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雲の上学園生徒会記録  作者: skyofnet
第6章『西園寺家』
72/119

72 赤と青と男

赤は手品のように武器を出す。

青仮面の者はナイフを、赤仮面の者は素手で戦うらしい。


「上等っ!」


桜が踏み込む。

手を広げ、木刀・村雨を召還した。

それを見て、対峙している青仮面は大きく跳躍し、桜との距離を詰める。


青仮面の攻撃は手に持っているナイフではなく、足により蹴りであった。

目標までの距離測定を誤ったのか、それは桜の少し手前で空を切るような状態になった。


桜も空振りかと思ったが、桜の戦闘実践に基づく直感が危険を告げる。


「違うっ!これはっ!」


とっさに桜は横とびをし、回避行動をとる。

それは正解であった。


青仮面の仕込み靴からナイフが勢いよく飛び出した。


『ヨケタ…』


それは機械を通じて出した、青仮面がはじめて発した言葉であった。


「次はこっちから行くよ!」


桜は駆け寄り、横一閃。様子見のような一撃を繰り出す。


それを舞うようにバク宙で回避する。

それは中国雑技団を思わせるような見事な技であった。


青仮面は回避するだけでは終わらなかった。


そこから、手によるナイフ投擲。


拳銃の弾丸を弾く桜にとってはナイフの投擲など問題ではなかった。

いつものように弾く。


青仮面は地面に着地し、再びナイフを投げる。


「何度やっても同じさ!」


さっきと同じように弾こうとする。

向かってくるナイフは一本。


桜は木刀を振り下ろす


だが、そのとき気づいた。


ナイフが先ほどのものとは違う

少し大きいナイフ。

何か仕掛けが?


そう思ったとき、ナイフが閃光弾のように発光した。

それは単純な目くらまし。

桜は光を直視はしなかったが、怯み、隙をつくってしまった。


(まずい!けど!)


桜は目を閉じ集中する。


(ここは森。現在風なし。なら…  桜式・六ノ型…)


耳を極限まで澄ます。

桜の鍛え上げられた聴力。そして直感…いや、超直感ともいえる感覚を完全駆動させる。


閃光が放たれて一秒ともたたない間のことである。


桜の背後に青仮面が忍び寄り構える。


「そこぉっ!」


いわゆる切腹をするような斬撃。

わき腹を通り抜け、背後への突き攻撃。


相手にも予想外の攻撃であり、腹部へと直撃。

青仮面は吹き飛ばされる。


「どうだ!」


青仮面を見るとすぐに立ち上がり、腹部をさする。


『……アセ』

「ん?」

『オマエヲ…ホンキ…コロス』




桜が戦闘を始めたころ、エヴァも赤仮面との戦いを始めていた。


木々を走りながらエヴァはトカレフタイプの銃で射撃をしていた。

ちなみに弾丸は実弾ではなく、ショック性ダメージの強い弾丸である。


「ちっ、」


赤仮面は隠れるばかりで、未だ攻撃をしてこない。

見た目は何も持っていないが必ず何かを隠し持っている。

エヴァはそう思い、距離をとりつつ警戒をしていた。


(どうやってヤローに手を見せてもらうか…。めんどくせー、いっそ接近してみっか。)


エヴァは接近戦を試みる。

一気に近づく。


赤仮面は木に隠れている。


その木を回り込むように接近し、赤仮面に銃を向ける。


すると、赤仮面は袖口からワイヤー付のクナイを一本発射。

だが、速度は遅い。

エヴァの動体視力なら簡単につかむことができる。


クナイをつかみ、赤仮面へと銃を向ける。


「これでチェックだ!」


違和感


そう、エヴァは異様な違和感を感じる。

この学園に忍び込むにはよほど腕の立つ人物なはず。

それにクナイの速度が、これを掴めと言わんばかりの速度であった。


罠!?


