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雲の上学園生徒会記録  作者: skyofnet
第6章『西園寺家』
83/119

83 七海の眼鏡

次の日の雲の上学園


「ねみ~~。」

「おい桜。一応…力は怪物、胸はペッタンコの色気なしだが、一応女なんだからそんな…」

「うっさい!」


隣を歩いている識へと鉄拳制裁。


「ウチ生徒会室に忘れ物あるからちょっと行ってくるから。」

「あ、待て桜。西園寺のことだが。」

「ん?七海?」

「九龍って組織知ってるだろ。」


記憶をたどる。う~んっと頭をひねる桜。


「先日戦ったやつらだろ。」

「ああ、誘拐したやつらね。」

「あいつらは、目的のためならしつこいって話だ。だから西園寺は…」

「大丈夫っしょ。頼朝ってデカイやつ、あいつが傍にいるから。」


少し、遠い眼をしていたが、本人は気づいていなかった。


「じゃ!遅刻しないつもりではいるから!」

「サボるなよ!」


桜は駆け足で生徒会室へと走っていった。




ゴゥンっと古めかしい音がなり、生徒会室への直行エレベーターが上がる。

雲の上学園の象徴とも言える時計台の中に生徒会室がある。時計台自体が設立と同時にできたものなので、その中のエレベーターも古めかしい物であった。


チンっと音が鳴り、扉が開いた。

桜の用事は、自分の机にP○Pを忘れていただけであった。


「さって、ウチのゲーム♪授業サボりのお供ちゃん♪」


授業サボる気満々だった。

机をあさっていると、ゴトっと音がした。


「ん?隣かな?」


隣の部屋は何もないが、見晴らしのいい部屋で、バルコニーもある部屋である。サボりにはもってこいの部屋でもある。


「南かな?」


サボり常習犯である南を考えた。

仲良く授業をサボろうと思い、明るい声で登場しようとした。


「みっなみ♪授業さぼ…」


そこで見た人物は予想外の人物であり、眼を見開いた。


「七海…」


七海がいた。昨日まで謎の不登校をしていたのだが、今日になってなぜっと思ったが、今はそんなことどうでもよかった。

七海は無事に登校してきた。

ただそれだけが嬉しかった。


「七海。久しぶり…」


どこかぎこちなく挨拶をしてしまった。

先日あんな目にあった人物で、それを助けたのが桜だが、そのことは秘密にしようと誓っていた。


「ええ、桜。」


七海もぎこちなく挨拶をした。

自分に後ろめたさがあったためか。


「こんなとこに、こんな時間にどうしたの?」

「忘れ物…かな。」

「“忘れ物”か。」


桜は内心、“忘れ事”ではないかと思っていた。


「ウチね…」

「桜。」


急に言葉を遮るように止められた。

後ろを向き、表情が桜に見えないようにした。


「私ね、昔さ。不良だったでしょ。」

「あ、ええ。」

「だからさ、誰も近づかなかったし、話すことがなかったでしょ。だから桜が話をかけてくれたとき嬉かった…ようなうざかったような。」

「おいおい…。」

「まぁ、それと、アンタが生徒会に誘ってくれたとき。すっごい嬉しかった。いまさらだけど、ありがと。」


桜は急に嫌な予感がした。

七海がどこか離れてしまいそうな、そんな気がした。


「な…」

「じゃあね。桜。」

「待って!」


何を言おうか考えていなかったが、つい呼び止めてしまった。


「何?」

「あ…いや。」


何か言わなくてはいけない。そんな衝動にかられてしまう。

そして必死に言葉を探して振り絞った答えが


「明日も来るよね?」


不良時代の七海に言った言葉が出てきてしまった。

七海は少し虚をつかれたように呆然として、すぐに笑いながら。


「うん。」


ただそれだけ応えて、生徒会室を出て行った。


「あれ?」


桜は違和感を感じる。七海の言葉にではなく“七海自身”に。その違和感を考える。


「そうか!何で気づかなかった!」


机に手を置いたとき、カチっと音がして、プラスチック製の何かが落ちた。

それを拾い上げたとき、桜の疑惑が確信へと変わる。


「七海は眼鏡をしていなかった。いや、ここに置いていった!?」


七海は不良時代には眼鏡をしていなかった。眼鏡をつけ始めたのは、若干更生した後だった。

七海の状況から察する、眼鏡を捨てる…つまり今の暮らしと決別する証。

頭の中でいくつかのシナリオが浮かぶ。その中で最悪かつ、現実的な事を口に出す。


「死ぬ気だ。恐らく九龍と刺し違えてでも…。」



七海は、九龍に一太刀でも入れることができたら、死ぬ気だ。


桜は七海の態度を見て、そう思った。


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