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雲の上学園生徒会記録  作者: skyofnet
第6章『西園寺家』
66/119

66 女は二つの顔を持つ

土曜日。


「桜~、遅刻しますよ。今日は浜横ですから、ジェット機は使えませんよ。」

「今行く~!」


朝の東海林家、桜は約束の時間ギリギリまで寝ていた。

約束は11時に浜横駅改札口。10時に出ればギリギリ間に合う。


屋敷の掃除を切り上げ、メイドである茜が桜を叩き起こし、着替えなどを急かし

ている。


「これを着て、あれを着て…よし!」


前日に準備はしており、早々と支度を終え、家を出ようとした。


「じゃあ、行ってきます!」

「ああ、桜。店長さんには失礼のないようにするんですよ。」

「あいよ!」


玄関をあとにする。


庭では、ペットである狐の不知火と鷹の大鷲と触れあっている、メイド雪音と執

事の識がいた。


「桜さん。行ってらっしゃい。」


桜に気づいた雪音はペコリと頭を下げる。


「きぃてけてな。」

「識、あのさ…」

「西園寺のことだろ。」


桜が言いたいことを察していた。

識としても、七海のことは心配だったので、顔の広い識は独自のルートで捜索を

していた。


「うん。何かあったらよろしこ。」

「おう。」


雪音と識に見送られながら、桜は家を出ていった。



「何だ?西園寺っつーと、お嬢の友人か?」


喋ったのは不知火であった。

この狐は妖怪であり、話すことくらいはできるらしい。

このことを知っているのは、同じ妖怪である雪音と、偶然会話を聞いてしまった

識の二人だけだ。


「ああ、西園寺はそろそろ三週間謎の休みなんだ。」

西園寺の名前を聞いて、雪音はああっと顔を思い出した。


「西園寺さんってあの眼鏡の般若顔の人ですよね。」

「いや、般若って…あれは怒った時の顔でデフォルトは違うぞ。」


不知火は大きくあくびをした。


「とにかく、今回も妖怪絡みじゃなさそうだしな。俺の出番はなしっと。平和が

何より…」


散歩すると言い、トコトコ歩いていった。


「あいつって平和好きな妖怪なんですか?」

「いいえ、不知火はもともとその筋では知らないものはいないくらいの暴君、大

妖怪ですよ。今は妖力を失って話すくらいしかできなくなって、丸まったんです

よ。」


今の姿からは想像できない話であった。




浜横駅改札口

「桜ちゃ~ん!こっちだよぉ~。」


約束の場所にはすでに二人が待っていた。

やはり桜は一番最後であった。


「ごめんごめん、遅刻ではないっしょ。」

「あと1分で遅刻だったのに惜しいわ」

「罰ゲームすること期待してたんかい!」


桜たちの間では、遅刻をした場合など、罰ゲームを行うことが多々ある。


「またメイド姿はごめんだよ。」

「あれはかわいかったよぉ。」

「南チョイスは怖いよ。」


南はかわいい物好きであり、その手の衣装は所持している。


「さて、時間は6時に黄龍だから、時間まで遊ぼうぅ。」


それから桜たちは、時間までカラオケやボウリングをし、時間を過ごした。




ボウリングが終わり、次の遊びを選んでいるとき、ふと周りをキョロキョロして

いる女性を見つけた。


今桜たちがいるのは回りくねった道が多く、地理感を掴めない人なら迷子になっ

てしまうような場所であった。


女性を見ると、おそらく中国系の女性であった。

スーツを来ている所を見ると、桜たちより年上に見え、顔は20代を思わせる美

形の顔立ちである。

肩まである黒い髪を垂らしている。

トレードマークなのか、方耳には涙形のイヤリングが目立つ。



迷子なのか、桜は声をかける。


「あの?どうかなさいましたか?」


女性は少し挙動不審に応える。


「ワタシ…ワカラナイ。」


片言の日本語であった。

女性をよくみたら、一枚のプリント用紙を持っていたので、それを貸してもらっ

た。


「氷柱、これわかる?」

「これは…黄龍の近くのビルね。折角だから案内してあげましょう。」


桜は、女性に中国語で話す。


「『これから、このビルへ案内します。ついてきてください。私の名前は東海林

桜』」


女性は中国語を話せる桜に少し警戒感を解いたようだ。


「『よろしくおねがいします。私は大橋』」


スッと手を出した。

桜も手を出し、握手をした。


「桜ちゃん中国語できるんだぁ~♪」

「まぁ、民族語以外なら大抵は話せるよ。」


その時、前後から二人のチンピラが近づいてきた。

少し薄暗い所だったから、カモにされたのだろうと桜は思った。


「げへへへ。おい姉ちゃん。俺たちとちょっと一緒に遊ぼうぜぃ」

「げるるるる、変なことはしねぇよぉ、げるるるる」


どう見てもまともな人間ではない。ただの変態だと思った桜は


「向こうで腐ってな。つーかもう腐ってるか?」


その言葉にカチンときたチンピラは顔を赤くし、怒鳴り散らす。


「んだあぇおらぁ!」

「あんじゃおりぁ!」


怒鳴っている間に桜は行動を起こしていた。


前の男に溝打ち、そのまま後ろに飛び、後ろの男に延髄蹴り。

男たちは一秒とかからずに倒れてしまった。


「さ、行こう行こう。」


女性は驚いた表情を浮かべていた。

当然である。少女が大の男を二人も一瞬で倒してしまったのだから。


「『桜さんは強いですね。』」

「『うちは武術を習っていたからね。』」

「『そうですか、すごいですね』」


その時、女性の目付きが一瞬だけ鋭く、何かを見透かすような目付きになった。


一瞬であったため、桜はそのことに気づきはしなかった。




中華街

街は活気にあふれていた。

浜横の中華街は、中国からの出稼ぎの人が多い。

路上販売を行っている場所もあれば、裏では怪しい商売をやっている者も少なく

ない。


「中華街は初めて来たよぉ~。」


南は目を輝かせて、見たことのない物に夢中であった。


「ヤシのみだぁ!飲もうよぉ!」

「大橋さんを送ってからね。」


しぶる南を引きずる。


大橋の探しているビルがすぐ目の前に見えてきた。


ここで大橋とはお別れである。


「『桜さんありがとう。』」

「『いいってことよ。ん?』」


ビルの前に大きな男、例えるなら、フランケンシュタインというのを見たことが

あるだろうか。

体格的にはそんな感じの大男がいた。


「『私の同僚です。ありがとう桜さん』」


そして大橋はビルの中へと消えていった。




「九蛇様、予定の時間に来られないので心配しておりました。」

「すまないな。少し気になる女を見つけてな、観察していた。」


先程まで大橋と名乗っていた女性は、ビルのエレベーターを使わず、その裏にあ

る階段で地下へと降りた。


「父様の計画を邪魔したやつら、何といった?」

「西園寺です。」

「父様はつぶす気か?」

「はい、そのため、三国龍を召集したそうです。」


女は眉を曲げ、嫌そうな顔をした。


「あいつらか。お前の方が役に立つんだがな。父様はそこらへんがわからんのだ。」

「それから、例の作戦ですが、いつでも。」

「そうか。時が変わるのも近いな」


不適な笑みを浮かべていた。



彼女の名前は九蛇。


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