開き、中から様々な機械が出てきた。機械は乙姫の身体を武装するように装着され、完成したのは…
『これぞ、携帯用戦闘スーツ“ガイア参式”』
見た目は、いわゆるアーマースーツ。まだ塗装が完了していないのか、灰色に光る部分が目立つ。乙姫の身体を二回りほど大きくしたスーツで、背の小さい乙姫はこのスーツのおかげで2m近い身長を獲得している。
『さあさあ!はじけるがよい!』
両手を肩の位置まで挙げ、両手を開いてロボへと向ける。
「こ…これは…」
「何、桜?」
桜が乙姫(ガイア参式)を見ながら手をぷるぷるとふるわせる。
「ビームだ…」
「はい?」
「手からレーザービームが出るよ!あの全国民の憧れである手からビームってやつだよ!」
その乙姫ガイアの手が発光し始める。
そして
プスン…
何かが抜けるような音がした。
『おろ?』
手は発光を失い、シュ~っと煙を上げる。それから何も起きず、手をおろした。
『う~む、出力がギリギリであったかのう、失敗じゃ。』
「こんの「ドアホ!」
『だが、心配するでない!』
乙姫ロボは右足を前へと出し、駆け出した。その勢いを乗せた拳をロボへとくりだす。
「乙姫!?」
『格闘モーションもダウンロードしておる。』
ロボは大きくよろける。
そして、再び右腕だけ肩の位置まで挙げる。すると手の甲部分から銃口が出てきた。
『鉄甲砲撃連弾式!!』
ダダダダダっとマシンガンによる発砲する。
だが、先ほどの拳と違い威力はない。それゆえ弾ははじかれる。
『ふむ、ならば!』
逆の左腕を挙げ、左甲部分の装甲が上がりミサイルが出てくる。
『鉄甲砲撃爆散式ッ!!』
ミサイルを二つ、連続で発射。
ロボの頭部と装甲が張ってる腹部に直撃。
中規模の爆発が起こる。その爆発で、腹部の装甲が破壊され
『とーどめぇ!』
このままでは破壊される。そう悟った桜のとった行動は…
「やめろおぉぉぉーーー」
桜は攻撃を静止するため、まさにVFX技術使用のごとく、乙姫とロボの間へとダイビングした。
弾丸、ミサイルが発射される。
「あ、この後どうしよ??」
とりあえず飛び込んだものの、どのようにして止めるかなどまったく考えていなかった。
作戦を考える間なく、目の前にはミサイル。
「ぶぎゃああ!!!」
被爆。
「あの大うつけ!自分からミサイルにあたりに行きおった!やはり第一印象通りの猿であるな。」
桜の身を案ずるより、行動の非難をしていると
「他に言うことあんだろ!」
復活した。
ロボを見ると、何やら不穏な動きをしていた。
「な、何?」
「エラーでも起こしたのであろうか?」
ロボの目が赤く、そして黄色く点滅する。
『ビー、リカイ不能不能不能』
ロボから見れば桜は自分からミサイルに当たりに行ったように見えたらしく、その行動が“意味不明”なので高度なコンピューターを搭載しているロボはエラーを起こした。
桜の自爆行動が逆に逆転への糸口となった。
続いて、蒸気を出し始めて暴れ始めた。
ロボは手を振り回し、内臓武装を取り出そうとする。その時
ヒュッ
黒い影、黒雛椿の高速移動。
椿はロボの背後をとり、そこからバッテリーの位置を見つける。
「そこね。」
閉じた扇子を振り下ろす。その下ろしたと思われた扇子を一瞬で上へと上げる。
広げた扇子にはバッテリーらしき物が置かれてる。
「桜を囮にする作戦成功ね。」
「な!囮!?」
持っていたバッテリーを桜へと放り投げる。
「だって、桜は獣のように動いてもらったほうがいいからね。」
「こんの!!」
何はどうあれ、乙姫の救出に成功した。
次回予告
桜「そういえば、そろそろ100回だよ。知ってた?」
椿「当然でしょ、この私黒雛つば…」
桜「で、100回は記念すべきことだから何かしようって思ってるらしいんだけど何かある?」
椿「私の名乗りを途中で妨げるとは…、桜!いい度胸ね!」
桜「あ~、やっぱり理事長の血を引いてるよ…。ではまた次回、」