61 迷いの国の物語
続いての試合は、間宮が出る3回戦である。
選手以外は、全員モニタールームという場所へ案内される。
モニタールームはいわゆう大会議室のような場所であった。
席に座ると、モニターに試合会場が写し出された。
そこは、大庭園であった。草木で道が作られている迷路のような庭である。
司会が説明を始める。
「次の試合は“大迷路”。先に王冠を見つけた方の勝利となります。草木を破壊
してでの通行や、登るなどの行為は失格となります。」
モニターを見ると、一ヶ所高い塔があった。
「塔に登り、迷路全体を把握するかが勝負の鍵になります。」
この勝負は、早さが物をいう。
その点では、間宮は有利であろう。
相手は、“石田三成”。氷柱からの情報では、学年首席の人物らしいが、運動は
できないらしい。
「では、スタート!」
開始と同時に、間宮が走り出す。目指す場所は塔である。
石田は走らず、歩く。
分岐点では、迷わず道を選び歩く。
モニタールーム
「あ、あそこにいるのは徳川海。」
大江戸の選手もモニタールームにいた。
たまたま近くに海がいたので、声をかけてみた。
一人では心細いので氷柱を連れていく。
「こんちは。」
「ああ、東海林か。それから…」
「雲の上学園生徒会長、北皇子氷柱です。」
その名前を聞いて、ああと海は頷いた。
「お兄様から聞いたな。たしかSクラスの。」
「ええ、同じクラスです。」
「それに北皇子病院では、お兄様が世話になってる。」
桜にとってそれは初耳であった。
話していると、徳川空が歩いてきた。
「やあ、試合はどうだい?」
「お兄様。残念ですが、海は出られませんが、織田達が必ず勝利してくれます。
」
「ちょい待ち!それはうちらが負けるって話かい?」
「違うのか?」
バチバチっと火花が散る。
「石田は運動はできんが、オツムはなかなかの物だ。塔に登ったら確実に迷路全
体を把握する。」
「間宮は犬のように素早いのよ。ノロノロ歩いている間に終わっちゃうよ。」
お互いの自慢が始まった。
少し離れた所に、氷柱と空が二人。
「あの二人、仲良くなれそうでよかったよ。」
「そうなの?」
大迷路
「…行き止まり。」
間宮は、迷っていたが、確実に塔に近づいていた。
石田は…
「ここか。」
塔の麓きいた。
迷うことなく、塔についた。
モニタールーム
「どうして!?」
「石田は分析したんだ。」
桜と海はなんだかんだで、二人でモニターを見ていた。
「石田は二三回行き止まりを見て、設計者の癖を見抜いた。海でもそんな芸当は
できない。あいつは天才なんだ。」
「天才…」
雲の上にいたならSクラスにいただろう。
桜は思った。
「それに、もし石田をつけて、王冠を見つけたら奪おうとしても無駄だろう。尾
行を巻く術を持っている。」
「くっ…!」
王手をかけられた気分であった。
海のいうことが本当なら、石田は迷わず王冠まで一直線である。
モニターを見ると、間宮は塔に今たどり着き、石田とすれ違った。
石田は歩きながら、周囲に気を配る。
間宮はその警戒を察した。
そして…
間宮は消えた。
モニターから消えた。
「間宮は?」
「おかしい。カメラ班が見失うなんて。」
雲の上集団で雪音は一人違う意味で驚いていた。
(これは!妖術!?でもあの人は人間。じゃあまさか!)
間宮が消えたまま、石田は王冠へと歩く。
王冠が見えたその時、
「助かった。」
「何っ!」
一瞬、間宮が石田の隣にいた。
だが、直ぐに追い抜いてしまった。
「私の警戒網をどうして!?」
「足消」
「何!?
そして間宮は王冠を抱えた。
『雲の上学園の逆転勝利!!』
「そんな…」
石田は膝を地面につけた。
何が起きたかわからない人。
「お兄様。あれは。」
「うん。気づいたよ。“彼も”だね。」
間宮を見る人。
「のう、識よ。よくわからんが勝ちを喜んでよいのじゃろう。」
「ああ、勝ちは勝ちだ。」
とりあえず喜ぶ者がいた。
雲の上はあと一勝で勝利となった。
「喜ぶのは間違っていぞ、東海林。」
「そっちはあと一敗で負けだよ。」
「これから出る豊臣は、大江戸四天王と呼ばれる男よ。」
「四天王って…いるんだ」
「まぁ、見てのお楽しみね。」
「うちの識だって、伊達に東海林家で住み込みで執事してるわけじゃ…」
あっ…と思った。
今の言葉を雲の上の人には聞かれていないことを祈った。
たが、その願いは叶わなかった。
後ろには移動するので桜に声をかけにきた氷柱、七海、南の三人がいた。
「桜?それって同居?」
「いや!なんというか同居というか、一緒の家に住んでるだけで!」
「桜ちゃん、それは世間一般的に同居だよぉ。」
「…あはは。」
バレた。
同居の経緯を説明をして、納得してもらった。
「なるほど、中嶋くんの家をアンタが爆破したからってことね。」
「直接は馬鹿兄貴がやったんだけどね。」
「まぁ薄々気づいてたけどね。七海は特に敏感だから。その件は。」
「なっ!べ、別にそんなんじゃないんだからね!」
「なぜツンデレ?」