68 桜と殺し屋
桜の頭上には女性が刃物を持ち、非常階段にぶら下がっていた。
「お前のこと店でるときから見てたアルネ。ターゲット間違いないアルネ」
「人通りがないところに行くのをつけていたってことか。」
「ま、そういうことだから死ぬアルネ。」
「まったく、語尾は『ある』か『ね』のどっちかにしろっての!」
殺し屋は宙に舞うと同時にクナイを取り出し桜に向け乱射。
(ここなら村雨を!)
「村雨!」
桜の手元に木刀・村雨が飛んできた。
それで飛んでくるクナイを叩き落す。
その様子をみて、殺し屋は「おお」っと驚きの声を上げていた。
「避けるか逃げるかと思っていたアルネ。」
「今までアンタが会ってきた人物とは一味も二味も違うってことだよ。」
「それなら、少し遊んであげるアルネ。今までのやつは遊ぶことすらできなかったアルネ。」
殺し屋は地面に突き刺さった刀を拾う。
その刀は桜はゲームとかアニメで見たことがあった。
“青龍刀”というやつだ。
殺し屋は慣れた手つきでそれをブンブン振り回す。
「クナイに青龍刀。まだ隠してる?」
「あと小型爆弾もアルネ。」
「そうかい!」
桜は近くのポリバケツを野球のフルスィングのように打ちつけ殺し屋へと飛ばした。
「アイヤー!目隠しのつもりアルネ。」
殺し屋は体勢を低くし、滑り込むように飛んできたポリバケツの下をくぐる。
「近くにいるのわかるアルネ。」
その言葉通り、桜は近づいていた。
「これあげるアルネ。」
殺し屋が出したのは、小型のライター。
桜は先ほどの話から、それが危険物であることを察知し、
「バクっ!」
桜はとっさに連続バク転をし、退避する。
殺し屋はワイヤーを上へ投げ、上へと移動する。
ボンっと小さな爆発がおきた。
小さいとはいえ、至近距離で衝撃をうけたら致命傷は避けられない。
「あいや!」
「うっ!」
桜の背後に殺し屋は飛び降り、青龍刀を振り下ろす。
シュッと桜の背中を切る。
寸前で前へ交わしたおかげで服が切れる程度ですんだ。
「まだまだアルネ。」
殺し屋はクナイを構える。
「パターンが同じなんだよぉ!」
桜は反転し、殺し屋へと向かう。
前進する桜へとクナイが飛んでくる。
それを避けるように桜はムーンサルトを決めるように跳ねる。
その時、一瞬手を伸ばした。
「すごい避け方アルネ。」
その勢いを殺さず、桜は殺し屋へと木刀を振る。
殺し屋も防御の体勢をとり、構える。
一撃。
強烈な音が路地に響く。
桜は地面に足をつけ、木刀を構え、
「桜式四ノ型・飛翔。」
桜は木刀を真っ直ぐ投げつける。
その瞬間、殺し屋の目が遊びから本気の目、殺しの目に変わった。
腰を後ろへ曲げ避ける。
「チッ生意気…」
顔を上げたとき、殺し屋にクナイが飛んできた。
先ほど、桜がクナイを避けたときに回収をした一本だ。
余裕がなかったので今度は転びながら避けた。
「村雨ぇ!!」
桜は飛ばした村雨を再び呼び戻し両手で上段構えをした。
地面に背中をつけた殺し屋へと
「一ノ型・断罪!!」
転がった殺し屋へ重い一撃を振り下ろす。
殺し屋はそれを刀で防御するが…
キンっと高い音がなり、刀が折れた。
そこで桜は木刀を止めた。
殺し屋の携帯がピリリっと鳴る。
「出てどうぞ。」
『おい!てめぇ何やってんだ!標的を逃がしやがって!』
「おう、標的間違えたアルネ。でもお前たちが写真を入手しなかったミスアルネ」
『いいから早く戻ってこい!!』
ガチャっと音を切らした。
殺し屋は急に笑顔になり、刀を納めた。
「間違えたアルネ。金にならない殺しはゴメンアルネ。」
「はぁ?」
「そういうわけで、」
グルンと後転し、立ち上がった。
「さいならアルネ♪」
「おい、チャイナ!」
殺し屋はワイヤーで上へと昇っていった。
最後に女は告げた。
「名前、私は“麗怜”アルネ。」
「…東海林桜。」
目を合わせると、麗怜はどこかへと行ってしまった。
桜は無駄に本物の殺し屋と戦ったようだ。
駅
「桜~どうしたの?」
氷柱と駅前のカフェでお茶を飲んでいた。
「いやいや、支配人さんと我が家のことで相談があって。聞かれたら東海林家暗殺部隊に殺されちゃうような話だったからさ。」
さすがに銃を持った男とバトルしたとか、殺し屋と戦ったとは言えなかった。
少し、嘘をついて桜は心がチクリと少し痛んだ。