そう思い、とっさにクナイから手を離す。

丁度話した瞬間、クナイから『バチッ!』という音がした。

恐らく電流であろう。

あと一瞬でも遅かったら感電していた。


「この根暗野郎が!」

『シッパイ…』


次は逆の袖口から小さな丸い物を発射。


「火薬!?」


普段から火薬の臭いをかぎなれているおかげでそれが“爆弾”であることがわかった。

防ぎようがないので木に隠れてやり過ごす。


小さな爆発音が鳴る。


音が鳴り止むと、エヴァは反撃のため、得意距離である中間距離にまで離れる。


赤仮面から見て、エヴァの姿が見えた。

クナイを連続ではなつ。


「危ね!」


頬スレスレの位置を通過した。

仕返しとばかりに、銃を発砲。


エヴァの発砲を仮面は簡単に回避した。

エヴァも回避されることをあらかじめ知っていたかのように反応した。


「ほらよ!」


背中から銃をもう一丁取り出した。

素早く発砲。


さすがに仮面は反応できず、弾丸は眉間部分に直撃…したかのように見えた。

仮面はわずかに顔をそらし、直撃は防いだ。

しかし、弾丸の威力で、仮面にひびが生えた。


「っ!」


仮面は顔をおさえ、逃げようとする。


「させっかよ!」


両銃で連続発砲し、追撃する。


仮面はそれを回避できないと悟ると、逃げることをやめ、攻めにでた。

仮面から手を離したとき、ひびが広がり、ついには仮面が真っ二つに割れた。


そして仮面が落ちた。


素顔があらわになった。


「女!?」


女は素早くエヴァの背後へと跳躍する。

その時、エヴァは気づいた。

いつも間にか自分の首元に鎖が巻かれている。


「!?」


とっさに、エヴァは鎖が首を完全に絞める前に、手を鎖と首の間に入れる。


女は地面に着地すると、一気に鎖を引く。


エヴァは鎖を握り、どうにか首を締め付けられないようにする。

だが、女は鎖を握られていることを悟ると、片方の手で懐からナイフを取り出し真っ直ぐ投げる。


「ぐはっ!っ…」


ナイフはエヴァのわき腹へ浅くではあったが刺さる。

女は再びナイフを取り出す。


「させっかぁ!」


エヴァは鎖を掴んでいない手で銃をたくみに操り、背面打ちを試みる。

目は前を向き、後ろの物を射撃する技術。

対象は女ではない。恐らく銃を向けた瞬間避けられるであろう。

自分にすぐ後ろの鎖を狙う。


エヴァは自分の腕を信じて発砲。



キィン!っと高い音がなり、鎖が千切れる。


女は驚いた。その行動に驚くと同時に、力強く引っ張っていた鎖がちぎれた反動で、後ろへと下がる。


エヴァは急いで振り向く。

今の一撃で銃の残り弾をなくしてしまったので、腰の弾層を入れなくてはならない。

その時間を与えるわけにはいかなかった。


エヴァはポケットから何かを取り出し、投げつける。


それは閃光弾だった。

通常の閃光弾と違い、音がならず、光だけであったが、効果はあった。


からだが、後ろへ流れていた女は反応できず、閃光弾をまともにうけた。


激しい光で女は視界を奪われた。

その隙にリロードを終えて、銃をまっすぐ構える。


「っしゃあ!これでぇ!」


その瞬間、エヴァに横からの衝撃が襲った。

重い衝撃に吹き飛ぶ。


何があたったのかエヴァはわからず、振り向くと、そこには190cmはあろう大男が立っていた。


「油断しすぎだ。」


その男は修羅場をくぐってきたであろう険しい表情。

長いトレンチコートを翻し、エヴァへと向く。


「小娘。なかなかの腕だな。だが。」


男が一瞬で消える。

というより、トレンチコートをエヴァへと投げつけ一瞬視界を奪われたあと、男を見失った。


「何!?」


目の前で消えた。耳を澄まし、場所を探る。

この間は1秒もないやりとり。


スナイパーでもあるエヴァは常人より五感が優れている。

さらに風を読むことには長けている。

その“風”を感じ相手の位置をさぐる。


「そこか!」


再び背面撃ち。

そこの男はいた。


が、


ギリギリのところで男は避けていた。


「貴様の腕を先ほどみせてもらった。このくらい読むとわかっていた。」


男はエヴァが気配を探り攻撃をしてくることを読んだ上でさらにその一歩先の行動をしていた。

男の両手を勢いをつけてエヴァへと当てる。


「波ッ!!!!」


ズゥン!!っと重い音がなり、エヴァが息を吐き飛ばされる。






桜もその光景を見ていた。

見たのは人が飛んだというところであった。


「な!」


エヴァも桜同様常人以上の肉体を持っている上、桜と互角の勝負をする人物。

そのエヴァが飛ばされるとなるとただ事ではないことがわかった。


視線の先に男が構えをしており、その人物がエヴァを倒したのであろうことがわかった。


視線が合い、男が口を開ける。


「女!ここは引かせてもらう!貴様らのような奴らがいたとは誤算であった!」


そういうと、スモークグレネードを投げ、撤退をした。


桜は追うことを考えたが、エヴァの容態が気がかりで断念した。




「エヴァ大丈夫?」


エヴァの下へ駆け寄り、攻撃された場所の具合を確認する。


「あ…のヤロウ…。手を抜きやがった。」

「え?」

「女の方だ。まだ奥の手を隠してるような感じだった。」


くやしそうに歯をギリギリとかみ締める。

その時、もう一人の存在を思い出した。


「おのちびっ子、乙姫は?」


周囲を見渡すと、横たわっている機械を発見した。



「ちびっ子!」


そこには乙姫の乗っていた機体が転がっていた。


桜が急いで駆け寄ると、中には乙姫の姿がなかった。


「おい、桜見ろ。」


エヴァが指を指すところを見ると、機体の腹部にあたる場所がへこんでいた。

それも綺麗に拳の形を残して。


「これって。」

「あの“男”だ。」


エヴァを吹き飛ばした大柄な男のことだ。


「たしかにあいつなら、やりそうね。」

「ああ、それでチビ介は脱出したんだろう。ほらあれ見ろ。」


先を見ると、とぼとぼと乙姫が歩いてきた。


「う~む、まさかわらわのガイアが一発で機能停止にさせられるとは思わなかったぞよ。」

「やっぱり男に?」

「うむ、そなたらの戦いを高みの見物しとったらな、見るのに夢中になりすぎて、対人センサーを見るのを忘れておった。」

「完全に油断じゃねーか。」


桜たちは呆れつつ、ガイアを破壊した威力を忘れずに心の中にその絵を刻んでいた。


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